Tachyon Live 1981 April (六本木Pit-Inn)

 Tachyonをもっと見直そう! (レポート by ウラドラセブンさん!)

 HPの掲示板(バックナンバーを含む)を読んでいるとMoon DancerやVow Wowについての記述は多いのですが、Tachyonが話題になることは少ないように思います。厚見さんのキャリアの中でもTachyon派の僕にとっては少し寂しい、と言った感じです。
 Tachyonのデビューアルバムが発売された時、誰もがイメージしたのがMoon Dancerのセカンドアルバムではないでしょうか?僕もその内の1人です。Moon Dancerのライブでは、あれだけ新曲を披露していたし、リズムセクションが変わったとはいえ厚見さんと沢村さんがいるのだからこのようにイメージされても仕方のないことだと思います。ところが、実際に発売されたアルバムは使用楽器が大幅に減り、プログレっぽさも薄くなったシンプル且つタイトな曲で占められたのはご存じのとおりです。
 僕は最初、アルバムを聴いて「厚見さんはTachyonを始めてから地味になった。」と思いました。
しかし、この考えはライブを観た瞬間から一変しました。


[SET LIST]

1. African Man

2. Island

3. ただいま

4. Hollywood

5. 中近東幻想

6. Geiger Counter

7. 神話

8. Tokyo Strut

9. Shadow Of Her Soul

10. It Ended As Friends

11. Hyper Imagination

12. Is It Really You?(Encore)

* この内、1.9.10はアルバム未収録曲(英語歌詞)、3.6はMoon Dancer時代の曲のリメイクです。


 デビュー当初は「Hyper Imagination」がオープニングで「African Man」がラストでしたが、4月ごろから曲順が入れ替わりました。個人的には後半に未発表曲ばかりの連続よりこの方が良いと思います。そして、この頃になると各曲の演奏も安定し、ソロ等もスタジオバージョンとはかなり違って来ています。初めてTachyonのライブに行った時、厚見さんの使用楽器の中にシンセ(たしかMiniMoog)があったので「おや、Moon Dancer時代の曲もやるのかな?」なんて思ったのですが実は、「African Man」のシーケンスフレーズのためだったんですね。シーケンサのリズムにのせたTachyonでは異色の曲です。

 この日は4人が登場し、チューニングをしているように見えて実は、すでにシーケンスフレーズが会場に流れていて曲が始まっている、というオープニングでした。タイトルどおりの思わず体が動いてしまうような曲です。考えてみればTachyonはメンバーも多国籍ですが曲もアフリカ、沖縄、アラビアと多国籍ですね。

 アルバム収録曲はどれもテンポ2割増し、興奮度2倍といった感じで特に「Island」における後半のサビ部分ではリズムの刻み方が半分(8分音符が16分音符)になり驚異的な迫力でした。プログレハード好きの僕にとって、このテの変拍子モノは応えられません。「ただいま」は、ほぼスタジオバージョンに忠実な演奏、「Hollywood」は確か後半の歌詞が英語でした。「中近東幻想」のオルガンソロとエンディングではハモンドに厚見さんのケリが入りスプリングリバーブが爆発音をあげています。(楽器はやさしく扱いましょう。)この曲のオルガンソロは、Vow Wowのライブでのキーボードソロにそのままそっくり流用されていますね。「アラベスク」は、かなり話題になっていますが実は「中近東幻想」も使われています。「Geiger Counter」はスタジオバージョンよりベースソロが長く、まるでジャズのライブに来ているみたい。「神話」ではエンディングで一旦ブレイクした後、テンポを上げスタジオバージョンより劇的にアレンジされています。「Tokyo Strut」これはもうカッコいいの一言につきます。それにしても、あのシンプルなドラムセットでよくやるよ。「Shadow Of Her Soul」はカウベルが印象的な、軽めなノリの小品と言ったところですね。

 そして、なんと言ってもTachyonライブの目玉は曲名のわからない10曲目(のちに「It Ended As Friends」と判明)ではないでしょうか?プログレ度が下がったTachyonの曲の中で唯一Moon Dancerの面影を感じる曲です。Tachyonでは1曲につき2台以上のキーボードを使わない厚見さんもこの曲ではピアノとオルガンを使い分けています。(アンコールの「Is It Really You?」でもピアノとオルガンを弾いていましたが。)リフは「ダディ マイケル〜」サビは「アラベスク」かQueenの「伝説のチャンピオン」風で約10分の大作です。ある程度ライブのパターンがわかってからは、僕はこの曲を聞きに通っていたと言っても過言ではありません。個人的にはTachyonの最高傑作です。ぜひ発表していただきたいものです。「Hyper Imagination」に関しては今さら言うまでもないでしょう。「ただいま」がシングルとしてリリースされたにも関わらずTV出演の際は必ずこの曲が演奏されていたほどの代表曲です。やはりテンポがスタジオバージョンに比べてかなり速くライブならでは、と言ったところでしょうか。

 アンコールは、いつもおなじみの「Is It Really You?」です。とてつもなくテンポが速く聞いているこちらが思わず「だいじょうぶ?」と思ってしまうほどです。途中、観客とのコール&レスポンスがありサビをみんなで歌うのですが、よりによって英語の部分を歌わせなくても、と思いました。みんな歌えたのかな?
この後、厚見さんはピアノからオルガンに移りエンディングです。この日はちょっと悪ノリ気味ですね。

 Tachyonの真価はライブにあったと思っています。ライブの凄さはMoon Dancer以上でした。この日に限らずスタジオバージョンとは違ったソロや長いソロが聞けたり、未発表曲が聞けたり・・・これこそがライブに足を運ぶ楽しさだと思います。それに比べたら最近の歌手やバンドのライブなんて大規模なカラオケパーティみたいなものです。CDを聞いているだけで充分です。せっかくイスがあるのに立ち上がって聞こうとは思いません。(暴言です。すみません。)現在、Tachyonのライブに行くことは不可能ですが、ぜひLPを聞き直してみてはいかがでしょうか。これほどライブ向きの曲が並んでいるアルバムも珍しいのでは?と思います。だって、アルバム収録曲を全てライブで聞けるんですよ。こんなバンド他にありますか?CD化を期待します。

 このバンドについて厚見さん自身の思い入れがどの程度のものだったかはわかりません。
でも僕は、Tachyonこそ日本最強のライブバンドだったと思っています。

(by ウラドラセブンさん!)