番長想い出の店(第5章):幻の玩具店(神奈川県三浦市)


しおかぜよーおまーえーもー
ともだちならーつたえーてー♪

こんばんは!町田 義人ですっ!

というワケで俺・プラレール番長は海辺の街が好きだっ!
海にゃなにか心躍るものがあるぜっ!
その日、俺は海辺の街を訪ね
三浦半島まで来ちまった

久里浜からの道をやってきた俺は、分かれ道で立ち止まった
左に行けば城ヶ島
右に行けば三崎の街

どちらも捨てがたいな
空に向かってコインを放る
表なら城ヶ島
裏なら三崎だ

裏か…

三崎…
ここはマグロの水揚げ日本一だ
ここのマグロは三崎マグロっていってな、ちょっとした高級品だ
ここで番長のワンポイント!
○○マグロといっても、それはとれた場所のことじゃないぞ!
陸揚げした港のことを指すんだ、DO YU KNOW?
三崎マグロの産地は中部太平洋やアフリカ沖なんだ
いかしているんだぞ!<ばくはつ五郎 (^_^;)

ギターを背にしたまま下ると地元商店街のおばちゃんたちは
店から出てきては俺の事をモノ珍しそうに上から下まで舐めるように見た
通りには、所在なさげな若いモン達がたむろっている
けだるいような昼下がりだった

ヨソ者を受け付けてくれない
そんな街なんだろうか

途中にも2軒ばかし、地元の子ども相手のおもちゃ屋があったが、古いモノはなかった

思い出したぜ!
俺は10年以上前にもこの街に来ていた
まだトミカを捜していた頃だったな
青かったぜ

足早に漁港に向かって更に降りていく
港はもうすぐだ
潮風がプンと鼻を突く
早く旨いマグロが食いたいモンだ

足早に俺は通り沿いの何の変哲もない米屋の前を通り過ぎる

???

店の看板はたしかに「水晶米」…
どう見ても米屋だ

だが、その店の入り口の脇にもう一つ小さな木戸がある
薄暗いその中をのぞき込むと
ガラスケースには古びたおもちゃが数個ころがっていた

前に来たときには、全く気づかなかった店だ

おもちゃ屋!?なのか…<古谷 徹声で
行くしか…ないな
俺は一瞬ためらったが、思い切って木戸に手をかけた
子どもが風呂で遊ぶイルカやアテナのオーガスや銀河大戦のトント…
売れ残りのおもちゃがいくつか見えた

「ごめんよ」重くなった木戸のガラスのドアを開けても店の中は真っ暗だ
しばらくして俺の目が店の暗さに慣れてきた頃
右の方からけげんな顔をしたばぁさんが顔を出した

「何かお探しかね…」

俺が聞く前に先制パンチをくらったぜ
この次に出てくる言葉はだいたい決まってる
「古いものはないよ…」

そう言われる前に、俺はばあさんに言葉をかけた
「古いプラレールを探してる、ここにはないかな」
ばあさんは黙って店の奥に戻り、電気をつけた
店の中がやっと見わたせるようになった

「あそこにある、あれがそうかねぇ…」
ばあさんは右上の棚を指さす

そこにあったものは俺を驚かせるに十分なブツだった

「ふくせんプラレールステーションセット?!」
なしてこげん大物がこげん店にあると?<この辺なんかヘンだが気にするなっ!

鉄道100年(つまり1972年)の記念シールが貼ってある
23年前のヴィンテージ物ってことじゃねえか!(注:こいつは1995年当時の話だ)
箱はさすがに23年の間に薄汚れてはいたが、中はまっさらだった

「こいつをくれ、それからほかにプラレールがあったら見せてくれ」

かすかにうなずくと、ばあさんはこう言いながら店の奥に消えた
「30分くらいたったらまた来てくれな、さがしとくから」

これは幻ではないだろうか…
今、戻ったらあの店はないのではないだろうか?と
俺らしくもなく30分間それだけを思っていた
そしてきっかり30分後に、俺は店に戻った

「あったよ」
ばあさんはちょっと嬉しそうにほほえんだ
その手には
新聞紙にくるまれたものが3つ

ばあさんは、ていねいに、いとおしむように包みをあけた
中に入っていたのは…

上下箱の「かもつしゃりょう」と

EC箱の「スカイライナー旧色」そして

でんしゃ箱の「地下鉄電車」の3つだった

こいつらだっ!

「こいつらも、まとめてもらっていいかい?」

ばあさんは無言でうなずいた
その目はこう言っていた
「あたしが20年以上、大事に取ってきたんだ、粗末に扱ったら、承知しないよ」

「わかってるって、俺のダチのところに大切に保管してもらうからな、安心しろよ」
俺も無言で微笑みかえした

店を出ると、港は目の前だった
…そうだ、思い出した
旨いマグロを食って帰らなきゃな!

♪ぼーくーはげんきにーやーってますー

(第5章完 2000/7/17)

…ひさびさに三崎をたずねてみたぜ
ばあさんの店はなくなってた
焼きたてパンの店になっちまってた…
(2000/10/24追記)