久遠 著:グレッグ・ベア 訳:酒井昭伸 早川

2011.05.28

帰省した際に実家に放置してあるのを発見した。
読んだ記憶が無かったので東京に持ってきて読んだ。
前作を読んでいないので、知っているのを前提にした部分は解らなかったが、それでも楽しめた。

並行宇宙を結ぶ<道>を開き、知識と資源にあふれる進んだ文明を実現した人類だったが、
ジャルトと呼ばれる強大な敵に遭遇し<道>を閉じる。
その並行世界の地球は最悪の核戦争を体験し、崩壊の危機にあった。
小惑星恒星船「ストーン」は軌道上から地球の復興を支援している。

で、前作で<道>の向こうに行った人々と再会し、
そっからもう一度<道>を開いて、ある人は故郷に帰り、ある人は永久に旅立つ。そんな話だ。

ストーンの構造や、仮想空間であるシティメモリーで生きる人々。有体と自然死を重んじる宗教思想やら何やら。
宇宙の終わりは始まりに繋がっており、そこで終極精神が知的生命体を次の宇宙に連れて行く転生を司っている。
うんぬん。未来の社会のSFガジェットや、壮大な世界観にわくわくする。

とらわれたエイリアンを、補助脳の中でシミュレーションしながら観察しようとするが、逆にハックされる。
しかし、それは体のイニシアチブを握る戦いというより、お互いが得た情報が現状の全貌を明らかにし、
最悪の破綻を回避する鍵となっていく、てな所とか。
遠ざかった夫婦関係の中、昔の戦友が昔のままの姿で現れて自分をどこかに、果てしない冒険に連れて行く、
みたいな展開に「いいもん見てるなー」とキュンと来る。
あとは、復興中の地球を「アウトドア趣味」的な憧憬の対象にしてるような、未来から現在を見てるような所。

地球人には軌道上のストーンの人々は天使であり、彼らにとって、道の彼方から戻ってきた人々は天使であり・・・
そういう、宗教的なものを下敷きにしているから面白いのかな。
世界の認識を巡る、イッちゃってる領域の話というやつは。
今頃になってやっとそれが解り出して、楽しめるようになって来た。


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