松中 信彦(まつなか のぶひこ)  1973年12月26日生まれ・左投げ左打ち

 熊本・八代第一高から新日鉄君津を経て、96年ドラフト2位で福岡ダイエーホークスに入団。96年アトランタ五輪では4番を務め、33打数11安打の打率.333。さらに決勝のキューバ戦で放った満塁ホームランを含む5本塁打・16打点でチーム二冠の活躍。
 1年目のウエスタンでは打率.291は残したものの、58試合で4本塁打と持ち前の長打力は影を潜め、金属バット後遺症も感じられた。しかし、翌98年はこれを克服し19本塁打でウエスタン本塁打王。一軍でも9月以降に3本塁打を放ち、翌年への期待感を残した。

 99年は一軍定着を果たし23本塁打をマーク。続く00年はさらに数字を伸ばして打率.312、33本塁打、106打点でチーム三冠王となりリーグ2連覇に大きく貢献。この活躍が認められ、リーグMVPに選出された。この年9月にはシドニー五輪代表に選出され、2大会連続の五輪出場。35打数13安打で.371の高打率だったが、木製バットである事や相手チームにもプロ選手がいた事などもあって1本塁打、2打点と中軸としては不満の残る数字だった。
 01年も打率.334、36本塁打、122打点と3部門全てに前年を上回る活躍。通算打率も3割に乗せ順調だったが、02年は一転してスランプに見舞われた。この年から高目に広がったストライクゾーンの影響もあったか、開幕から波に乗れず、レギュラー定着後最低の打率.260に終わった。

 03年は主砲・小久保欠場の穴を埋めて4番打者として活躍。打率.324に30本塁打と見事な復活を見せた。また、自己最多の123打点で初の打点王に輝き、チームの3年ぶりとなる優勝に大きく貢献した。
 その兄貴と慕う小久保が移籍した04年は精神的にも一本立ち。不動の4番打者として打率.358、44本塁打、120打点で史上7人目(11度目)の三冠王に輝いた。また、打撃3部門に加え安打・出塁率・得点でもリーグ1位で、この6部門トップは1973年王貞治に次ぐ史上2人目の快挙だった。

 05年も2年連続本塁打王、そして史上6人目となる3年連続打点王に輝いた。打率こそ7厘差の3位で2年連続三冠王は逃したが、球界ナンバーワンスラッガーの地位を不動のものにした。この年オフに7年の長期契約を結び、生涯ホークスを宣言。06年は開幕前のWBC対策での打法改造などから長打が激減。19本塁打、76打点と不本意な数字に終わった。それでも打率.324で2度目の首位打者を獲得。07年は再び本塁打量産を目指したが、打率.266と低迷。15本塁打・68打点も99年のレギュラー定着以来最低の数字に終わった。

 復活を期した08年は終盤打率を落とし3割は逃したが、25本塁打・92打点は共にチームトップの数字とまずまずの成績。12年目にして初の全試合出場も達成した。09年は打撃3部門の数字が全て前年を下回るなど苦戦したが、通算1500安打と1000打点を達成。オールスター第2戦では2打席連続本塁打を放ちMVPに輝いた。
 10年は打撃不振に苦しみ、打率2割台前半と低迷。8月には左手首を痛めて登録抹消され、9月に復帰したものの79試合で56安打の打率.235と、99年の一軍定着以後ワーストの成績に終わった。
 11年も5月に左手親指痛、9月には死球による右膝骨折と2度の離脱があり88試合の出場に留まった。しかし内容的には復調が見られ、規定打席不足ながら5年ぶりの打率3割台をマーク。驚異的な回復で復帰したクライマックスシリーズでは代打満塁ホームランを放ち、存在を強烈にアピールした。

 完全復活が期待された12年は怪我に泣いた。4月末で打率.184と出遅れたが5月に.308と復調すると、6月に左手首捻挫で登録抹消。7月に復帰して.369と上昇気配を見せると、今度は左大腿二頭筋の挫傷で2ヶ月以上の長期離脱。結局7月16日の試合で放った決勝本塁打がシーズン最後の安打となった。13年はレギュラー奪回に懸けて臨むも9試合で2安打。14年も3安打、そして15年も1安打と復活はならなかった。ホークス一筋で19年を過ごし、さらに他球団での現役続行も模索したが、最終的に2015年限りで現役を退いた。

 MVP2回(00、04)、本塁打王2回(04、05)、打点王3回(03〜05)、首位打者2回(04、06)、最多安打1回(04)、最高出塁率3回(04〜06)。ベストナイン5度(00、03〜06)、ゴールデングラブ1度(04)受賞。月間MVP6回(01年9月、03年8月、04年5月、05年7月・9月、06年6月)。オールスター出場10度(99〜01、03〜09)、09年第2戦でMVP受賞。WBC出場1度(06)、五輪出場2度(96、00)。

年度別打撃成績(赤字はその年のリーグ最多記録)
    試合 打数 得点 安打 二塁打 三塁打 本塁打 塁打 打点 盗塁 犠打 犠飛 四死球 三振 打率(順位)
97 ダイエー 20 43 4 9 1 0 0 10 6 0 1 1 3 13 .209
98 ダイエー 34 71 9 19 6 0 3 34 10 2 0 1 11 12 .268
99 ダイエー 126 395 57 106 20 4 23 203 71 5 5 4 58 60 .268(19位)
00 ダイエー 130 471 76 147 26 1 33 274 106 0 0 7 62 49 .312(6位)
01 ダイエー 130 479 81 160 29 0 36 297 122 2 0 5 67 77 .334(3位)
02 ダイエー 136 485 75 126 23 1 28 235 83 1 0 7 69 80 .260(23位)
03 ダイエー 135 494 99 160 31 1 30 283 123 2 0 3 93 69 .324(9位)
04 ダイエー 130 478 118 171 37 1 44 342 120 2 0 2 96 67 .358(1位)
05 ソフトバンク 132 483 109 152 26 2 46 320 121 2 0 7 85 85 .315(3位)
06 ソフトバンク 131 447 79 145 32 1 19 236 76 2 0 4 108 37 .324(1位)
07 ソフトバンク 123 440 60 117 26 1 15 190 68 1 0 6 73 66 .266(26位)
08 ソフトバンク 144 538 79 156 28 2 25 263 92 3 0 8 85 91 .290(13位)
09 ソフトバンク 126 448 62 125 21 0 23 215 80 2 0 3 70 77 .279(18位)
10 ソフトバンク 79 238 28 56 5 1 11 96 35 3 0 2 27 44 .235
11 ソフトバンク 88 266 26 82 16 0 12 134 36 0 0 3 34 38 .308
12 ソフトバンク 65 136 10 30 2 0 4 44 13 1 0 0 28 26 .221
13 ソフトバンク 9 10 0 2 0 0 0 2 1 0 0 0 0 3 .200
14 ソフトバンク 33 27 0 3 1 0 0 4 4 0 0 1 5 6 .111
15 ソフトバンク 9 15 0 1 0 0 0 1 1 0 0 0 1 9 .067
                                 
19年 1780 5964 972 1767 330 15 352 3183 1168 28 6 64 975 909 .296