「だからねえ絶対撃つな絶対撃つなですよ。でもねえ蛸壺の中に一人居る時はホントねえ苦しいですよ、恐怖心です
よ。友軍がいりゃあいいんですよ一人でも。そうすると我慢できるんですよ。一人で入っているというのはねえ、まずつらいもんです。
戦争になればねえ無我夢中ですからね、恐いもったくれもない。朝から晩まで走り回って、弾撃ったり逃げ回ったり追っ掛けたりするでし
ょ、だから何でもないなんですよ。戦い済んで日が暮れて、ハハハそれから大変なんですよ。
水を汲みに行き食料飯炊きやんなきゃあなんない。、明日の準備、明日また戦争に行きますからねえ。その支度で、てんやわんや、だから
もう恐さとか、そんなもんより無我夢中でしたね。」
「そりゃあそうですね、命の遣り取りをするんですからねえ」
「相手が同じくらいの歳の奴でしょ。アメリカと日本の国籍が違いだけで何の関係もない憎しみもない者と戦うです
からね」
「そやけど同僚が殺されたら憎しみというか?恐怖というか・・・」
「う〜ん憎しみ?・・・。恐さはないです。恐さはまったくない」
「やらなければやられるという意識は・・・」
「撃たれて怪我している人間を見ればね、あの血がでるだけで可哀想だな・・・と、もう元気のいいのがねえ怪
我した途端に弱くなっちゃう。特に内臓器官を痛めるとねえ、内臓器官はダメ、僕の怪我は全部外傷で外側で左半身ですからね」
『もう元気のいいのがねえ怪我した途端に弱くなっちゃう。』
戦場の興奮も傷を負い痛みが襲うと、その瞬間に戦争から現実に引き戻され「ガクッとなる・・・」そんな様子が目に浮かびます。これが
戦場の兵士のリアルな姿なのだろうと・・・。
「腸が飛び出したり、内臓いわしたら、貫通したらだめなんですか?」
「貫通なんかもっとダメ。」
「もっとダメなんですか」
「ここにねえ小いちゃあな破片が入っているんですがねえ、皮膚だからいいんです」
「腸を貫通したりしたら・・・」
「手術が出来ないからねえ、医療品がない、軍医がいてもお手上げです、ヨードチンキだけなら何にも出来ない」
「そういう弾丸が飛んでくるという音というか、そういう雰囲気というか、想像も出来ないですからねえ」
「そりゃあねえ凄いですよ。最初はねえ日本の高射砲が撃っているでしょ。アメリカの飛行機に、アメリカも爆弾落
とすでしょ。敵も味方も入り混じってどれがどれだがわかんない。慣れて来ると、今のは日本の高射砲・・・と。」
「音が聞き分けれるようになるんですね」
「そう分けられるんですよ。そりゃあ凄いです」
「やっぱりアメリカの艦載機も結構空母から飛んで来るわけでしょ?」
「すごい来ましたよ、実に見事、グラマンが急降下爆撃するでしょ。そりゃあ鮮やかですよ」
「時々パイロットの顔まで見れると聞くんですけど、見えますの?」
「そうです、そうですよ。そいで蛸壺の中に入っていると、自分の視界が約直径1メートルくらいでしょ。そこから良く見えるでしょ。だ
から米軍が急降下してくるのがみんな自分を狙っているような気がするんですよ、ハハハ」
「そりゃあしますね」
「アンガウルという島はね、こっちもそうですがロックアイランドと言うくらいですから、隆起珊瑚礁の島ですから
。徹甲弾でもねえ跳ね返すんですよ。」
「硬いからねえ」
「そこに自分の命を守る蛸壺を掘るわけですよ、だからいい加減にして、さあ、入ったらねえ首が出ちゃうんですよ
。しょうがない上から掩体を被せるんですけど、掩体はねえ爆撃で吹っ飛んじゃう。そうすると首が出てくるじゃあないですか。降りてく
るやつがみんな自分が狙われていると思っちゃう。そりゃあねえ凄い恐怖心ですよ。」
「そりゃあ向こうも狙っているんでしょうけど・・・ハハハ」
「そこまで見ていないんじゃあないですか、そこまで・・・、蛸壺だらけですからねえ」
「そういう機銃は一発でも当たったら木っ端微塵ですか?」
「微塵ですね。日本の三八式の歩兵銃とまったく違う。あれをまともに受けたらみんな死んでしまう」
「艦砲射撃と言うのはやっぱり弾が先に来るんですか?音より先に・・・」
「かなり遠いですから、アンガウルなんかの場合には目の前で潜水艦なんか浮上してね・・・」
「怖い物なしですね、制空権もなんもなしやから・・・」
「え〜とね上陸前に、9月の12日から15日までに三千トンくらい」
「艦砲射撃がねえ」
「島別に何インチをいくらと全分かっますよ。そりゃあ凄いですよ」
「それはアメリカの公式記録、公刊史料ですね」
「もう日本兵はいないと思って上がって来るの。明日ペリリュー行くの?」
「そうですね」
「オレンジビーチ、ホワイトビーチに、そこに日本兵が掘った散兵壕があるの、艦砲射撃が終わって音がしなくなっ
たと思って顔を出したら、もう目の前に米兵がいるの、もうそうなると艦砲も撃てないじゃあないの味方がいるから、そういう状態ですぐ
白兵戦ですよ・・・」
「そこでアメリカが大分負傷者を出したというか?」
「二日間でねえ1000名近くですよ。そしてねえ、そのお墓がねえ、オレンジビーチのちょっと上がった所にある
んですよ。東側は太平洋でしょ、西側はフィリピン海でしょ。一望千里ですよ。見えたんですよ、今は見えないですよ。木が生えちゃって」
「昔のアメリカの公刊史の写真をみたらまっ平らのところにズラーと並んでいましたね」
「あの十字架ねえ、あれ全部掘って、フィリピンに運んでしまいましたよ」