レディング・フェスティバル ('87.7.30)

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【池田さん提供による、ライブ・レポートです】
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 1987年7月29日深夜、トリのSTATUS QUOのステージの素晴らしさに酔いしれながら、

数人のイギリス人達と焚き火を囲みながら、私はフィールドで夜を越していました。

あるイギリス人青年から「QUEENの"手をとりあって”って、日本語の歌詞でてくるじゃない。

不思議に思ったんだけど"OH MY LOVE, MY LOVE"ってとこがどうして"アイスルヒートヨー”

で、「繰り返し」になってないの?」などと考えたこともない質問されたりして、なんとなく

自然にロック話で盛り上がってたところ、突然、一人の青年が「明日、VOW WOWってバンド

でるよね。彼らが日本ではベストなバンドなの?」と聞いてきました。「まぁ、日本にも色々な

バンドがあるし、別にベストってわけじゃないよ。」と、その時はそれほどファンではなかった

私は正直に答えました。同時に、4万人ものイギリス人ロック・ファンの前で、日本人バンドが

演奏して彼らがどういうリアクションをみせるのだろう、とちょっと不安に感じました。

 

 その12時間後、VOW WOWはステージにその勇姿をステージにあらわしました。

力強い新美さんのドラムに導かれ、山本さんのリフが唸ります。曲はDON'T TELL ME LIES

しかしながら、VOW WOWを迎えたのは、大歓声ではなく、罵声と彼らめがけて飛んでくる何百

というプラスチック瓶の嵐でした。始まった途端の「東洋人がこんなとこでてくんじゃねぇ

よ!」「この猿!」といった感じのまさに騒然とした雰囲気、なんとかライブをメチャメチャに

してやろうという会場全体のこの「東洋人バンド」への悪意。飛び交う瓶はまるで運動会の

「紅白玉合戦」のようであり、周囲は戦々恐々といった雰囲気でした。山本さんの頭にオレンジ

ジュース・パック(中身入り)が破裂して、ギターの音がでなくなって、急遽、厚見さんが

オルガンソロをとったり(たしかSirenSong)、とまさに綱渡りみたいな演奏でした。

 VowWowが素晴らしかったのは、2曲目以降を全てメドレーでぶっつけてきたことです。

ちょっと、順番不確かですが、Doncha wanna cum - Siren Song - Running Wild -

Nightless City - Shot In The Dark - Hurricaneといった感じです。あの超高性能

マシンみたいな演奏で上の曲順でドライブ感いっぱいにやったら、そりゃインド人じゃなかっ

たイギリス人もびっくりしますよね。実際、途中から、横の腹のつきでた20年ロック聴いて

ます、といった感じのWoodstock世代おやじが、「おい、なんであいつら、あんなに

うまいんだ?」と驚愕の顔つきでわめいてるのを聞きました。

 Hurricaneのエンディングを迎えたとき、4万人が総立ちの拍手を行ったのです。

はっきり言って、その場にいた私は涙が出そうになるくらい感動しました。

あのコンサート以降、VowWowのイギリスでの評価がいきなり好転し、メディアも

ファンも非常に好意的になったのです。まさに「イギリスにVOW WOWあり!」と。

「彼らは自分達の誇れる仲間」と。

 終演後、会場を歩いている山本さんに会って、当日のプログラムにサインをもらいました。

厚見さんもふらふらしていたのかもしれませんね。

もう12年も前の出来事です。

 

 P.S.  演奏だけでなく、人見さんのパフォーマンスもさすが!でした。ボーカルの凄さは

言うまでもないのですが、マイクスタンドを野球のバットにみたてて、飛んできた瓶めがけて

スイングしたり、2曲目のMCで「We are Vow Wow from London!」とロンドン

ベースで活躍していることを強調するようなあおりを入れるなど、ロック・ボーカリストとして

この大舞台で非常に堂々としていました。(冗談で「Neil comes from Tokyo.」と加える

ところがシリアスになりきれない人見さんらしいですが。でもこういう場で冗談を言えるのは

流石です。)メンバー全員が演奏者として卓越した才能・技量をもっているのは言うまでも

ないですが、VowWowのロンドンでの成功は、人見さんのボーカル&ステージ・

パフォーマンスの凄さに負うところが大きかったはずです。


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