1999年6月21日(月)
八千代市保育園父母会連絡会会長
[1]5万3,303名もの請願署名の意義
八千代市の就学前児童の数は、約
10,000人です。その内保育園を利用している児童数は約1,400人です。今回の53,303名の請願署名は保育園を直接利用している者だけの要望ではありません。現在の八千代市の保育行政を高く評価し、周辺他市はもちろん千葉県下でもトップクラスの質の高い保育を「守りたい」、「もっと充実させたい」とういう市民の総意なのです。また、激しく変化する社会状況のなかで、守らなければならないもの、変えてはいけないもの、それは“子ども”です。八千代市には子どもを守るためのリーダーとなってほしいのです。現に今、八千代市はそれを実現しているのです。今回の署名53,303名という数は、裏を返せば八千代市の現在の保育行政を支持している市民の声なのです。
[2]なぜ今、公設民営化なのでしょうか?
八千代市は財政再建の名のもと、保育事業の『コスト削減』『多様なニーズに応える』を柱に公設民営化を打ち出しましたが、本当に公設民営化は、『コスト削減』『多様なニーズに応える』に繋がるのでしょうか? 八千代市の保育事業にかかっている費用は高すぎるのでしょうか?
八千代市(市長)は、事あるごとに保育園児一人あたりの年間にかかる費用の公・私間の格差を大きくとりあげていますが、保育園の数や児童の定員、年令構成、保育内容等の違いを考慮せずに算出した数字では比較になりません。先日の「第2回八千代市子育て支援対策検討委員会」で担当課に確認したところ、
保育園の規模・内容などの条件をそろえて1園あたりの運営費を算出すると公立・私立とも費用の格差はないと明言しています。また八千代市の公立保育園の職員の人件費等の周辺他市との比較についても、担当課の資料によれば他市と同等の水準です。もし、八千代市の保育事業にかかる費用が高いというならば、それはそれだけの価値のある保育事業(他市にはない事業)を実施しているということです。そして、その価値ある保育行政は、父母と職員、担当課が共に“子どものことを第一に考えて”何年もかかって作り上げてきた大切な財産なのです。市長は公設民営化の意義として『コスト削減』と『多様な保育ニーズへの対応』を掲げ、なおかつ保育の質を落とさないと説明しています。しかし、
保育の質を左右する職員の配置基準を切り下げるか、私立園に対する格差是正を切り下げない限り、市の予算持ち出しが今以上に多くなることは明白です。
[3]見えない公設民営化像と父母の不安
これまで再三にわたり、八千代市(市長・担当課)へ公設民営化の具体的な資料の提出を求めましたが、全く応えられていません。市が打ち出した
『コスト削減』の試算については、公設民営化を打ち出してから既に1年が経った今でも示せないままです。またもうひとつの柱である『多様なニーズに応える』についても、どのようなニーズがどのくらいあるのか? それを公設民営化でどう対応していくのか? なぜ既存の公立保育園ではできないのか? さらには公設民営化の具体的な内容についても一切明らかにされないまま、『コスト削減』『多様なニーズに応える』という言葉と、『公立保育園はこんなにお金がかかっている!』という数字だけが一人歩きしている状況です。コスト削減の試算が示されない中で、どのようにこの公設民営化に理解を示せばよいのでしょうか?
市長は父母との懇談の席で、「公設民営化しても、現行保育の質はさげない」と明言したにもかかわらず、本年度4月から一部の公立保育園で、保育士の配置基準の改悪、退職者不補充施策による看護婦の臨時職員対応など、実質的な保育の質の低下をまねいています。こうした中で、公設民営化の具体的なビジョンも示せないまま、私達父母に「信じろ」「理解しろ」というのは、だれが聞いても無理です。
私達は、単純に公設民営化に反対しているわけではないのです。ただその
具体的内容が全く示されない公設民営化施策、父母も市民も職員もみんなが指示する現在の八千代市保育の質をどう守っていくのかが示されないことへの不安から、公設民営化に反対しているのです。保育にかかる費用、子育て支援にかかる費用はますます増えるはずです。増やす必要があるはずです。先日発表された
『八千代市子どもにやさしいまちづくりプラン』はすばらしい内容です。読めば読む程、良く調査・検討されていて子どものことを本当に真剣考えて作成されたプランだと思います。しかし、このプランをどのように実践していくのでしょうか? 保育事業費の削減は、このプランに逆行するものではないでしょうか? このプランとの整合性をどう説明するのでしょうか?八千代市の行財政改革推進施策と、八千代市の実態が全く相反する位置にありませんか? 不安・不審がつのる一方です。
[4]八千代市の公立保育園
八千代市の公立保育園の保育はとてもすばらしいものです。私達父母は公立保育園に安心して子ども預け、安心して働くことができます。本当に日々感謝しております。
八千代市は国基準を上回る保育士を配置し、栄養士・看護婦を全園配置しています。また特別保育事業も延長保育、障害児保育をはじめ、周辺地域の子育て支援など時代を先取りした保育を実践しています。
乳幼児の育ちのためには、ちょっとした表情や態度から感情を汲み取り心ひらいてもらう努力が欠かせません。
保育士の数が減れば危険がないように監視するのが精一杯です。実際、30年前に作られた国基準通りで運営している自治体はまず見当たりません。子どもにとって何が一番大切かを日々考える保育によって、目に見えない大きな豊かな愛情で子どもたちを包んでくれています。それは子どもの育ち・表情をみれば一目瞭然です。
手作りの給食・手作りのおやつは、子どもの成長にあったものを一人ひとりの子どもにあった調理法であたえてくれます。またアレルギーをもつ子どもには特効薬はありません。日々子どもの病気と食事とつきあっていかなければなりません。その子どものことをよく知り、日々の様子に配慮しながら食事をつくっていただける栄養士さんの存在は絶大です。
看護婦さんは、専門的な知識を基に子どもの成長や体調を見守り、父母に対して子どもの成長や病気等について正しい知識を与えてくれます。また看護婦さんがいつもそばにいるということは、子どもや父母への安心感もちろん、保育士にとっても大きな安心となりその分、保育に専念できることにつながります。
[5]保育園をとりまく環境
高齢化社会を迎え、
女性の社会進出は今や必須です。しかし、その一方で少子化が大きな問題になっています。さらに未曾有の不景気の中、雇用不安や終身雇用の崩壊から結婚・出産後も働き続ける、働き続けなければならない女性が今後ますます増えると思われます。子育て世帯の就労を支え、子どもの育ちを保障することは今後の八千代の財政を支えるためにも必要不可欠です。また
在宅で子育てをしている家庭においても、核家族化、地域との関わりが希薄化によって子育て不安という問題があります。こうした中で、
今後地域の子育て拠点として役割を担って行けるのは、現状では保育園しかありません。拡充・発展が望まれます。
[6]今後、保育園に求められるもの
前述のことから考えると、今後ますます公立保育園の役割、存在価値は大きくなっていきます。その大きな柱は、
地域の在宅子育て家庭への『子育て支援』と日常の保育ができない『就労家庭の支援』です。子育て支援においては、八千代市は既にはじまっています。これはすばらしいことです。子育て不安から、育児ノイローゼや幼児虐待など、子どもの育ち、親の育ちが大きな社会問題にもなっているなかで、ますます拡大が望まれる事業です。こうした中で各地域の拠点にある公立保育園は地域の身近にいる子育ての専門家であり、
地域の子育てセンターの役割を担っています。また社会や生活様式の変化や、さまざま就労形態の父母が増えるなかで、保育園に求めるサービス要求も変化しています。しかし、
現在の八千代市の公立保育園はそのニーズに応えるべくさまざまなサービスを提供しています。今後のさらなるサービスの向上についても公立保育園で十分対応できるはずです。
以上のことを考えれば、市民や直接の保育園利用者である父母への十分な説明と理解・合意を得ないまま、この公設民営化をすすめるのは健全な行政のあり方として大きな問題ではないでしょうか?
また公設民営化の基本理念を裏付ける、コスト削減試算や、具体的なビジョンも示せず、さまざまな問題をかかえたままで、「子どもにやさしいまちづくりプラン」の中でうたっている、
子どもに視点に立った「子どもの最善の利益」を本当に守っていけるのでしょうか?
つきましては、本請願署名
5万3,303名の市民の声を御理解いただき、何よりもこれからの八千代市の未来を担う子どもたちのために、是非とも本請願書の採択をお願い申し上げる次第です。まだまだ議論が不十分であるならば、継続審議いただき十分な議論を重ねていただたうえで、御判断をいただきたくお願い申し上げます。注:以上の文書は、99年6月21日民生常任委員会で請願署名代表者として連絡会会長が陳述する予定だったものです。陳述の機会は与えられませんでしたが、紹介議員の発議により、予め提出しておいたこの文書が全委員に配布されました。
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