ちょっとしたコラム      
               
05.8.20付


盗塁

 通算記録では福本豊(阪急)が唯一1000の大台越えを果たす1065盗塁でトップ。2位を469個も引き離し、数あるアンタッチャブル記録の中でもナンバーワンの独走ぶりである。入団2年目から14年連続50盗塁、うち13年目までは連続盗塁王にも輝いた。満38歳の85年、39歳の86年シーズンでもそれぞれ23盗塁している。2位の広瀬叔功(南海)も61年から5年連続盗塁王と福本登場以前は記録面でも第1人者だったが、それも霞むほどの福本の凄さである。

 83年に福本の連続盗塁王を阻止した大石大二郎(近鉄)は大卒選手としては最多の415盗塁で歴代7位に入った。95年に通算400盗塁を達成したが、以後400盗塁達成選手は出ていない。その大石も最初の7年で248盗塁(平均35.4盗塁)が、その後の11年は167盗塁(平均15.1盗塁)と30代に入ってのペースダウンが著しかった。

 ベストテン入りを狙う現役候補としてはまず石井琢朗(横浜)。昨年は11盗塁だったが、今年は18盗塁と復調。5年ぶりの30盗塁は難しいかもしれないが、25個くらいは行きそうなペース。そうなると通算343盗塁となり、歴代10位まで27個と射程距離に入って来る。福本の記録は遥か遠いにしても、史上8人目の通算400盗塁は期待したい。

 入団1年目の97年にいきなり56盗塁し、01年まで5年連続30盗塁を記録した小坂誠(ロッテ)も昨年は6盗塁とめっきり走れなくなった。しかし今季は18盗塁と盛り返して通算257盗塁。野村謙二郎(広島)を抜いて現役3位に進出している。ただ、若手の成長もあり規定打席にもかなり足りない状況で、今後も同様の起用法ではかつてのような盗塁数は見込めない。300盗塁達成はほぼ確実だろうが、400は難しいと思われる。

 現役ベストテン内で昨年の実績ピカイチなのが赤星憲広(阪神)。在籍4年で190盗塁とは年平均50個近い。今季も2位に17個差の48盗塁で通算238盗塁まで伸ばしている。現在29歳で、今季も含めた35歳までの7シーズンに平均50盗塁と仮定すると540盗塁になる。ここ2年は60盗塁を超えている事を考えれば、平均50個以上のペースも当然期待出来、そうなると35歳で600盗塁達成も夢ではない。順調に行けば歴代2位には進出可能な赤星は現役では突出した存在である。プロ入りが遅かったため、1000は無理にしても700あるいは800盗塁も期待したいところだ。

 日本人メジャー選手の日米通算記録では昨年までイチロー(マリナーズ)が356盗塁、松井稼頭央(メッツ)が320盗塁としている。今季のイチローは27盗塁で通算383盗塁として、来季早々には400盗塁に届きそうだ。メジャー1年目の56盗塁の後は30個台が続いているが、コンスタントに走っているとは言える。一方の松井は昨年14盗塁で今季は3盗塁。故障に見舞われたとはいえ、日本時代に30盗塁以上を5度も記録した面影はない。まだ若いだけに復調を期待したいところだ。

 日本で盗塁王2度の井口資仁(ホワイトソックス)は今季14盗塁で通算173盗塁としている。メジャーにも慣れる来季にはペースも上がって通算200盗塁に届く可能性も大である。

<通算盗塁ベストテン>
歴代 選手名(最終所属) 記録   現役 選手名(所属) 記録 04年実績
1 福本豊(阪急) 1065盗塁   1 石井琢朗(横浜) 318盗塁 11盗塁
2 広瀬叔功(南海) 596盗塁   2 緒方孝市(広島) 258盗塁 4盗塁
3 柴田勲(巨人) 579盗塁   3 野村謙二郎(広島) 249盗塁 1盗塁
4 木塚忠助(近鉄) 479盗塁   4 小坂誠(ロッテ) 239盗塁 6盗塁
5 高橋慶彦(阪神) 477盗塁   5 村松有人(オリックス) 237盗塁 11盗塁
6 金山次郎(広島) 456盗塁   6 飯田哲也(楽天) 230盗塁 0盗塁
7 大石大二郎(近鉄) 415盗塁   7 奈良原浩(日本ハム) 191盗塁 5盗塁
8 飯田徳治(国鉄) 390盗塁   8 赤星憲広(阪神) 190盗塁 64盗塁
9 呉昌征(毎日) 381盗塁   9 金本知憲(阪神) 146盗塁 5盗塁
10 古川清蔵(阪急) 370盗塁   10 谷知佳(オリックス) 140盗塁 10盗塁

 年間記録は72年福本の106盗塁が歴代1位。唯一の100個台であり、その後は福本自身を除けば83年に松本匡史(巨人)が76盗塁したのが最高であり、70個台も85年に73盗塁した高橋慶彦(広島)が最後。特にセ・リーグは88年から94年まで40盗塁以上の選手が出ないなど地盤沈下が激しかった。
 しかし03年に赤星が61盗塁でリーグ18年ぶりの60個台を記録。04年はさらに64盗塁と数字を伸ばした。今季も48盗塁と3年連続60盗塁は十分狙えるペース。年間記録ベストテン入りするには72盗塁以上が必要で、さらなるレベルアップが期待される。

 現役ベストテンを見ても90年代の記録ばかりで、赤星以外に70個以上を狙えそうな選手は見当たらない。20代の選手に目を向けてみると、昨年39盗塁で今季も31盗塁と健闘している荒木雅博(中日)、今季プロ3年目でリーグトップの32盗塁と大きく飛躍した西岡剛(ロッテ)、2年目で首位打者争いも展開している22盗塁の青木宣親(ヤクルト)らに期待がかかる。

参考 年度別リーダーズ(盗塁)

<年間盗塁ベストテン>
歴代 選手名(当時の所属) 記録 年度   現役 選手名(当時の所属) 記録 年度
1 福本豊(阪急) 106盗塁 1972   1 赤星憲広(阪神) 64盗塁 2004
2 福本豊(阪急) 95盗塁 1973   2 赤星憲広(阪神) 61盗塁 2003
3 福本豊(阪急) 94盗塁 1974   3 村松有人(ダイエー) 58盗塁 1996
4 河野旭輝(阪急) 85盗塁 1956   4 小坂誠(ロッテ) 56盗塁 1997
5 木塚忠助(南海) 78盗塁 1950   5 緒方孝市(広島) 50盗塁 1996
6 松本匡史(巨人) 76盗塁 1983   6 緒方孝市(広島) 49盗塁 1997
7 福本豊(阪急) 75盗塁 1970   7 緒方孝市(広島) 47盗塁 1995
8 金山次郎(松竹) 74盗塁 1950   8 石井琢朗(横浜) 45盗塁 1996
9 高橋慶彦(広島) 73盗塁 1985   9 小坂誠(ロッテ) 43盗塁 1998
10 広瀬叔功(南海) 72盗塁 1964   10 村松有人(ダイエー) 42盗塁 1997

ランキングの記録は2004年まで。今季の記録は8月19日まで。

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