俺の好きなプラレール:第5章

「近郊型でんしゃふみきりえきセット」

そしてまた一つ、奇跡は起こった…

その日、プラレール探しに疲れたオレは
気が付くと見知らぬ駅前に立っていた

「したまちのえき」か…
駅に人の気配は無い

どうやら無人駅のようだ
オレは切符を買って

無人の改札を抜けた
改札を抜けると踏切を渡り、
反対側のホームへ出る

以前訪れたことのある「まちのえき」に
少し似ているような気もするが…
駅員はいないのに、何故か売店はある

店員のおばちゃんは
こちらを見たまま動かない

時刻はちょうど昼下がり
「2時半か…」
ちょっと腹が空いたな

左は「いなか」、右は「みなと」…

しかしこんな寂れた駅に、
列車は来るんだろうか
その時…
遠くからレールのジョイント音が響いてきた

…列車が来る!
近づいてきたその列車は…

オレが初めて見る色と形だった
この色…この形

そう、たしか
前に一度だけ、写真で見たことがある


そうだ、これは、幻の「近郊型でんしゃ」…
だがなんでこいつがここに…
そして2両編成のその電車は、
オレの目の前でゆっくりと止まった

ドアが開いたが、だれも降りる者はいなかった
乗客はだれもいないようだ
ふいに現われた車掌が
オレに話しかけてきた

「この電車は、1976年に一度だけ走った
幻のプラレール”近郊型でんしゃ”です。

それ以来ずっと子供達に忘れられたまま
ずっと眠りについていました…

今日は27年ぶりにその電車が走る日」
「この駅に再びこの電車が来るのは
あと27年後…

それまでこの電車の事を覚えていてくれる人は
だれもいないでしょう」

そう言うと、車掌は車内に消えた

そして発車ベルの音
「お乗りになるなら今しかありませんよ」
一瞬迷ったオレだったが、
ドアが閉まる寸前に飛び乗った

そして、電車はゆっくりと動き出した
この駅に再び戻って来るのは27年後、
西暦2030年…

それまでオレは、どんな所を旅するのだろう
続く




プラレール博物館に、またひとつ奇跡が起こった

その生産数の少なさから、今まで一枚の写真しか存在しなかった「近郊型でんしゃ」
そして謎とされてきた「ふみきりえき」…
それが両方とも入った「近郊型でんしゃふみきりえきセット」がついに発見されたんだ!

どうやって入手したかは、内緒だぜ(知っている人は知っていると思うがな…)

「プラレールのすべて3」には
”1976年生産:東海型急行横須賀塗り2両という”わずか1行のみの記述しかなく
いままでその存在すら疑問視されていたそのセットが、今目の前にある!

お見せしよう!その姿を



やや小ぶりの箱には、東海型急行を横須賀色にした「近郊型でんしゃ」が2両と
オレンジ色に成形された「ふみきりえき」
それから「てっきょう」などがぎっしり入っている

セット内容:近郊型電車、ふみきりえき、鉄橋、橋桁(緑)、立木、信号、架線
箱の側面の取扱説明書とレイアウトプラン

そしてこれが…
2両揃った写真は、おそらく日本初公開と思われる「近郊型でんしゃ」だっ!

東海型急行の成形色を紺色に、そして窓周りをクリーム色に変更した超力作だぜ
しかもうれしいことに、側面の金型改修前のあの美しい姿で…うおぉぉぉぉー!おれは涙が止まらないぜ

じっくりと見てくれよな!

方向幕シールもちゃんと「普通」に変更されているぜ
側面も金型変更前のあの美しい姿のままだ
屋根
足回り


今回初めてその姿が明らかになった「ふみきりえき」
それは、驚くべきことに、「まちの駅セット」に入っていた「まちのえき」の前身だった!
「まちのえき」は、実は「ふみきりえき」を金型改修し、人形の動くギミックを追加したものだったんだ!
まちのえき自体も、「まちの駅セット」に入っていた分しか生産されなかったレア物だったが
「ふみきりえき」はさらに生産数がすくないはずだ
良くできているのになぜ2代続いて短命だったのか…運命を感じるぜ

下にこの兄弟ともいえる「ふみきりえき」と「まちのえき」の比較写真を撮ったので見てくれ
こんなことができるのはプラレール博物館だけだぞ(ちょっと自慢)

ふみきりえき まちのえき
底板のモールドも微妙に変更されている
駅名板も行き先などが変更されている


1976年に発売されたこのセット…
当時どのくらいの数が作られたのかはわからないが、決して多くはなかったはずだ
それから26年後のこの運命的な出会いに、オレはまさに神に感謝したい気持ちだ
絶版プラレールも年々その入手が厳しくなってきているが、オレはこれからも倒れるまでプラレールを
集めていこうと思っている
よかったらこれからも、プラレール博物館を応援して欲しい

たのむぜ!

(2003年1月20日ページ作成)