盗塁
通算記録では福本豊(阪急)が唯一1000の大台越えを果たす1065盗塁でトップ。2位を469個も引き離し、数あるアンタッチャブル記録の中でもナンバーワンの独走ぶりである。入団2年目から14年連続50盗塁、うち13年目までは連続盗塁王にも輝いた。満38歳の85年、39歳の86年シーズンでもそれぞれ23盗塁している。2位の広瀬叔功(南海)も61年から5年連続盗塁王と福本登場以前は記録面でも第1人者だったが、それも霞むほどの福本の凄さである。
83年に福本の連続盗塁王を阻止した大石大二郎(近鉄)は大卒選手としては最多の415盗塁で歴代7位に入った。95年に通算400盗塁を達成したが、以後400盗塁達成選手は出ていない。その大石も最初の7年で248盗塁(平均35.4盗塁)が、その後の11年は167盗塁(平均15.1盗塁)と30代に入ってのペースダウンが著しかった。
ベストテン入りを狙う現役候補としてはまず石井琢朗(横浜)。昨年は11盗塁だったが、今年は18盗塁と復調。5年ぶりの30盗塁は難しいかもしれないが、25個くらいは行きそうなペース。そうなると通算343盗塁となり、歴代10位まで27個と射程距離に入って来る。福本の記録は遥か遠いにしても、史上8人目の通算400盗塁は期待したい。
入団1年目の97年にいきなり56盗塁し、01年まで5年連続30盗塁を記録した小坂誠(ロッテ)も昨年は6盗塁とめっきり走れなくなった。しかし今季は18盗塁と盛り返して通算257盗塁。野村謙二郎(広島)を抜いて現役3位に進出している。ただ、若手の成長もあり規定打席にもかなり足りない状況で、今後も同様の起用法ではかつてのような盗塁数は見込めない。300盗塁達成はほぼ確実だろうが、400は難しいと思われる。
現役ベストテン内で昨年の実績ピカイチなのが赤星憲広(阪神)。在籍4年で190盗塁とは年平均50個近い。今季も2位に17個差の48盗塁で通算238盗塁まで伸ばしている。現在29歳で、今季も含めた35歳までの7シーズンに平均50盗塁と仮定すると540盗塁になる。ここ2年は60盗塁を超えている事を考えれば、平均50個以上のペースも当然期待出来、そうなると35歳で600盗塁達成も夢ではない。順調に行けば歴代2位には進出可能な赤星は現役では突出した存在である。プロ入りが遅かったため、1000は無理にしても700あるいは800盗塁も期待したいところだ。
日本人メジャー選手の日米通算記録では昨年までイチロー(マリナーズ)が356盗塁、松井稼頭央(メッツ)が320盗塁としている。今季のイチローは27盗塁で通算383盗塁として、来季早々には400盗塁に届きそうだ。メジャー1年目の56盗塁の後は30個台が続いているが、コンスタントに走っているとは言える。一方の松井は昨年14盗塁で今季は3盗塁。故障に見舞われたとはいえ、日本時代に30盗塁以上を5度も記録した面影はない。まだ若いだけに復調を期待したいところだ。
日本で盗塁王2度の井口資仁(ホワイトソックス)は今季14盗塁で通算173盗塁としている。メジャーにも慣れる来季にはペースも上がって通算200盗塁に届く可能性も大である。
歴代 | 選手名(最終所属) | 記録 | 現役 | 選手名(所属) | 記録 | 04年実績 | |
1 | 福本豊(阪急) | 1065盗塁 | 1 | 石井琢朗(横浜) | 318盗塁 | 11盗塁 | |
2 | 広瀬叔功(南海) | 596盗塁 | 2 | 緒方孝市(広島) | 258盗塁 | 4盗塁 | |
3 | 柴田勲(巨人) | 579盗塁 | 3 | 野村謙二郎(広島) | 249盗塁 | 1盗塁 | |
4 | 木塚忠助(近鉄) | 479盗塁 | 4 | 小坂誠(ロッテ) | 239盗塁 | 6盗塁 | |
5 | 高橋慶彦(阪神) | 477盗塁 | 5 | 村松有人(オリックス) | 237盗塁 | 11盗塁 | |
6 | 金山次郎(広島) | 456盗塁 | 6 | 飯田哲也(楽天) | 230盗塁 | 0盗塁 | |
7 | 大石大二郎(近鉄) | 415盗塁 | 7 | 奈良原浩(日本ハム) | 191盗塁 | 5盗塁 | |
8 | 飯田徳治(国鉄) | 390盗塁 | 8 | 赤星憲広(阪神) | 190盗塁 | 64盗塁 | |
9 | 呉昌征(毎日) | 381盗塁 | 9 | 金本知憲(阪神) | 146盗塁 | 5盗塁 | |
10 | 古川清蔵(阪急) | 370盗塁 | 10 | 谷知佳(オリックス) | 140盗塁 | 10盗塁 |
年間記録は72年福本の106盗塁が歴代1位。唯一の100個台であり、その後は福本自身を除けば83年に松本匡史(巨人)が76盗塁したのが最高であり、70個台も85年に73盗塁した高橋慶彦(広島)が最後。特にセ・リーグは88年から94年まで40盗塁以上の選手が出ないなど地盤沈下が激しかった。
しかし03年に赤星が61盗塁でリーグ18年ぶりの60個台を記録。04年はさらに64盗塁と数字を伸ばした。今季も48盗塁と3年連続60盗塁は十分狙えるペース。年間記録ベストテン入りするには72盗塁以上が必要で、さらなるレベルアップが期待される。
現役ベストテンを見ても90年代の記録ばかりで、赤星以外に70個以上を狙えそうな選手は見当たらない。20代の選手に目を向けてみると、昨年39盗塁で今季も31盗塁と健闘している荒木雅博(中日)、今季プロ3年目でリーグトップの32盗塁と大きく飛躍した西岡剛(ロッテ)、2年目で首位打者争いも展開している22盗塁の青木宣親(ヤクルト)らに期待がかかる。
参考 年度別リーダーズ(盗塁)
歴代 | 選手名(当時の所属) | 記録 | 年度 | 現役 | 選手名(当時の所属) | 記録 | 年度 | |
1 | 福本豊(阪急) | 106盗塁 | 1972 | 1 | 赤星憲広(阪神) | 64盗塁 | 2004 | |
2 | 福本豊(阪急) | 95盗塁 | 1973 | 2 | 赤星憲広(阪神) | 61盗塁 | 2003 | |
3 | 福本豊(阪急) | 94盗塁 | 1974 | 3 | 村松有人(ダイエー) | 58盗塁 | 1996 | |
4 | 河野旭輝(阪急) | 85盗塁 | 1956 | 4 | 小坂誠(ロッテ) | 56盗塁 | 1997 | |
5 | 木塚忠助(南海) | 78盗塁 | 1950 | 5 | 緒方孝市(広島) | 50盗塁 | 1996 | |
6 | 松本匡史(巨人) | 76盗塁 | 1983 | 6 | 緒方孝市(広島) | 49盗塁 | 1997 | |
7 | 福本豊(阪急) | 75盗塁 | 1970 | 7 | 緒方孝市(広島) | 47盗塁 | 1995 | |
8 | 金山次郎(松竹) | 74盗塁 | 1950 | 8 | 石井琢朗(横浜) | 45盗塁 | 1996 | |
9 | 高橋慶彦(広島) | 73盗塁 | 1985 | 9 | 小坂誠(ロッテ) | 43盗塁 | 1998 | |
10 | 広瀬叔功(南海) | 72盗塁 | 1964 | 10 | 村松有人(ダイエー) | 42盗塁 | 1997 |
※ランキングの記録は2004年まで。今季の記録は8月19日まで。