番長想い出の店(第6章):玩具店(神奈川県海老名市)


「悪いねぇ、ゴホゴホ…
おもちゃはもう売れないんで、こないだ倉庫に全部しまっちまったよ」

…しまった、あと1ヶ月早く来ていれば…

見わたせばなるほど、店内はプラモとジグソーパズルとゲーム類だけで小綺麗に片づいちまってた

電話帳では早めにチェックしていたのだが
「G」というどちらかというとあまりおもちゃ屋らしくない、ゲーム屋のような名前だったので
つい回るのが後手後手になっちまったのが失敗だった

「プラレールもいくつかあったね、灰色のレールが入ったヤツとか…」

「そいつを見せてくれっ!」
俺は懇願したが店主のおばちゃんは機嫌が悪いのか
「ダメちゃん」と取り合ってくれなかった


仕方がない
今日の所は引き下がろう
三歩進んで二歩下がるが基本だ<謎

それからの数ヶ月間、俺は「G」方面に出かける都合がある度に
「偶然を装って」顔を出してみた
「今日こそプラレール見せてくれよ!」
何度、同じ言葉を言った事か。

だが、なかなか見せてくれるそぶりはねえ

よくよく聞いてみると、いつも店にいるおばちゃんは店主ではなく、
だんなが店主とのことだ

だがそのオヤジは他に仕事をもってるらしくてめったに店にはいないとのことだった

そして決定権はそのオヤジが握ってるらしい
「オヤジに会わなけりゃダメだな」

だが何度行ってもオヤジはいなかった

半年も過ぎた頃だろうか…
おれもいいかげん疲れてきた

…本当にプラレールがあるのかも疑わしいぜ
もう一度行ってだめならあきらめよう…
そう思いながら店に入ると

オヤジがいた!

神が与えてくれたラストチャンスだぜっ!
そう直感した俺は、最後の勝負に出た

「聞いてくれっ!」
俺がプラレールを探して全国を旅していることを!
プラレールをどんなに愛しているかを!
熱く語ったぜ!


小一時間もたった頃
オヤジはついに根負けしたようにつぶやいた
「わかった…見せてやるよ、ちょっと片づけてくるから待ってな」

30分後、俺は店の奥に入っていた

「プラレールはたぶんこの中だ」
オヤジは庭先に置いてある物置を指差した

「中を見ていいのか?」
「もちろんさ、ふふん!」

ついに夢見ていた瞬間がやってきた
俺はそっと物置の扉を開けた…

中には他のおもちゃ<タイヤキくんソフビなんか
にまじって
オヤジの言葉どおりプラレールの姿があった

「複線自動ステーションセット」
「ひかり号大鉄橋セット」
「東海道山陽新幹線セット」
「電気機関車立体交差セット」
こいつらだっ!


この中でも「複線自動ステーションセット」は複線ステーションが入っている幻のセットだ
「ひかり号大鉄橋セット」も緑の坂カーブレールが入っているレア品だ!


あのとき、1ヶ月早く来ていれば
こんな苦労はしなかったもしれない

でも俺は満足だ
何故かって?
こんなお宝がすんなり手に入っちゃぁ
神様のバチが当たるってモンよ!

(第6章完 2000/10/27)