イチロー(鈴木 一朗・すずき いちろう)

 愛工大名電高から91年ドラフト4位でオリックスに入団。高校時代は投手として春の選抜大会にも出場したが、際立っていたのは打撃センス。その実力は1年目から抜きん出ており、ウエスタンで打率.366をマークして首位打者獲得。ジュニア・オールスターでは代打決勝本塁打でMVPに輝く。特異な打撃フォームのせいもあり、当時の土井監督とそりが合わず、翌年もファームで.371を打ちながら1軍では43試合で12安打にとどまった。

 しかし翌94年仰木監督の就任によりついに大ブレークすることになる。それまでの登録名「鈴木 一朗」を「イチロー」にするというアイデアから始まった1年はまさにイチローに始まりイチローに終わる1年。前人未到のシーズン210安打に打率.385のパ・リーグ新記録。5月21日から8月26日まで69試合連続出塁の日本新記録。文句なしのMVPに選ばれた。

 この年から3年連続のMVP、そして史上初の7年連続首位打者に輝く。また5年連続で全試合に出場していたが99年8月24日の日本ハム戦で死球を受け、歴代14位の763試合連続出場でストップ。
99年4月20日には史上最速、757試合目で通算1000本安打を達成。従来の記録であるブーマー(オリックス→ダイエー)の781試合を大きく更新した。00年で首位打者獲得回数7度も張本勲(東映−巨人−ロッテ)と並ぶ日本タイ記録となった。同年の打率.387は自己の持つ.385(94年)を更新するパ・リーグ新記録。

 00年オフにポスティングシステムによりMLBのシアトル・マリナーズに移籍。01年はマリナーズでライトの定位置を確保。広い守備範囲は「エリア51」と呼ばれ、走攻守3拍子揃ったプレーで人気を集めた。打っては打率.350で首位打者、走っては56盗塁で盗塁王、守ってはゴールドグラブ賞と文句なしの活躍ぶりで史上2人目の新人王とMVPのダブル受賞を果たした。
 02年も前半は快調だったが、後半打率を下げてベストテン4位に終わり、日米を通じての連続首位打者は8シーズンでストップした。それでも2年連続200安打を達成、2度目のゴールドグラブ賞にも輝いた。

 03年は中盤まで打率争いのトップを走ったが後半戦失速して2年連続の打率ダウン。それでもメジャー3人目となる新人からの3年連続200安打は達成した。また7月18日のロイヤルズ戦では9回二死から逆転満塁本塁打の劇的な活躍を見せた。
 4年目となる04年は歴史的なシーズンとなった。5月21日のタイガース戦で出場1465試合目のハイペースで日米通算2000本安打を達成。5月・7月・8月と3度の月間50安打を記録。8月26日のロイヤルズ戦では史上初となる新人からの4年連続200安打を達成した。そして記録へのプレッシャーも高まる中、10月1日のレンジャーズ戦で年間258安打のメジャー新記録。1920年にジョージ・シスラー(ブラウンズ)が記録した257安打を84年ぶりに塗り替えた。最終的に262安打まで数字を伸ばし、打率.372で3年ぶりに首位打者へ返り咲いた。

 4割への挑戦も期待された05年だったが、チームは2年連続最下位と低迷。前年は最下位の中で奮闘したイチローも思うような結果が出せず、しばしば3割を切る状態。毎年目標に掲げる200安打も残り2試合という160試合目での達成となり、打率.303とらしからぬ成績に終わった。それでも15本塁打はメジャー自己最多、100得点と30盗塁を5年連続で達成した。
 06年も3年連続地区最下位とチームの低迷は続き、その中で6年連続200安打・3割・100得点・30盗塁をクリア。日米通算2500安打も達成した。07年は久しぶりにプレーオフ出場を争う中、メジャー史上3人目となる7年連続200安打とメジャー1500安打を達成。またオールスターでは史上初となるランニングホームランを記録するなど3安打2打点の活躍でMVPに選ばれた。

 08年は前半戦打撃が低迷したが後半は持ち直し、8年連続200安打・3割・100得点・30盗塁と渡米以来の連続記録はすべてクリアした。また、7月29日のレンジャーズ戦で日米通算3000本安打も達成した。04年5月の2000本からわずか4年2ヶ月で1000本を上積みした驚異的ハイペースでの達成だった。
 09年は開幕前の第2回WBC決勝で、延長10回に勝越し打を放ち連覇に貢献。しかし激戦の影響か胃潰瘍を患い、シーズン開幕から故障者リスト入りした。復帰後は出場2試合目に日米通算3086安打を記録し、NPB最多記録である張本勲の3085安打を抜いた。その後も出遅れを取り戻すように打ちまくり、首位打者を争ったが惜しくも07年以来2度目の2位に終わった。それでも4年連続6度目の最多安打でMLB新記録となる9年連続200安打を達成。また、史上2番目のスピードとなる1402試合目でMLB通算2000本安打を達成した。

 10年は6月上旬まで打率3割5分台と好調だったが、後半戦は調子を落とし7月18日に3割1分台に落ちるとそのまま浮上のきっかけを掴めなかった。それでも10年連続で打率3割と200安打は当然の如く達成。2年ぶり3度目の全試合出場も果たし、外野手としては史上5人目の10年連続ゴールドグラブ賞に輝いた。11年は4月こそ打率.328と好スタートを切ったが、5月末には.272までダウン。結局この数字が最終的な年間打率と同じで、浮上の気配なくシーズン終了を迎えた。安打数も184本で、連続200安打と連続3割が共にストップ。また、オールスターとゴールドグラブもメジャー11年目で初めて落選と苦闘のシーズンとなった。

 巻き返しが期待された2012年は大きな転機のシーズンとなった。日本で開催された開幕戦こそ4安打と好スタートを切ったが、打率はじわじわと低下して5月末では.271、6月17日には.255まで落ち込んだ。7月22日の試合で4打数ノーヒット、この時点の打率.261でヤンキースへの移籍が決まった。移籍後は不動の「1番・ライト」ではなくなったが、67試合で打率.322を残し健在ぶりを見せた。マリナーズ在籍時の試合数・打席数よりかなり少ない中で、本塁打・打点・盗塁はほぼ同等の数字を残した。13年は過去12年間で最少だった前年の663打席を100以上も下回る555打席と大幅に打席数が減り、136安打・57得点・35打点・20盗塁・打率.262などほとんどの部門で自己ワーストを記録。それでも8月21日のブルージェイズ戦では日米通算4000本安打を達成した。

 14年は5番目の外野手と言う位置付けで、さらに出場機会が減少。それでも日米通算21年連続100安打を達成し、打率も3割には届かなかったものの.284と前年から大きく数字を上げて健在ぶりを見せた。
 15年はメジャー3球団目となるマイアミ・マーリンズに移籍。引き続き控え外野手という位置付けながら、5月末まで33安打を放ち、打率.287。6月18日には打率.294まで上げたが、直後に大スランプに見舞われ34打席ノーヒットが続いた。7月8日に35打席ぶりのヒットが出たが、打率は.246まで低下。その後もペースは上がらず、8月末で.248、9月末で.231。最終的に打率.229と、今までからは考えられない低打率に終わった。それでもチーム最多の153試合に出場と故障なくシーズンを乗り切った。
 16年も4番目の外野手としてスタート。4月に10安打の打率.333とまずまずのスタートを切ると、5月21日からの3試合で10安打と打ちまくり打率を4割台に乗せた。直後の6試合で23打数1安打と苦戦したが、6月は月間.368と好調をキープ。6月15日のパドレス戦では、ピート・ローズの4256を抜く日米通算4257安打を記録。そして8月7日のロッキーズ戦で史上30人目となるメジャー通算3000本安打を達成した。最終的に3割には届かなかったが、95安打で打率.291と2011年以降では一番の打率を残した。

 17年は先発機会が減少し、代打が多くなる中でメジャー記録にあと1と迫るシーズン27本の代打安打を記録。5月までは68打数12安打で打率.176と苦戦したが、6月以降は128打数38安打の打率.297と復調を見せた。
 18年は6年ぶりにマリナーズに復帰。しかし15試合で打率.205と結果を残せず5月3日に「会長付特別補佐」となり、年内は選手としてプレーしない事が発表された。19年は選手として復帰し日本での開幕戦に臨んだが、実戦から遠ざかった影響もあり2試合で5打数ノーヒットに終わり開幕シリーズ終了後に引退を表明した。

 94年4月9日から99年8月24日まで763試合連続出場。94年5月21日から8月26日まで69試合連続出塁の日本記録。95年4月28日から8月2日まで67試合連続出塁。94年5月21日から6月21日まで23試合連続安打。94年7月13日から8月14日まで23試合連続安打。94年に年間210安打の日本記録(当時)。94年から00年まで7年連続首位打者の日本記録。首位打者通算7回は日本タイ記録。通算打率.353は通算3000打数以上では歴代1位。

[日本でのタイトル]
 MVP3回(94〜96)、首位打者7回(94〜00)、打点王1回(95)、盗塁王1回(95)、最多安打5回(94〜98)、最高出塁率5回(94〜96、99、00)。ベストナイン7度(94〜00)、ゴールデングラブ7度(94〜00)受賞。月間MVP10回(94年6月・8月、95年6月、96年8月、97年6月、98年6月・7月、99年5月・7月、00年7月)受賞。オールスター出場7度(94〜00)。日本シリーズで96年に優秀選手賞受賞。正力松太郎賞2度(94、95)受賞。

[MLBでのタイトル]
 MVP1回(01)、新人王(01)、首位打者2回(01、04)、盗塁王1回(01)。シルバースラッガー賞3度(01、07、09)、ゴールドグラブ10度(01〜10)受賞。月間MVP1回(04年8月)。オールスター出場10度(01〜10)、MVP1回(07)。WBC出場2度(06、09)。

年度別打撃成績(赤字はその年のリーグ最多記録)
    試合 打数 得点 安打 二塁打 三塁打 本塁打 塁打 打点 盗塁 犠打 犠飛 四死球 三振 打率(順位)
92 オリックス 40 95 9 24 5 0 0 29 5 3 1 0 3 11 .253
93 オリックス 43 64 4 12 2 0 1 17 3 0 1 0 2 7 .188
94 オリックス 130 546 111 210 41 5 13 300 54 29 7 2 61 53 .385(1位)
95 オリックス 130 524 104 179 23 4 25 285 80 49 0 3 86 52 .342(1位)
96 オリックス 130 542 104 193 24 4 16 273 84 35 0 4 65 57 .355(1位)
97 オリックス 135 536 94 185 31 4 17 275 91 39 0 5 66 36 .345(1位)
98 オリックス 135 506 79 181 36 3 13 262 71 11 0 2 50 35 .358(1位)
99 オリックス 103 411 80 141 27 2 21 235 68 12 0 5 52 46 .343(1位)
00 オリックス 105 395 73 153 22 1 12 213 73 21 0 6 58 36 .387(1位)
                                 
日本9年 951 3619 658 1278 211 23 118 1889 529 199 9 27 443 333 .353
                                 
01 マリナーズ 157 692 127 242 34 8 8 316 69 56 4 4 38 53 .350(1位)
02 マリナーズ 157 647 111 208 27 8 8 275 51 31 3 5 73 62 .321(4位)
03 マリナーズ 159 679 111 212 29 8 13 296 62 34 3 1 42 69 .312(7位)
04 マリナーズ 161 704 101 262 24 5 8 320 60 36 2 3 53 63 .372(1位)
05 マリナーズ 162 679 111 206 21 12 15 296 68 33 2 6 52 66 .303(11位)
06 マリナーズ 161 695 110 224 20 9 9 289 49 45 1 2 54 71 .322(6位)
07 マリナーズ 161 678 111 238 22 7 6 292 68 37 4 2 52 77 .351(2位)
08 マリナーズ 162 686 103 213 20 7 6 265 42 43 3 4 56 65 .310(7位)
09 マリナーズ 146 639 88 225 31 4 11 297 46 26 2 1 36 71 .352(2位)
10 マリナーズ 162 680 74 214 30 3 6 268 43 42 3 1 48 86 .315(7位)
11 マリナーズ 161 677 80 184 22 3 5 227 47 40 1 4 39 69 .272(35位)
12 マリナーズ 95 402 49 105 15 5 4 142 28 15 0 4 17 40 .261
ヤンキース 67 227 28 73 13 1 5 103 27 14 5 1 7 21 .322年間の個人通算.283で27位
13 ヤンキース 150 520 57 136 15 3 7 178 35 20 6 2 27 63 .262(46位)
14 ヤンキース 143 359 42 102 13 2 1 122 22 15 2 2 22 68 .284
15 マーリンズ 153 398 45 91 5 6 1 111 21 11 5 4 31 51 .229
16 マーリンズ 143 327 48 95 15 5 1 123 22 10 3 2 33 42 .291
17 マーリンズ 136 196 19 50 6 0 3 65 20 1 1 0 18 35 .255
18 マリナーズ 15 44 5 9 0 0 0 9 0 0 0 0 3 7 .205
19 マリナーズ 2 5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 .000
                                 
MLB19年 2653 9934 1420 3089 362 96 117 3994 780 509 50 48 702 1080 .311
                                 
  日米計28年 3604 13553 2078 4367 573 119 235 5883 1309 708 59 75 1145 1413 .322