ストーリー&セル画ギャラリー3「記者編」
25話「レッツゴー!花の少女記者」
記者になるサンディベルの為に、オナー夫人夫人は新しい服を作り、カンカンもアイデアカーの整備に忙しい。
そこへ、有名な昆虫学者、ルララ=ファーブル氏がイギリスに来ているという情報が入った。早速カンカンはサンディベルに独占取材を命ずる。しかし彼女はファーブルについて何も知ってはいない。そこで図書館へ調べに行くのだが、一冊しかない資料をすでにアレックが借りていて、頼んでも見せてくれないのだ。
それでも手掛かりを求めて歩き回るサンディベルの前に再びアレックが現れ、彼女をエレベーターに閉じ込めてしまう。実は彼もファーブルの独占取材を狙っていたのだ。
やっと脱出したサンディベルはアレックを追う。それを見たロバートは、アレックをマークと勘違いし、キティに知らせた。サンディベルの所に来たキティは、マークの事を聞き出そうとする。そんな彼女に自分が新聞記者になる事を告げたサンディベルは、マークも自分もそれぞれの道を目指している事が、お互いへの無言の励ましになっていると言って立ち去った。
ニューロンドンプレス(N.L.P)社を訪ねるアレック。彼はファーブル氏の独占記事を取ったらこの新聞社の特派員に採用してもらえる筈だったのだ。だが、そこへシアラー氏と共に訪れたキティに強引に特派員の座を奪われてしまう。彼女はサンディベルに対抗するつもりなのだ。
そんなアレックの事情を知り、ファーブルがウェールズ方面へ向かった事を突き止めたサンディベルは、彼にファーブルの行き先を教えようとする。
突然、アレックはサンディベルのほおを叩いた。「これからは食うか食われるかのライバルだ!君は僕に最大の侮辱を与えたんだ!」そう言い捨て、アレックは去っていった。
「私は新聞記者になる資格がないの?」そう言うサンディベルに、カンカンはその優しさが大事なんだと言ってくれる。
そしてついに、彼女の旅立つ時が来た。リッキーとオリバーも同行する事になり、新しい服を着たサンディベルは、”サンディベル号”と名付けられたアイデアカーに乗り込み、みんなが見送る中、意気揚々と取材の旅に出発した。果たしてどんな旅が待っているのだろうか!
26話「ハチに追われて突撃取材」
初めての取材旅行!目指すはスノードンの森…ところが着いてみると、森はもうファーブル取材を狙う記者達でいっぱいだった。その中にはキティと、そのお目付役を仰せつかった自称名カメラマン、フラッシュ=スカパンの姿もあった。「一人前の記者になって、マークの前に立ってみせるわ」サンディベルの前で、いつか彼女がキティに言ったセリフをそのまま返すキティ。〜2人のライバル意識は高まるのだった。
やがてファーブルらしい人を見かけたと老人の話で、記者たちは飛んで行ってしまうが、サンディベル達はオリバーのおかげで、その老人こそファーブルであると見抜いた。早速取材を…と切り出すサンディベルだが、ファーブルは「新聞記者は大キライじゃ!」と言って拒否する態度をくずさない。
そこへ昆虫マニアを装ったアレックが現れた。彼はゼフィルス(ミドリシジミ)の通る所を知っているという話を囮にし、まんまとファーブルを連れ出し、写真と録音をとる事に成功する。一方キティも、「珍しい蝶がいる!」とスカパンを走り回らせ、ファーブルをおびき出した。彼女はすかさず甘い話を並べてファーブルを釣ろうとするが、「金も名誉もいらん!」とあしらわれた上、ハチに追われてスカパンもろともガケから落ちて宙吊りになってしまう。
かけつけて2人を助けようとするサンディベル。アレックも来るが、N.L.Pで特派記者の座を横取りされた恨みから手を貸そうとはしない。「オレはあんたみたいな金持ちで高慢な女は大っキライなんだ!」落ちてしまう2人を尻目にアレックは再びファーブルと行ってしまう。
しかし今度は怪しんだファーブルが、アレックにカマをかけ、うっかりボロが出て新聞記者である事がバレた彼はファーブルに追っ払われてしまった。
「おのれ…どいつもこいつも…」怒って立ち去ろうとするファーブルに、サンディベルは「ロンウッドニュースは特ダネを追うのではなく、読む人の心を暖めるような記事を載せる新聞なんです!」と言って説得するが、人間嫌いのファーブルはうなづかない。その時突然、さっきのハチの群れが3人を襲った!けちらそうとするリッキーをファーブルは止める。3人は川へ飛び込んでやっと難を逃れるのだった。都会育ちのリッキーには、ハチの怖さがわからなかたのだと言われ、ハッとするファーブル。
ぬれねずみで歩く道で3人はゼフィルスの大群が森の中を渡るのを見た。その美しさに見とれるサンディベルとリッキー。ふと気が付くとファーブルの姿は消えていた。
何の記事も取れなかったと、しょげかえって帰路に着く2人。だがそんな2人を待っていたのはファーブルがロンウッドニュースに手記を買い書いてくれるというカンカン編集長の連絡だった。20年間マスコミに出る事のなかったファーブルにそれだけの決意をさせたのは、彼女のやさしさの為だったかもしれない。彼女の初取材は大成功に終わった。
27話「鉄格子の中の特ダネ記者」
うかれてロンドンへ帰る道、サンディベル達は、カンカンからの「特ダネなんかさがすんじゃないよ」というTV電話をカン違いし、逆に特ダネ探しに出かけてしまう。結局ピーマンの特種(とくだね)を見つけて笑っている所へ、ホテル王、ヘンリー=ベイカーと名乗る男が声をかけてくる。彼の待つホテルへ同行するが、変装をしたりして様子がおかしい。
嗅ぎつけたキティ達が隣室で盗聴する中、ベイカーは説明する。「こうしてお忍びで自分のホテルを回り、客への対応を調べている事を新聞に載せて欲しいのだ」と。
このホテルではたまたま毛皮の展示即売会が開かれていた。ミンクのコートを着たサンディベルを見て、ベイカーは思わず「メリー」と娘の名をつぶやく。「お嬢様なら、私と違ってお似合いでしょうね…」と言うサンディベルに「君の父親だって、きっと一度はこういうものを着せてやりたいと思っているに違いない」と言うベイカー。しかし「パパが生きていたらこう言うわ…身分相応のものが一番美しいって…」とサンディベルは言う。
キティ達も取材を申し込み、4人が本社に連絡を取り合っている最中に、ベイカーは大きな箱を持って姿をくらましてしまう。そこへN.L.Pからの返事で、本物のベイカー氏は今、ニューヨークにいる事がわかる。信用しないサンディベルにホテル側から毛皮の代金の請求が…。留置されてしまうサンディベルとリッキー。
すでに非常線の外に出てしまったベイカー=詐欺師のジャックは傍受していた警察無線で2人の事を聞いていた。「むしろ騙された自分が悪いって言ってるそうじゃないか」「一生かかっても払えないよ。かわいそうになァ」そんなパトカー同士の会話…会場でのサンディベルの言葉を思い出したジャックは、引き返して自首してしまう。「負けたよ…」と言って。
ジャックに食ってかかるリッキーを止め、「戻ってくるなんて、本当に勇気のいる事だと思うわ!」と言うサンディベル。「私を自首させる気にしたのは、この娘のこういうやさしさなんですよ…」と首をうなだれるジャック。彼の本当の目的は、新聞に顔写真を載せて、自分が元気でいることを娘のメリーに知らせる事だったのだ。サンディベル達は、彼から、メリーに”まっとうな金”で買ったドレスを託され、届けるために道を急ぐのだった。
28話「うちあけられない父の正体」
ドレスを預かった2人は、娘メリーが住むシェイクスピアゆかりの地、ストラトフォードへやって来た。
ところが着いた家では、詐欺師のジャックことマイケル=ケインの名を口にしただけで、メリーの祖母に門前払いを食ってしまう。運よくメリーが通りかかり、父親からのプレゼントは渡す事は出来たが、彼女は父親の本当の姿を知らなかった。自分の父は外国航路の船員だと思い込んでいるメリー…サンディベルは何も言わずに家を出た。

すると外にメリーの祖母が待っていた。車の中で彼女から事情を聞き、サンディベルはマイケルが改心したことを告げ、こう言った。「メリーが思っていた通りの素晴らしいパパとして帰ってくると思うわ」と。ところが家へ戻ってみると、そこにはキティの取材車が!取材に来た彼女はすでにメリーに本当の事を洗いざらいぶちまけてしまった後だった。「これは何かの間違いよ!そうに決まってるわ!」家を飛び出していってしまうメリー。絶望のあまり無意識にエイボン河へ入りかけたとき、後ろから呼びとめる声が…「君!大丈夫かい?」それは絵の修行中のマークだった。
河のほとりを歩きながらメリーは事情を話した。彼女の話を聞いたマークはしかし、こう言う。「どんあ父親でも、いてくれる君は幸せだ…ぼくは両親とも、亡くしてしまったからね。ぼくの知っている女の子もそうだ。でも明るく精一杯生きている。たとえどんなパパでも、君を想っていたじゃないか」「でも…私を騙してまで…」答えるメリー。「でも、君にプレゼントを贈るパパの気持ちは本当だと思うよ。」
彼のスケッチを一枚貰うメリー。マークはフランスへ行く…と去って行った。メリーの持って来た絵のサインを見て、サンディベルはエイボン河へ走る。が、すでにそこにはマークの姿は無かった。「マーク、あなたは、いつも川の様に流れていってしまうのね。あなたの川は何時止まるの?海に出たら止まるの?…あなたの海は何時見つかるの…?それまで会うことは出来ないの?」

「あの人の言っていた女の子って、あなたの事だったのね」メリーに逆に慰められるサンディベル。父に会いたいというメリーを連れて、サンディベル達はロンドンへ帰る。鉄格子を隔てて父娘は再会するのだった。
29話「港に捨てられた赤ちゃんのゆくえ」
マークの行き先を知ってフランスへ渡りたいと思うサンディベル。ちょうど、パリで勉強中の教会出身の娘ジュリアンが、近頃音沙汰が無いと聞いて、カンカンはパリ行きを許可する。
ドーバーを渡るフェリーの上で、両親に、と花を投ずるサンディベル。彼女とリッキーの話を聞いて、横で泣き崩れる女性がいた。港の自動車に赤ん坊を捨ててきたと言うのだ。
船長に船を戻せと交渉するサンディベル。一人のためにそんな事は出来んと断られるが、丁度付近を飛行中のヘリコプターが港まで連れて行ってくれる事になった。
港へ戻った3人は、赤ん坊の誘拐事件を知る。どうやら捨てられた赤ちゃんは、車の持ち主のものと勘違いされ、誘拐されたらしい…。サンディベル達が参考人として、車の持ち主のギルバート家へ行くと、事件を嗅ぎつけたキティやアレックらも集まっていた。
事件が解決するまで報道を控えるようにという発表を聞かなかったキティは、急いで本社へ連絡するが、それが運悪く隣のボックスにいた犯人の仲間に聞かれてしまう。別の赤ん坊を誘拐してしまった事を知った犯人は、怒って倍の身代金を要求してくる。
とても指定の時間には集まらない。そこでサンディベル達はオリバーを使って赤ん坊の居場所を突き止めようとする。運よく赤ちゃんはぬれたおしめをしていたので、滴ったしずくの跡を追ってたどり着く事は出来たが、犯人たちに気付かれ捕まってしまった。隠れ家へ連れて行かれるサンディベル。そこには、彼女の後をつけたアレックが待ち構えていた。
彼の活躍で犯人は一網打尽、赤ちゃんは無事夫人の手に戻った。
「どんな事があっても、赤ちゃんは手放さないでね。子供にとって一番の幸せは、本当のママの胸に抱かれて育つ事なんです」2人の姿を見てサンディベルは言うのだった。
思わぬ記事が取れたさ達。さあ!フランスではサンディベル号が待っている、急がなくちゃ!
30話「パリに生きる少女」
リッキーと一緒に教会で育った娘、ジュリアンに合う為フランスへ渡ったサンディベル、パリの彼女のアパートを訪ねた。そこへ楽しそうに買い物から帰ってくるジュリアン。彼女のデザインしたドレスが、コンクールで特選を受賞したというのだった。3人は食卓を囲み、ささやかなお祝いをする。楽しくて踊り始めるサンディベル達。
サンディベルはいつしかマークと一緒に踊っている夢を見ていた。
作品の展示会場へ行くと、キティ達もいち早くかけつけていた。
だが何故かN.L.Pの取材を拒否するジュリアン。教会のみんなだけに知らせられればいいのだと言う。

納得の行かないサンディベルは部屋でジュリアンを問い詰める。
…ジュリアンのデザインは盗作だった。それを知られるのを恐れ、大きな新聞社の取材を断ったのだった。盗作の元絵を見て驚くサンディベル…マークの絵だったのだ!
2人の間柄を知ったジュリアンは、サンディベルを通じてマークから盗用の許可を得ようとする。「盗作は自分の実力ではないから、かえって辛い事に…」サンディベルは止めようとするが、「今までの苦労に比べたらなんでもないわ!」と聞き入れようとはしないジュリアン。
「苦労ならみんなしてるわ!貴族の子として生まれたマークだって、両親を亡くし、伯爵家も潰れ、それでも負けずに自分の道を歩き続けているのよ…!」
それでもジュリアンは、考えを変えようとはしない。「ジュリアン、あなたはいろいろな苦労から負けそうになったって言ってたわね。でもあなたがしようとしている事は、本当に負けてしまう事になるんじゃないかしら…?」「違うわ!勝つ事になるのよ!」走り去ってしまうジュリアン。「彼女も悩んでいる…」サンディベルはそう思うのだった。
翌日の授賞式会場、ジュリアンは姿を見せず、受賞を辞退する。その理由を知っているのはもちろんサンディベルとリッキーの2人だけだった。2人がアパートへ行ってみると、ジュリアンは既に部屋を引き払い、何処かへ去ったあとだった。
「私、一から出直して頑張るわ。本当に私が賞を取ったら、まっさきに知らせます。その時はすぐ取材に来てね。」残された手紙を読んで、今までの取材メモを破り捨てるサンディベル。
「サンディベル、編集長にはなんて?」と尋ねるリッキーにサンディベルはこう言う。「決まってるじゃないの!〜ジュリアンはデザイナーになる為にがんばっています〜これ以上何が必要だっていうの!」
31話「ロマンスの終わりを告げる鐘」
カンカンからの連絡で、パリに滞在中のロマネ公国の王女を取材すようとするサンディベル。
ところが取材許可証が無いため、ホテルに入る事も出来ない。そんな2人を押しのけてキティ達が取材に来る。その上アレックまでがガードマンに変装してもぐり込んでいた。
「こうなったら、おいらが…」とひとりで王女の部屋へ忍び込むリッキー。そこへ記者会見を終えたカトリーヌ王女が入ってきた。リッキーに気付いた王女は、チャンスとばかり外へ連れ出してもらう。ボーイに化けたアレックが取材に来たとき、部屋はカラだった。
服を替え、生まれて初めての「パリの休日」を楽しむ王女。夕方になって2人はサンディベルの所へ戻る。オードリーと名を偽って泊まるが、王家の紋章を形どったペンダントを見たサンディベルはもしやと思う…

一方ホテルでは、側近たちが頭を抱えていた。恐らくお忍びで抜け出されたのだろうが、マスコミに悟られずに探し出すにはどうしたものだろうか…そこへ、「もう嗅ぎつけてますよ」と現れたアレックは、秘密で王女を見つけ出す代わりに、今まで門外不出だった王家の美術コレクションの取材許可をうける約束をする。
彼は王女を探し出すのにオリバーを使うつもりだった。オリバーを借りにサンディベルの所へ行くとそこには王女が。「カトリーヌ王女じゃないか!」「やっぱり王女様だったのね…」連れ戻そうとするアレックを放り出し、リッキーは車を暴走させて逃げ出した。
そんなリッキーの気持ちを理解し、「遊んでらっしゃい、ノートルダムの鐘が鳴るまで」と2人を送り出すサンディベル。追って来たアレックに「リッキーも、王女様もきのうから今日の事は、決して忘れない生涯の思い出になると思うわ…決して戻る事は出来ないけれど、夢のような歳月…美しい思い出があってもいいじゃないの!」サンディベルはそう言った。
1日中遊び回るカトリーヌとリッキー。思い出の花園を作り終えたとき、鐘は鳴る。「送らないで。ひとりで帰るから…さよなら!」夕やみのパリの街に彼女は消えて行った。
後日、見送るサンディベルとリッキーに微笑みながら、カトリーヌは王女として去って行くのだった。
32話「パリの地下水道は愛の迷路」
アレックはロマネ公国の王室コレクションの取材に成功し、一躍有名になった。だがそれをやっかんだ記者仲間は彼に冷たい。
そんな彼の後をつける男がいた。不審に思い後を追うサンディベル、彼はアレックの旧友、ディックだった。彼は加わっているニセ札作りのグループから逃げ出したいと言う。すかさずアレックは、一味の取材をしたら逃がしてやるとテープレコーダーを渡してディックを仲間の所へ返した。サンディベルは止めようとするが譲らないアレック。お互い「勝手にしろ」と物別れになる。一方ニセ札を掴まされたキティ達も動き始め、三つ巴の取材合戦となった。
ニセ札作りのグループでは、出来が悪くてすぐバレるニセ札を何とかしようとしていた。
似顔絵書きの青年をつかまえ、手伝わせようと締め上げるが、いくら痛めつけても首を縦に振らない。
「ぼくには、立派な絵描きになると誓った人がいるんだ!どんな事があっても、魂だけは売らないぞ!」−青年はマークだった。
リンチの惨状を見るに見かねたディックは、アレックくに助けを求めたが、マークの名を聞いたサンディベルは後先かまわず飛び出して行ってしまう。後を追うアレック、警察に知らせるスカパン、サイレンを聞きつけたグループは証拠を消しに掛り、札束に火を放った。
煙の中に飛び込むサンディベル。アレックも続く。入ってきたサンディベルに銃口が向けられた時、アレックの空手が炸裂した!助けが来ていると知らないマークは、自力でナワを解いて、マンホールから地下道へ…。
気づいて後を追うサンディベルの声が地下水道にこだまする。迷路の様な地下水道で出口も判らなくなった時、アレックに助けられるサンディベル。わざわざ探しに来たアレックにリッキーは思う。「アレックの奴、もしかしたらサンディベルのこと…」
戻ってみると、ディックが自首し、囮取材をしたアレックに非難が集中していた。「傍で見ていただけのあなた達に、そんな事を言う権利は無いわ!」必死に庇うサンディベル。その時アレックは微笑んだ。初めて見せる笑顔だった…。
33話「マークを狙うシアラー家の陰謀」
シアラー氏がウェリントン伯爵夫人の肖像画をパリでオークションに掛けるという記事がN.L.Pに載った。大新聞社がたった1枚の絵の事を何故ことさらに…不審に思ったアレックは、4年前の新聞からマークの素性を知り、独りつぶやく。「貴族…」
サンディベルは早速オークションの主催者、ベルニエの事務所を訪ねるが、同じ目的で来ていた親子がいた。肖像画を描いた画家の未亡人アガットとその娘マルトだった。客でもない者に絵は見せられんと追い返される4人。だがそこでサンディベルは、マークも肖像画を見たがっている事を知る。どうやらシアラー氏は絵を囮にマークを釣ろうとしているらしい。
オークションの当日、会場に入ろうとしたサンディベルは門前払いを喰ってしまう。キティのさしがねだったのだ。そこで忍び込もうとしたが見つかってしまい、サンディベルとリッキーは縛られて物置に放り込まれてしまう。植え込みの陰でいきさつを聞いていたマークもキティの計画を悟る。忍び込んだ彼は警備員に見とがめられるが、何とか撒くことが出来た。
マークが会場内に入ったと聞いて、いよいよ肖像画のオークションが始まった。カーテンの陰で見守るマーク。オリバーの助けを借りて必死に脱出しようとするサンディベル。マークが見つかり逃避行が始まるのと、サンディベル達が物置を飛び出すのは同時だった。後ろからはキティ達、そして前からはサンディベル。挟まれて立往生してしまうマーク。そんな時、傍らのドアが開く。中から現れたのはアレックだった。(こいつがマークか…)入れかわりにマークを逃がしたアレックは、ドアの前に立って皆をやりすごす。
逃げるマークは思う。「サンディベル、ぼくだって君に会いたいんだ。でも、君に分かれる時に誓ったんだ。ぼくは必ず立派な絵描きになって君を迎えに来るって。だから、今君に会う訳にはいかないんだよ。さようなら、元気で…」
夫人の肖像画は、シアラー氏が買い戻すつもりだったが、ベルニエ事務所でのアガットのやり取りを聞いていた石油王、ナハラという男に、100万フランで落札されてしまう。ナハラはアガットに言う。「その絵は奥さんの家の壁にお飾りになるとよい」喜ぶマルトとサンディベル。マークもきっと…。
「マークを逃がしたのはおまえだろ!」と詰め寄るリッキーに「オレはね、たとえばある女の子に好きな男の子がいたとしても、必ずオレの方を振り返らせてみせるさ」アレックは豪語するのだった。
やっと安住の地を得た伯爵夫人の肖像画…その顔は心なしか微笑んでいるようだった。
34話「ブドウ畑に帰ってきた娘」
ブルゴーニュ地方へやって来たサンディベル号。ウサギを避けようとして路肩のブドウの木に衝突してしまう。「これは一番いい実をつける木だぞ!」出てきたオヤジさんはえらい剣幕だったが、事情を話すととたんに態度が変わって車の修理までしてくれると言う。
「直るまで家に居るといい」2人は目を白黒。家で勧められシャワーを浴びるサンディベル、そこへ女の子の顔写真が入った額を手にリッキーが飛び込んで来る。「マリー=フェルラック?」どうやらサンディベルはこの家の娘に似ているらしい。夕食の席でその事を尋ねると、「あいつは死んだよ」と素っ気ない返事をするフェルラック。
その3人の楽しそうな食事風景を外からうかがう影があった。気付いたリッキーは幽霊だと飛び上がるが、おもてには誰もいない。部屋に戻って話をしていると再び影が!後を追って飛び出す2人。丘の上の廃墟で人影に声をかけると、思った通りそれは娘のマリーだった。彼女は女優を目指して家を出たが、夢破れて帰って来たのだった。
そんな時サンディベルはエドワードと再会する。マリーをここまで送って来たのはエドワードだった。彼はフランスへ駆け落ちして行方不明になった姉を探していたのだった。
彼の助言を受けたサンディベルは、「私にはパパがいません。背こうにも喧嘩しようにもパパはいないんです。背けるパパがいるだけでもどれだけいいか…だから仲良くしていて欲しいんです!」と言い残し、フェルラックの許を去る。
そこへ現れるメリー。「今日の晩ごはんは何にするかな…久し振りにアレが食いたいな」「…ムール貝のワイン蒸し…」「覚えていてくれたのか、わしの大好物を!」
和解する2人を遠くから見守るサンディベルとエドワード。彼の姉探しを手伝う事を約束してサンディベルは出発した。今度は南フランスへ!
35話「あの人をママと呼べなくても」
カンカンの指令でニースの海岸を目指すサンディベル号。何故か編集長はその目的を話そうとしない。車を目印に誰かが会いに来るというのだが…。「訳のわからないまま行動するってなんとなくブキミねー」

その夜、何者か車に忍び寄る影があった。吠えるオリバー。2人が外をのぞいたときにはもうその人影は無かった。

翌朝気付いてみると、タイヤの空気がない!これはスカパンの陰謀だった。空気入れの代わりにネタをよこせと言うのだ。サンディベルは2時にある人物と会うという事を話すが、もちろん車が目印とは言わない。さて、空気を入れて走り出すが、今度はガソリンが無い!2重の妨害だったのだ。ニースに着いてからお金を下ろす予定だったので、スカンピン…これではとても2時までには…リッキーはガソリンを手に入れてくる、と行ったきり戻って来ない。
捜しに出たサンディベル。庭先の野バラに見とれていると、その別荘の夫人に声をかけられる。…話を聞けば、この家の娘は海難事故で行方不明になったらしい…(もしかしたら…私のママ!?)形見のイヤリングを見せようとしたとき、帰って来た主人が諭した。「君は…あの子がいつまでも生きていると思いたいのだろうが、遭難の翌日、あの子は地中海に遺体となって…」
(ママじゃなかった…)川を見つめ泣いているサンディベル。振り返ると、さっきの夫人が…。バラの花とクッキーをもっていきなさいと言う夫人。

車へ戻るとリッキーが首を長くして待っていた。彼はガソリンを手に入れる為に、ガソリンスタンドでアルバイトをしていたのだった。
クッキーをわたし、リッキーに感謝するサンディベル。何とか時間に間に合いそうだ…。
海岸で最初に現れた男は、タバコの火を借りに来ただけだった。待ち構えていて飛び出して来たキティ達に驚き、男は行ってしまう。
あ然とする一同の後ろから、聞き覚えのある懐かしい声が…「スコットのおじさん!おばさん!」飛びつくサンディベル。海岸でおちあう人物とは、旅行中のスコット夫妻だった。
あてが外れてまた編集長に怒鳴られるキティ達。サンディベルとリッキーは夫妻と食事を共にし、幸せなひとときを過ごすのだった…。
36話「アテネへの危険な同乗者」
ギリシャで古代美術品が発掘されたというニュースをアレックから提供されるサンディベル。代わりに、アテネまで乗せて行って欲しいと言うのだった。
カンカンは取材を許可するが、「おい、オリバー、よーく見張っていようぜ。あいつはサンディベルのこと、好きなんだから」とリッキー。
ところがアレックは、同じ事をキティにも言っていた。アレックを乗せたサンディベル号とそれを追うキティ達。山道にさしかかった時、ふいに現れたヘリコプターがなんとマシンガン掃射を加えてきた!「やつらは俺を狙ってるんだ!」車の後部ゲートから単身、バイクで飛び出してゆくアレック。「また会おうぜ」
そんな彼の消えた方角で爆発が…。炎上しているアレックのバイク…ヘリはそれを見て去って行く。アレックは!?…彼は無事だった。キティの車に乗りかえたアレックは、今度は車に乗ったギャングに狙われ、銃撃付きのカーチェイスを展開しながら、あっという間に過ぎ去っていった。
アレックの身を案じながらもアテネへ着くサンディベル。しかし、どこへ行っても美術品が発見されたというニュースは聞かない。アレックからのニュースはデタラメだった。また、彼は何故、追われているのか?いぶかしんでいる所へスカパンに声をかけられる。見るとキティとアレックもいた。難を逃れた4人は、サンディベル号の中でアレックから事情を聞く。
彼は、麻薬密売組織を追って、ここアテネのパルテノン神殿で取り引きが行われるという事をつかんだ。しかし向こうにも悟られてしまったので、2人の車を乗り継いで行こうとしたのだった。
麻薬中毒であった父に苦しめられた彼にとって、麻薬組織は許されざる存在だった。今度ばかりは協力して…とパルテノンへ向かう5人だったが、土壇場でしくじって相手に気付かれてしまう。逃げ遅れてしまうキティ。銃をつきつけられ、「殺すならオレだけにしてくれ!」と彼女をかばうアレック。
オリバーの活躍も空しく引き金が引かれようとした時、間一髪、皆は現れた警官隊に救われる。警察には知らせなかった筈なのに…。実は、アレックの話をサンディベルは無線でロンウッドニュースへ流しており、危ないと判断した編集長が連絡したのだった。
夕陽の中を一人去ってゆくアレック。サンディベルとキティは、それぞれ彼の新しい一面を見たような気がした。それにしても、今日は何て波乱に満ちた1日だったのだろう…。
37話「船小屋に残されたマークの絵」
サンディベル達は、子どもスケッチ大会の取材にやって来た。そこで早速事件が。ニコラという少年が、絵の具を盗んでアレックに捕まったのだ。「絵の好きな人に悪い人はいないわ」と弁護するサンディベル。ところがアレックは「世の中はそんなに甘くないという事を、知っておいた方がいいのさ」と取り合ってくれない。ニコラはとうとうキティのところに連れて行かれてしまった。
ニコラを慰めに来たサンディベル。「貧しい青年画家に絵の具をあげたかった」という彼の言葉を聞き、画家が住んでいた船小屋へと急ぐ。サンディベルにはある予感がしていた。小屋の中に残されていた絵のサイン=M.B=マークの絵だ!それも今までの中で一番素敵な…。
サンディベルはマークの後を追う。この事を伝えたい為に…。もちろんキティもアレックも後を追った。ところが崖崩れに道をはばまれ、皆、止む無く車を降りて歩いて山越えをする事になった。
一方そんな事とは知らぬマークは、スケッチをしながらの旅を続けていく。
リッキーが、ふとした事で投げた石が、古代遺跡にあたり、風化していた遺跡は大音響と共に崩壊した。崩れた古代神殿の石柱がサンディベル達を襲う!リッキーをかばい、石柱に足をはさまれてしまったサンディベル。リッキー、アレック、スカパンの協力の甲斐あり、救われたものの、とても自力では歩ける状態ではなかった。
夕暮れの川原で、絵を描き終え、たき火をしているマーク。そんな彼に声をかける老人があった。画商ルザンヌと名乗った彼は、船小屋に残してあった絵を温かいものだと賞賛し、援助を申し出るのだった。マークは思わずつぶやく。「サンディベル、君に教えてあげたい。僕の絵が明るいんだそうだよ!温かいものが伝わってくるんだそうだよ!」
−今までの中で一番素敵な絵−この言葉を伝えたいがため、なおもマークを追おうとするサンディベル。その気持ちを理解し、サンディベルをおぶってやるアレック…。
サンディベルは彼の優しい一面に接することができた。しかし時遅く、マークを乗せた列車は発車してしまっていた。山のふもとに遠ざかる列車の明り…サンディベルはとうとうマークに会う事は出来なかった。しかし彼女の伝えたかった言葉は、ルザンヌによってマークに届いていたのだった。
38話「盗まれたサンディベル号」
ローマまでやって来たサンディベルとリッキー。2人は、トレビの泉で一休みしているスキに、何とサンディベル号を盗まれてしまった。3人組の自動車泥棒が出没しているといううわさは耳にしていたのだが、まさか自分たちは…と油断していたのだった。もちろん警察には連絡できない。記者が記事になっては物笑いの種になると思ったからだ。オリバーを使って捜そうとするが、オリバーは牝犬とじゃれつく始末…。
一方その頃、エドワードからカンカンに連絡が入っていた。サンディベルの両親と同じボートに乗っていた婦人が、ナポリにいるというのだ。しかし、車を盗まれたサンディベルにそれを知る術はない…。一方、見知らぬ男たちが乗るサンディベル号を見かけたキティは、不審に思い声をかけるが、逆に無理やり車に連れ込まれ誘拐されてしまった!そこへ通りかかったサンディベルとリッキーは、車を盗んだのはキティだと誤解してしまう。
タクシーでサンディベル号を追い、ナポリへの道を進む2人。「ナポリで降ろしてくれたら、満足のいくだけのお金を払うわ」キティは3人組とこう約束するが、いざ着いてみると、男達は約束を破り、有り金を全部出せと凄んできた。途方にくれるキティとスカパン。
「金なら、くれてやったらどうだい。お嬢さん」振り向くキティ達の前にスックと立ち上がる人影、アレック=ピーターソンだ!ナイフを抜いておそいかかる3人を電光石火の早業でたたきのめす!やがてサンディベル達もナポリに到着し、そこでキティに対する誤解もとける。
キティは「その車を取り返してくれたのはアレックよ」と告げ、何故か料金も全て払うと言ったのだった。「どうしてアレックの事なんて…」問うスカパンに、「あいつにこれ以上借りを作りたくないからよ」キティはそう答えるのだった。
連絡も取れ、婦人からママの話を聞いたサンディベル…。その後ボートも転覆してしまっていて、最終的にママの行方はわからなかったが、この広い空の下のどこかに生きているかもしれないという希望がわいてくるのだった。
39話「マルセイユの危険な母さがし」
ママと同じボートに乗っていた人が助かっていた!もしかしたらママも…そう思ったサンディベル。もし遭難者を助けても報告しなかった船があったとしたら…きっとそれは悪い事に関係した船に違いない−たとえば密輸船のような−。サンディベルはカンカンの止めるのも聞かず、マルセイユの暗黒街に潜入して行く。「それにしても何て途方もない推理をする子なんだ…」カンカンは思う。

密輸組織をあたり始めたサンディベルは、1人の男の名を耳にする−”ジロドウ”−港のボスの名だ。一方サンディベルを尾行したスカパンは、サンディベルの目的は密輸組織の解明にあり−と勝手に思い込み、キティに報告する。先を越そうとしたキティを止めたのはアレックだった。「密輸組織が相手じゃ、お嬢さんの新聞記者ごっこじゃ済まないぜ。」
怒ったキティはアレックを叩く!無言のままキティのほおを打ち返すアレック…彼の思いやりを理解出来なかったキティは怒りに身を震わせ走り去ってしまう。
昔のエプロンドレスを引っぱり出して花売り娘に変身したサンディベルは、女装したリッキーとそしてオリバーを連れ、夜の酒場街を歩いて行く。

その酒場の一軒で、1人の船員を相手にキティが買収を試みている。船員はリンチを恐れ首を縦に振らなかったが、その光景を物陰から監視する男がいた。手ぶらで酒場から出て来たキティ達に、1台の黒塗りの車が近づく。「お嬢さん、あなたのお会いになりたい方が、さっきからお待ちですぜ…」車の中にはジロドウその人が!車に連れ込まれ誘拐されてしまうキティ!傍らにはさっきの男がいた。−情報屋のジョジョ−。2人は彼に売られたのだ。
それを目撃し、あとを追おうとするサンディベルはアレックとばったり出会う。サンディベルが密輸組織を探っている本当の理由を知ったアレックは、キティの事は俺に任せて、情報屋をあたってみろと言う。…奴等は何でも知っていて、金次第で何でも教えてくれる。きみのママの事も知っているかもしれない…と。

リッキーの機転でまんまと情報屋の居所をつきとめたサンディベル。「一万フランだ。パークホテルの下の海岸で待ってるぜ…」そう言う情報屋・ジョジョ。一万フラン!?とてもそんな大金は…しかしそれを聞いたアレックは、その情報は本物に違いないと睨んだ。
アレックには一万フランを手に入れるあてがあった。捕まえた女新聞記者がイギリスの大財閥・シアラー家の一人娘だと知ったジロドウが、シアラー氏に身代金の要求を出したから、キティの救出に成功すればシアラー氏が出してくれる…そう思うのだった。
待ち合わせ時間にシアラー氏の泊まるホテルを訪ねたアレックとサンディベル達は、シアラー氏が心配と疲労で倒れてしまったのを知る。運悪く最後の電話の後だったので、ジロドウ達はこの事を知らない。取引に行くのが遅れれば裏切りとみなされキティは殺されてしまう!
サンディベル号を発進させるサンディベル達。目指すは港の倉庫街だ!「あの時…アレックの言う事を素直に聞いておけば…」倉庫の中で縛られ後悔するキティ。その横では待ちきれなくなったジロドウが処刑の合図を今まさに下そうとしていた。
まさにその時、車体をきしませながら全速で飛び込んで来るサンディベル号。慌てるギャング達に催涙弾ランチャー、ネット砲、高圧水流と次々に自慢の秘密兵器を繰り出し迫る!浮き足立ったギャング達をマジックハンドで追い出しキティを無事救出した。
身代金は全額譲るというシアラー氏に、アレックは一万フランだけ貰えば良いと言った。「金は大切に使うもんですよ…一万フラン…それが今のサンディベルにとっては母の手掛かりを得る切符なんです。それさえあれば、母の事が判るかもしれないんですよ。」
約束のパークサイドホテル下の海岸に、ジョジョは立っていた。一万フランを手に、駆け寄るサンディベル。もうすぐ母の事が判る!彼女の顔は喜びに満ちあふれていた。

〜一瞬、響き渡る銃声〜サンディベルの目の前でジョジョの体が宙に舞う…ジョジョの行動を裏切りとみなしたジロドウによって処刑されたのだった。「おじさん!教えて!」苦しい息の下でジョジョが遺したたった一つの言葉は「ラル…シュ号」
それが何を意味するのか、今となっては判らない。しかしサンディベルは何故か、母が生きているという予感を強める。
嵐の海で、母が密輸船に助けられたという想像は、今では確信に近いものになっているのだった…。
40話「港のボスの意外な告白」
サンディベル、リッキー、アレックの3人は警察で大目玉をくらった。3人の所為でジロドウに逃げられてしまったというのだ。
シアラー夫妻はキティにイギリスに戻ってくるように頼むが、キティはあくまで新聞記者の道をつらぬくとつっぱねる。
「お嬢さんと思っていたが、仲々いい根性をしている、オレも負けてはいられないな」
そんなキティを見たアレックは、彼女に対する見方を今までとは少し変えるのだった。
海運事務所でラルシュ号について調べようとしたサンディベルだったが、何故か、そのページだけ破り取られていた。
手掛りを求めて、ラルシュ号の船員の家族を訪ねるサンディベル。
だが誰もラルシュ号の消息について知らないのだった。
港のパイロット達も、最近ラルシュ号を見かけた事は無いと言う。
ジロドウに直接聞こう。そう思った矢先に彼の隠れ家が発見された。大ボスが彼を売ったのだった。
銃撃戦の末、観念して出て来たジロドウ。写真を撮ろうとしたスカパンは驚く。
顔が違う!?ニセモノだ!本物のジロドウは既に裏から逃げてしまっていたのだった。
ジロドウは仲間〜ラルシュ号のページを破った男〜に助けを求めるだろう。
そう判断したアレックは、ギャングに変装して事務所付近をうろついてみた。
さっそく反応を示した男がいた!どこからか電話を受けたその男は車で出て行く。
後を付けるサンディベル、そしてキティ。案の定、彼を呼び出したのはジロドウだった。
ところがジロドウを見て飛び出そうとしたキティとスカパンは何者かに押さえ付けられてしまった。
彼らもジロドウの仲間なのか!?
そのスキに逃亡をはかるジロドウの車に、サンディベルは必死でしがみつく。「待ってジロドウさん!聞きたい事があるの!」
キティを押さえ付けた男達は、実はシアラー氏が雇ったガードマンだった。それを聞いたアレックは激怒する。
「馬鹿野郎!自分の娘だけ助かりゃいいのか!サンディベルがここまでどれほど苦労したと思っているんだ!
あんたのそういう所が、キティを駄目にしているんだ!」
運転を誤り、激突して炎上する車からジロドウを助け出したサンディベル。
「ラルシュ号は爆発して沈んじまった…8年前、弾薬を密輸中にな。木端微塵に砕け散っちまったよ…」彼は言う。
母の秘密を積んだまま沈んでしまったラルシュ号…それを聞いたサンディベルは、アレックにすがって泣くのだった…。
41話「拾われた子犬と脅迫状」
母の手掛かりをすっかりなくして気落ちしているサンディベル。カンカンは故意にきつい言葉をかけるが、それも彼女を思っての事だった。
本来の仕事、新聞記者としての活動を再開したサンディベルを見て、アレックは、内心ホッとするのだった。
そんな時、キティは子犬を拾い、それをサンディベルに譲る。サンディベルは記事が出来たと大喜び。
その頃、レナール家では、名犬カトリーヌの子犬の一匹がいなくなった事で大騒ぎをしていた。
召使いのマルセルに命じて子犬を捜させるレナール夫人。
だが子犬は、実はそのマルセルが仲間のルイと計って誘拐していたのだった。
捜すふりをしてルイと連絡を取ったマルセルは、そこで大変な事を聞く。
子犬がいなくなってしまったというのだ。その子犬こそ、キティが拾った犬だった。
アレックの捜査は早く、すでに子犬の飼主を見つけていたが、その情報を捜査に難航していたサンディベルに教える。
そんなアレックを見て、キティは言う。「あなた、サンディベルに気があるんじゃないの?」
すかさず答えるアレック。「そう言うお嬢さんこそ、この俺に気があるんじゃないのかい?」
更に、「俺にも妹がいた。生きていれば丁度サンディベルと同じ歳だ」そんなアレックに、キティは返す言葉もなかった。
レナール家に子犬を届けに来たサンディベルは、何も知らずに子犬をマルセルに渡してしまった。
マルセルはさっそく夫人に脅迫状を見せ、犯人が買戻しを要求していると告げるが、夫人は警察に通報していたので一向に動じない。
もしあの女の子達が自分に子犬を渡したと言ったら、ばれてしまうと、マルセルとルイはサンディベルを誘拐する。
オリバーの知らせでアレックは2人の危機を知った。バイクの故障を装って彼らのアジトである店に近づくアレック。
まずは、のこのこ出て来たルイを一撃で倒す!続いて現れたマルセルもアレックの敵ではなかった。無事サンディベル達を救出するアレック。

母犬と再会する事が出来た子犬を見て、サンディベルはいつかこの様な時が、自分にも来るに違いないと思うのだった…。
いつか母と会えるその日が!
42話「ピレネー山麓にゆれるマークの心」
マークはピレネー山麓のふもとで絵の修行を続けていた。絵が完成し、マークはそれをパリのルザンヌに送るが、パリからマークあてに手紙が届いていた。「君が本当に得心のいく絵が出来た時、送ってほしい」というのだ。
納得のいかぬ絵を送ってしまったと後悔したマークは、絵を取り返して焼き捨てようと郵便集配車を追う。運転していた局員に返してくれと頼むのだが証拠がないと振り切られ、バイクの運転を誤ったマークは崖下へと転落してしまう。
その後、運悪く集配車は、二人組みの強盗に乗っ取られてしまう。しかし、マークが集配車を追っているのを見た人々の証言で、マークが犯人にされてしまう。それを聞いたサンディベルは、マークが住んでいたという山小屋へ向かった。
既に山小屋へ来ていたキティとアレック。キティはマークを愛する心がつのるあまり、我を忘れて叫び散らすのだった。「ここにあるものは全て私のものよ!マークの婚約者は私なのよ!みんな出てって!」
小屋の近くまで戻って来たマークは、そこで自分が指名手配になっている事を知った。警官に見つかり手紙を残して逃げて行くマーク。そこには自分が犯人を捕まえると記されていた。心当たりのある洞窟へ来たマークは、その中で集配車を見つけた。しかし、自分の絵は無い!2人組の強盗は、有名な画商、ルザンヌ宛の絵だから、きっと値打ち物に違いないと、持って行ってしまったのだ。
洞窟へ来たサンディベルは、全てを知る。マークは気にそまぬ絵を取り戻そうとしているのだ…と。
2人組に追いついたマークだが、逆襲されて崖下へ突き落とされてしまうのだった。落ちて行くマークを見たキティとサンディベルはその場に駆けつけるが、そこにはアレックがいるだけだった。実はアレックがマークを隠してしまったのだった。
マークを助けたアレックは、「逃げ続けている君の生きる姿勢が、絵筆をにぶらせている。自分の心に忠実に生きるんだ!」と彼に忠告するのだった。
マークの絵は崖から落ちて砕けてしまった。それを見てホッとしたマーク。彼はある固い決意をした。自分の生き方を決める為に…。
43話「嵐の中に立つマークの決意」
シアラー夫妻は画商ルザンヌの許を訪れた。娘の婚約者マークに、本当に絵の才能があるのかと、聞きに来たのだ。ルザンヌは船小屋に残してあった絵の素晴らしさを告げ、どんな壁でも乗り越えるだろうと語った。
キティはマークの為にアトリエを建てていた。そんな時、キティに宛てたマークの手紙が届く。”両親に大事な話がしたい”というのだ。勝ち誇ったかの様に、それをサンディベルに見せるキティ。キティは別邸のあるパリへと向かった。
ショックを受けたサンディベルも、アレックに促されてパリへと向かうのだった。
パリ〜シアラー家別邸〜キティは純白のドレスに身を包みマークが現れるのを待っていた。運悪く天気は雨になる。屋敷の陰から様子をうかがっているサンディベル、リッキー、アレック。マークが現れた。しかしマークは、門より中には入ろうとせず、雨の中に立ち尽くすのだった。
シアラー氏が、”シアラー家の援助を受けずにルザンヌの援助を受けた”と、家に入る事を許さないのだ。雨が激しくなり風も吹き始め、嵐となった。嵐の中でスコットランドを去った夜の事を思い出すマークは決意を更に固めた。ずぶ濡れのマークを見かねたキティは父に頼む。「お願い!マークを入れてあげて…」シアラー氏はやっとマークを家の中へと入れる。
マークの口から出た言葉…それはキティには衝撃的なものだった。「婚約を解消して欲しい」そしてそれをあっさり許すシアラー氏。
出て行くマークを泣きながら追うキティ…マークはそれを振り切ると去って行った。
何故、婚約解消を許したのかと詰め寄るシアラー夫人に、シアラーは言うのだった。「ルザンヌが目をかけた程の腕だ…マークはきっと画家として世に出るだろう。絵描きをしながら事業を切り回す事は出来まい。わしの事業は道楽の片手間に継がせる訳にはゆかない!キティには可哀そうだが、わしは事業を選ぶ…」と。
「あなたは鬼です!」夫人は言った。「そうさ鬼さ!だがその鬼のおかげでぜいたく三昧が出来た事を忘れるな!」シアラーの口調は荒い。彼とて、娘の事が気にかからぬ筈は無いのだから…。
泣き崩れるキティに近づくアレック。「没落貴族に振られた心境は?」茶化すアレックをキティは思わず打ってしまう。

だがアレックはそんな彼女を優しく受けとめ、言うのだった。「キティ=シアラーともあろう者が…一つの恋が終わったら、また違う恋をすればいいじゃないか…」アレックの胸でキティは泣いた…。
「若い者はいい…ああしてまた、すぐ友達が出来る…」それを見ながらシアラー氏はしみじみ言うのだった。嵐は去った。その空はまるで今のマークの心の様に、晴々としたものだった。
44話「再びつかんだ母のてがかり」
「君はあの虹を追いかけていただけなのさ…貴族の称号…スコットランドの古い城…美しい絵を描く若者…」キティの、マークへの思いを断ち切るためアレックは言う。「その証拠に、君はむしろマークより俺の事をよく知っているんじゃないのかい?」とキティに囁く。
「ええ知ってるわ!成り上がりで厚かましくて!恥知らずで惚れ屋で!傲慢で情知らずで!わがままで意地っぱりで!欲ばりで…みんな…あたしの事よ…」と泣きながら言うキティ。
アレックもまた、「それこそ俺なんだよ」と答えながらも、この成り行きに自分ながら驚いていた。「なぜ…こうなっちまったんだろうな…」
アレックを気に入り、シアラー商会を任せたいと言うシアラー。だがアレックは初心を忘れたくないと断り、出て行く。キティもスカパンも又、自分の道を貫きたいと出て行った。
しかし、シアラーは言う。「アレックは新聞記者で満足する男ではない、いつか戻って来る…」と。
その頃、エドワードは、姉リンダの行方を追っていた。自分の手元に残った姉のパスポート…しかし、姉はフランス国内にはいない。とすると、姉は偽パスポートを作ってもらったのでは?そう考えたエドワードは、サンディベルにも協力を求め、偽パスポート作りの名人シャルルを捜す。
サンディベルとリッキーは、シャルルに会えるチャンスをつかんだが、途中でジロドウの子分だった殺し屋に見つかり、つかまってしまう。マルセイユでの仇を今、とろうというのだ!
一方、エドワードはシャルルと会う事に成功する。だがシャルルは、リンダの写真を見ない事にはパスポートを作ったかどうかわからないと言う。エドワードは困った。写真は父が全部処分してしまっていたのだから…。ルザンヌに代わりの似顔絵を描ける画家を紹介してもらうエドワード。その画家は何とマークだった!
サンディベルとの待ち合わせ場所へやって来たエドワード、ルザンヌ、マーク。マークはそこでエドワードから”サンディベルの母はラルシュ号に助けられた”と聞かされ驚く。マークは以前、ラルシュ号の乗組員だったという男を助けた事があったのだ!そこへオリバーがサンディベルの危機を知らせに来た。サンディベルが危ない!走れ!マーク!
45話「母のてがかりを握る男」
エドワードはカンカンに、サンディベルの危機を伝えた。サンディベルに連絡をとってみるカンカン。その連絡の早さに怯えた殺し屋は、サンディベルとリッキーを今にも殺そうとする。
そこへ飛び込んで来るマーク!殺し屋にパンチを浴びせるが、スキをつかれ、腕をねじ上げられてしまった。画家の命である腕を折ろうとする殺し屋。
絵の為にまわりの者に迷惑をかけてきた今までの自分を反省し、腕を折られてもかまわないと言うマーク。「マークの腕を折らないで!」泣き叫ぶサンディベル。エドワードの連絡により警察が来た。「負けたよ…」殺し屋はマークを放し、自首して行った。連行されてゆく殺し屋に、サンディベルは言うのだった…「ありがとう…」
マークの情報によりツーロンの港町へ向かったサンディベル、リッキー、マークの3人は、ラルシュ号の昔の乗組員、ローランに会った。しかしローランは16年前の事となると固く口を閉ざしてしまう。「…みーんな忘れちまったよ」うそぶくローラン。朝が来た。あい変らず知らぬをくり返すローランに、マークは怒りを覚える。思わずローランの襟首をつかみマークは言う。「たった一つの手掛かりを…あなたは、あなたは…潰してしまおうっていうのか!」
自分の為に暴力をふるうのはやめて…とサンディベルはマークを止める。ローランは行こうとするが、「ありがとう」と言うサンディベルの言葉に足を止めた。「あたしのママかもしれない人を助けてくれたから…」と言うサンディベル。その言葉に打たれたローランは、本当の事を語り始める。
16年前、あの海難事故の時、彼は漂流してきた女性を救った。「俺達の仕事の密輸がばれたらどうする!もう一度つき落とせ!」と言う仲間も、女が記憶喪失になっていたので思いとどまった。しかし、このままではどの道不幸になる…とあわれんだローランは女を逃がしてやるが、その際邪魔しようとした仲間を殺してしまう。…その事が、彼に真実を語るのをためらわせていたのだった。
カンカンから連絡が入った。ルザンヌがマークに用事があるというのだ。マークと別れ、リッキーと共に、その女の人が逃れたと思われる島、ルコシカ島へと向かうサンディベル。その心は、不安と期待が入りまじって、複雑にゆれ動いていた…。
46話「今、めぐり逢えた母は…」
ルコシカ島へ向かうランチの上で、そこへ流れついたであろう母を想うサンディベル。ランチはやがて島に着いた。はやる気持ちをおさえ、島の人々に16年前の事を尋ねてみる彼女だったが、彼等は新聞記者である彼女をいぶかしみ、何も教えてくれようとはしない。
彼女の落胆は、徐々に大きくなってゆくのだった。「島に着く前に…力尽きてしまったのかしら…」そんな事まで考え始めた時だった。
島民の一人が彼女に言った。「そんな事を記事にして何になるんだい」と。その言葉にハッとするサンディベル。(島の人達は、私のやっている事を記事探しと勘違いしている!)正直に母親探しをしているのだと告げた時、島の人の態度は変わった。彼等の語った真実…それはまさしくサンディベルの求めていたものだったのだ!16年前、海岸へ流れついたその人は、今では島の教会の養護院でマザーの片腕として孤児たちの面倒をみているというのだ。「たとえどんな過去があったにせよ…おれ達に助けを求めてきたんだ。だから島に人間はだれも、よそ者にはその事を話さない。それが養護院でがんばっているあの人への恩返しさ」そう言う島の人々。
ついにサンディベルは母の所在をつきとめたのだった!
…海岸に臨む丘の上に、その教会はあった。暖かい日差しの中、子供達が庭でかくれんぼをしている。養護院の子たちだ。その中央で目をつむりしゃがんで数をかぞえる婦人の姿…「ひとつ、ふたつ…」それはまさしく探し求めた母の姿だった。「ママ…ママ会いたかったわ!会いたかったわママ!」サンディベルの胸は懐かしさで一杯だった。思わずかけ寄り母にすがる。
「サンディベル?…いいお名前ですね…」自分が娘につけた名も忘れてしまっている母。サンディベルは言葉を失った。教会のマザーから、サンディベルは一つのイヤリングを見せられた。母が流れ着いた時のたった一つの所持品だったというそれは、果たして白水仙の形を…震える手でポケットから取り出したサンディベルのイヤリングと、それは全く同じものだった。16年ぶりにめぐり会った2つのイヤリング…だが今や、それは悲しみをつのらせる役目しかなかった。
窓の外では、母が子供達と輪になって踊っている。「ロンドン・ブリッジ」を口ずさみながら。それは彼女がたった一つ失わなかったイギリスでの記憶のかけらだったのだ。
「記憶を失くしていなければ…ママだってこんなに大きくなった私をどんなに喜んでくれるか…それなのに…」サンディベル目に涙が光る。サンディベルは、せめてもの思い出にと、輪の中に入って、日が暮れるまで子供達と一緒に母とのひとときを過ごすのだった。
そして夕陽の沈む頃…サンディベルは教会に別れを告げようとしていた。「何か空しいんだよな…オレは…!」くやしがるリッキー。そんな彼を促し、サンディベルは後ろも振り返らず車を出すのだった。そんな彼女の心は知らず、子供達は去ってゆくサンディベル号に手を振るのだった。「また来てね!」そんな言葉も、サンディベルの心には辛く響くだけだった。
だが、あとを追おうとした子供の一人が、足を滑らせ海へ落ちてしまった。車を戻し、海へ飛び込むサンディベル。「助けて!サンディベル助けて!サンディベル!サンディベル〜ゥ!」救いを求める子供の声…聞く母の脳裏に16年前の衝撃が走った。頭を押さえ、うずくまる母…。

無事、子供を救ったサンディベルが海岸に佇んでいた時、母はやって来た。「サンディベル…?あなたが…?」母に今、失われた過去が戻ったのだった。サンディベルの差し出すイヤリング…それはまさしく、赤ん坊の彼女に母が握らせてやったものだった。
離れ離れになっていた二つのイヤリングは、今、本当に一つになろうとしていた。そして…それを16年間守り続けていた2人も…

サンディベルは、16年ぶりに母の胸に抱かれた。

さらに驚くべき事が待っていた。エドワードの探し求めていた姉、リンダも、彼女だったのだ。

長い間、サンディベルを陰になり日向になり守ってくれたエドワード。彼はサンディベルの血を分けた伯父だったのだ。

サンディベル、リンダ、エドワード…3人がそれぞれに歩んできた16年が、今、ひとつになった…。
47話「さようならサンディベル幸せを永遠(とわ)に!」
夕陽に染まる海を見つめながら、サンディベルは母と初めて親子の会話を交わした。16年間の思い出を語るサンディベル。
スコットランドで…ロンドンで…そして…。過ぎ去った長い年月が走馬灯のように彼女の頭をよぎる。「あたし…もっともっと沢山話すことがあるんだけど、いっぺんにはとても…」
「いいのよサンディベル。時間はいくらでもあるわ。…もう決して離れる事はないんですもの」母の膝に泣き伏すサンディベル。
リンダの瞳にも涙が溢れていた。
その夜、寝床の中で、母は失われた過去をたどっていった。16年前の海難事故が全ての運命を変えてしまったのだ。好きな人と駆け落ち同然でエドワード家を飛び出し、フランスに渡って苦労した末、生活も落ち着きサンディベルが生まれた。しかし、やっとつかんだ幸せもドーバーの荒海に消えてしまう。
「ごめんなさいね…サンディベル。パパとママを許してね…親の身勝手から、子供のあなたにまで大変な苦労をかけてしまって…」
リンダの話は涙で途切れた。「あたし…ママ達をうらんだ事なんて一度もないわ!2人が知り合わなければ、私はこの世に存在しなかったんだし…私を育ててくれたパパとも会えなかった…私も…私もこの世に生まれて来てとても幸せよ…幸せよママ!」
「こんなに…こんなにすばらしい娘に育ててくれたクリスティーさんて、本当に素敵な、立派な人だったのね…」夜は更けてゆく…。
「なあオリバー、知ってるか…ママって、おっぱいの匂いがするんだぞ…」オリバーの肩をなでながらリッキーがつぶやく。(自分だけ、ひとりぼっちだ…)まだ寝付かれないでいるリッキーに、エドワードが声をかける。「リッキー、握手しよう。…君は、サンディベルの助手というより弟分だろう?だったら私にとっても弟分だ。なんなら、本当の兄貴だと思ってもいいんだよ」「兄貴じゃ大きすぎらァ」笑うリッキーのほおにも、一筋の涙が光っていた。
翌朝、カンカンから連絡が入った。パリで待っているから早く来い…と言うのだ。

編集長自らお出ましの特ダネとはいったい何なのだろうか…。手を振る子供達に見送られ、リンダとエドワードを同乗させたサンディベル号は、教会を後にするのだった。
凱旋門の下では、カンカンだけではなく、オナー夫人とエバも待っていた。久々の再会に喜ぶサンディベルを、カンカンは特ダネ取材にせき立てる。着いた先は美術館…もしやと思うサンディベル。「遅いじゃないの」「記者会見がはじまるぞォ」キティやアレックも来ている。サンディベルの予感は当たった…。美術館の中はマークの絵でいっぱいだった。マークはヨーロッパ新人絵画展のグランプリに選ばれたのだ!
「ぼくが、どうにかここまでがんばって来られたのは、ぼくのそばにはいなくても、ぼくの心の中に住み、いつも励まし、支えになってくれた人がいたからです」記者会見で語るマーク。「その人ならここにいますよ!」とアレックにせき立てられ、サンディベルはマークの前に。手を取り合う2人に惜しみない拍手がおくられる…。
山あいの緑の中にそびえる古城、湖のほとりの静かな町並み…サンディベルは2年ぶりのスコットランドにいた。クリスティーの墓の前で祈りを捧げる一同。リンダもマークもカンカンも、それぞれに想いは尽きない。クリスティーの望みは全てかなえられる事となった。…捧げる花輪の中に、彼の微笑みがうかんでいるような気がした。
3年前と代わらない、なつかしの我が家。チャールズ、ローラ、マギー…昔の仲間が集まって「おかえりなさい、おめでとう!」中ではすっかりパーティーの仕度が整っていた。新聞記者となりママにも会えたサンディベル…画家になれたマーク…望みのかなった2人に、祝福のクラッカーが鳴り、薬球が割られる。

その時、表に1台の赤いスポーツカーが止まった。降り立ったのはキティとアレックだった。「おめでとう、みなさん」突然入ってきた2人をいぶかる一同。しかし、キティはマークに、スコットランドの城の譲渡書を手渡しに来たのだった。お祝いの贈り物として。
「キティの考えにシアラー氏が賛成してくれたって訳さ。…城なんて、オレの奥さんになるには似合わないからな」アレックの何気なく言い流した言葉に驚く一同。2人は婚約したのだった!2人を加えて、楽しいパーティーの時は過ぎてゆく…。
…長い時を経て、サンディベルとマークは再び「ママの花園」の前に佇んでいた。…沢山の白水仙の花が揺れている。きっと伯爵夫人も喜んでいる事だろう。「これからは、私達2人の新しい出発ね…」「君は、人の心を暖かくする、より素敵な新聞記者になる為に!」「あなたは、人の心を暖かくする、より素晴らしい画家になる為に!」
肩を寄せ合う2人の後ろからみんなの声が。「サンディベル!サンディベル号が待ってるぜ!」2人が走る!子供達も、リンダも、カンカンも!みんなを乗せたサンディベル号は、希望と共に空高く舞上がってゆくようだった。寄り添うサンディベルとマーク。もう2人を隔てるものは何もない。そんな2人を祝福するかのように、ハトの群れが車を取り巻き、飛び去っていった。
2人の幸せとみんなの夢を乗せて、サンディベル号は光の尾を引きながら、高く高く翔け登ってゆく。そしてそれは、2人の新しい出発を祝す、ファンファーレでもあった。