プラレール幻の逸品展示室:その23
−幻の「初代ぜんじどうふみきり」発見!−

プラレールのストラクチャー関係は、結構謎が多いものです
最近入手したこの「ぜんじどうふみきり」…こ、これは

プラレールスタンダードとも言える車両の通過の自重で遮断機を上下させるプレートがありません
しかもサイズも直線レール2本分とかなり大きいのです(あの複線ステーションと同じ長さです)
さらにスイッチや電池ボックスなども付いています

今まで見た情景部品の中でも、最大クラスの大きさです
ふみきり小屋には謎のスイッチとベルが付いています


…通常「ぜんじどうふみきり」と呼ばれているものはこちらのものです↓
(1974年発売の「ぜんじどうふみきりセット」に入っていおります)

今回入手したものは、雰囲気はちょっと似ていますが、一回り大きく、よく見ると全く別の製品です

1974年発売の「ぜんじどうふみきりセット」です
今まで知られている「ぜんじどうふみきり」 大きさの比較です:でかい!(左側)



プラレールのふみきりは、通常は車両の通過に合わせて遮断機がおりるように、遮断機と連動するプレートが中央に付いているのですが
このふみきりにはそれがありません…ということはどのようにして遮断機を動かすのでしょうか


少し、内部構造をみてみましょう!

ベルの付いている方のふみきり小屋のカバーを外すと、何とモーターとギアボックスが入っています
ふみきり全体を裏返すと、遮断機とつながったプレート(黄色い部分)があります

付属品を外した状態 裏返してみたところ




各部のアップです

ギアボックスから上に伸びているシャフトは、屋根に付いているベルを鳴らすためのものです:@

ギアボックスを外すと下側にカムが付いています:A

カムの部分に見えている金属製のバーが、遮断機を動かすプレートとつながっています:BC
バーにもリード線がつないであり、電気接点になっているようです

@ A
B C



以上のような構造からわかるように、これはモーターで遮断機を動かす機構が付いています!

ということは、もしかしてプラレール史上、空前絶後の「モーターで遮断機を動かすふみきり」ということに…


プラレールのすべて3の全製品リストを調べてみると、上に紹介したC12の入っている「全自動ふみきりセット」の少し上に
1973〜74年製造の「全自動踏切セット」という記載があり、D51が入っていることになっています
電動式のふみきりは、その後作られていないことから、試作品的な意味あいも兼ねて最初期のものであると考えると
このセットに入っていたものと断定してほぼ間違いなさそうですね


手持ちの部品を利用して、「全自動ふみきりセット」の再現をしてみました

全景その1
全景その2
全景その3
ふみきり部分をアップにしたものです



それでは、いよいよ動かしてみることにしましょう!(ワクワク)

古い物ですので、スムースに動かない部分もありますが、大体下の写真のような動作をします

メインスイッチは、両側のふみきり小屋にある黄色のものです
これを進入した車両が押すことでモーターが動き出し、ベルが鳴って遮断機が降りはじめます
(左右どちらから進入しても作動するようになっています)

遮断機は、ギアボックス下のカムの回転により開閉するようになっています
カムにももう一つの接点があり、カムが1周して遮断機が上がると、接点が離れてスイッチが切れるようになっています

ふみきりにD51が進入、スイッチを押すとベルが鳴り始める
モーターが作動、遮断機が降りはじめる
ふみきりを通過中
ふみきりを通過、遮断機が上がりベルも鳴りやむ

付属車両はたぶんブルーバードが付いていたと思われます
モータートミカの元祖とも言えるもので、単3電池で動きます

ふみきりには、列車通過中は進入できないようにストッパーが付いていますが、
2代目ぜんじどうふみきりのように車輪を受けて空転させるローラーが無いので、うまく止まらなかったのではないかと思われます

モータートミカの元祖(ブルーバード)


ここで、他のプラレールのギミック付きふみきりをチェックしてみましょう
やはり、今回紹介した全自動踏切のように、遮断機をモーターで上下させるギミックのものはひとつもありません
全て、車両が通過したときの自重や、動力伝達により動くようになっています
電池を積む「チンチンふみきり」「エレクトロふみきり」も、電池で動かすのは警報機のみです

まちの駅(ふみきり駅) チンチンふみきり
ぼくじょうふみきり エレクトロふみきり
ふくせんふみきりとレールロードふみきり


本格的な鉄道模型にも通じるすばらしいギミック…
残念ながら少々作りが精密すぎたようで、おそらく耐久性に問題があったのではないかと思われます
そのため1年限りの生産で姿を消し、2代目にバトンタッチされたのでしょう

これ以降のふみきりは、モーターで制御する仕組みを持つものは一つもありません
子供のおもちゃとしてのプラレールのその後の発展を見れば、それは正しい選択だったと思います

しかしそれでも、プラレール創生期に、このような高度なメカニズムを持った製品を世に送り出した
トミーのスタッフのプラレールにかけた情熱にはすばらしいものがあると思います