2007.10.29
要約をつけてみました。現代人は忙しいので。
<要約>
・ノーチラス号の設定がいい
・登場人物がオタクで面白い
・数々の冒険が興奮する
・最後が余韻残す
・不思議の海のナディアのすごさを再確認
<本文>
冒険とか探検って、世界の中の今まで知られていなかった国、いわゆる秘境に行き、
そこで暮らす人々の変わった文化に触れるとか、そんな感じでよね。
そういう未知の場所に辿り着くには、しばしば科学の力が必要になります。
その技術が今まで無かったからこそ、辿り着けなかった場所なんだ、という理屈ですよね。
だから、冒険には最新技術を叩き込んだ乗り物が必要不可欠なんですよ。
未知の世界と、そこに行く乗り物、これが目的と手段の関係にあるわけです。
その両者が一体化した存在が、本作に登場する潜水艦ノーチラス号なんですな。
海底に存在する謎の国家、しかもそいつが自分で動いて世界の海を探検していく、
これがいいと思ったなあ。
次に登場人物。これも面白過ぎ。
ネモ船長:海オタク。あらゆる面で最強。危険過ぎる。彼の家に行ったら海の話が続いて一生帰れない。
ピエール・アロナックス先生:主人公。フランス人。海洋生物オタク。帰りたいが海の秘密は全部見たい。
コンセイユ:生物分類オタク。先生の助手。先生について行きます。
ネッド・ランド:漁師。狩りオタク。生き物への興味は狩った事あるかどうか。獲物を見ると殺したくなる。とっとと帰りてえ。
全員これオタク。オタクの家でうっかり捕まった状態と考えると、緊張感にすごく納得の行く話です。
女とか出てきません。船員は必要最小限だけ出て来て、人間ドラマはほとんどありません。
海とか、不思議な生き物、冒険が好きな人のための世界なんですな。
一番若い?コンセイユが30歳だとかいう記載があった気がするので、みんな40代くらいでしょうか。
これって、スゴイ事ですね。今こそこの人たちを見習うべきだな!
メインディッシュとなる、数々の不思議や冒険。
ノーチラス号の進んだ科学技術、海底散歩、地峡をまたぐ秘密の水路、難破船の発見、
アトランティス、秘密基地、大タコとの死闘、南極点到達、流氷からの脱出・・・
これら次々と繰り出されるエピソードがもたらす興奮は、さすがの面白さです。
また、折々の場面で出てくる海洋生物や、大航海時代の歴史の記述がやたら詳しい。
著者もそれなりの知識を持ってたんでしょうけど、リアリティを高めるために手間かけています。
最後どうなるか。
3人は船を脱出して故郷に帰るのですが、ネモ船長やその敵国の正体、ノーチラス号が
その後どうなったのか・・・そういったものは明らかにされないまま終わっているのです。
まあ、書いてて考えないわけではなかったんでしょうけども、書かずに済ませている所に
ちょっと感じ入るものがありましたね。
未知が好き、謎が好き・・・猿人を目前にして「いや、そっとして置いてやろう」みたいな、
川口浩探検隊の終わり方、今思うと夢があっていいなと感じるんですけど、どうでしょうか。
この本、アニメ「不思議の海のナディア」の原案として、そのうち読みたいと思ってたのですが
これ自体がすごく面白いのはもちろんなんですけど、アニメ版のすごさを逆に実感しましたね。
現代で冒険活劇放送するならこれじゃ納得行かないだろう。みんなが見たい内容、知りたいと思うものを
付け足さなければ受けないんだと。で、それを果敢に加えて成功した所がすごいんですよ。
これ、ちゃんとした力量がなかったら出来ない仕事ですよね。
あとは、時代的なものかなあ。探検、冒険っていう行為、人間がそれに掛ける期待とか情熱、
そういった面に夢を感じましたね。
地球に未知の領域が残っていて、どうやって人はそこに辿り着くのだろう、そこはどんなだろう、
という空想、ロマンの余地が残されている時代だったんだと思います。
その、未知のものへの憧れは、時代を越えて読み継がれて行くのでしょうね。