『ちいさいなかま』(1999年3月号掲載)原稿
子どもたちのために公的保育を守りたい
〜公立保育園の民間委託提案に立ち上がる父母たち〜
鈴木富夫(八千代市立保育園父母会連絡会)
@千葉県八千代市の保育の現状
八千代市では、市独自基準による保母の配置、公立保育園全園に看護婦・栄養士の配置、延長保育(7時から19時)、民間保育園への補助を行っています。看護婦・栄養士がいることで、園児が病気になったときの適切な対応、アレルギー児童への対応、子供の発達に見合った栄養指導などが行えています。
A市当局が『保育はお金がかかる』と民営化宣言
ところが1998年5月29日の行財政改革推進本部会議における財政健全化見直し対象事業12項目の基本方針決定に伴い、保育園の公設民営化が宣言されました。具体的には、
1.既存保育園の民営化と統合
2.新規建設の保育園の『公設民営』化
3.4歳児、5歳児の私立幼稚園、保育園へのシフト
4.0歳児、1歳児の臨時職員対応
5.保母、看護婦、栄養士等、退職者不補充
6.看護婦、栄養士の有効配置(全園配置を止めることを示唆)
7.2010年までに4〜5園を民営化
をするというものです。コストを減らすために保母を臨時職員化し、看護婦・栄養士の配置を辞めることは、保育の質の低下をもたらします。又、市の行政責任放棄を意味します。今回の件は、『学校給食の民間委託』『学校の統廃合』『ごみ処理の有料化』などと連動しています。
この発表に対し保母や父母が反発し始めるや、父母側の気持ちを押さえるべく、大澤一治市長名で1998年9月4日付「『保育園の民営化』に対する考えとその取り組みについて」と題する市立保育園保護者宛ての手紙が各園を通じて渡されました。その中で、市当局は、「2010までに4〜5園を民間に委託」「現在の在園児には影響ない」「保育事業の行き過ぎた支出を抑制」を強調しました。
しかし、父母と保母の分断を図ったことでよりいっそう「民営化反対」の機運が高まり、「八千代市立保育園父母会連絡会」が結成され、請願署名の取り組みが始まりました。にもかかわらず、11月議会答弁では「日曜保育や一時保育のために民間化、2000年又は2001年までにモデル園として1園を民営化。」と市長は強硬姿勢を強めてきました。12月に入って市議会議員選挙が行われ、民営化反対を明確に公約した政党候補者が全員当選を果たしました。今後の大きな力になることが期待されます。
B「八千代市立保育園父母会連絡会」の結成
連絡会は、各園の父母会《又は保護者会》を母体とするネットワークの会で、各園の状況を情報交換し、連絡を取り合い、子どもの保育内容・環境をよりよくすることを目的とし、子どもを主体とした保育行政を考え、市に要求していく会です。数年前まで同様の目的で、「父母会連合会」がありました。保育内容や環境の改善を市に要求した結果として、現状のような時間外保育・クーラー設置・完全給食などが実現しました。保育水準が上がったことでその存在理由が希薄となり、「連合会」は途絶えました。そして今年5月29日行財政改革推進本部会議における財政健全化見直し対象事業12項目の基本方針決定に伴う保育園の公設民営化宣言がされ、現行の保育園水準の維持が危うくなったことで、公立保育園全体として対市要求をしていくために父母会連絡会を結成することになりました。年度途中で急遽結成し、「公立保育園の民間委託や配置基準の改悪に反対し子育て行政の拡充を求める」署名活動をしているのは、今回の市の方針では、まず間違いなく子どもの保育環境が低下することが予想されているからです。以下が、結成の経緯とその後の活動状況です。
7月
2日〜9月10日市長への手紙やメール9月19日各園父母会代表者会議
9月以降園ごとに署名活動や学習会開始
10月
3日各園父母会代表者会議、父母会連絡会結成10月16日各園父母宛てに訴え文
10月31日各園父母会代表者会議
11月八千代市職労保育園支部と共に「八千代市の子育てを考える会」を結成し、請願署名への取り組みを強化。
集まった署名は、市議会の全政党・会派に紹介議員の要請を行い3月議会に提出する予定。
11月11日連絡会代表委員名《6名の連名》で市長宛て要望書の提出
11月15日各園父母会代表者会議
11月19日ニュースNo.1発行
11月28日
「公的保育を守る父母と職員のつどい」(学習会)各園父母会代表者会議12月2日各園父母会代表者会議 ニュースNo.2発行
12月6日
保健福祉部長との懇談会 各園父母会代表者会議12月16日ニュースNo.3発行
12月19日各園父母会代表者会議
12月25日保健福祉部長に市長報告内容と市長との懇談会日程調整の確認
1月9日各園父母会代表者会議
1月24日市長との懇談会
C一人の父親から「連絡会ニュース」作成担当へ(現在の思い)
知人からの連絡で11月15日の父母会代表者会議に偶然出席し、「保育園民営化」のことや連絡会の存在とその活動を知りました。事態の経緯も殆ど知らなかった父親の一人として、父母の多くには連絡会の意義や活動が伝わっていないことを語りながら、情報宣伝の重要性を痛感し、「連絡会ニュース」作成を担当することになりました。11月19日の第1号以降、代表委員数名に事前相談をしながら、行事報告を中心に2週間おきくらいに発行しています。正確な情報を伝えようとするあまり、細かい字で長い文章になりがちで、「なかなかじっくり読む時間が取れないので、一目で分かるようにしてもらえないか?」との要望も出ていて、多くの父母に目を通してもらうために何とか工夫せねばと思います。一方、「毎号、隅から隅までよく読ませてもらっています。読めば読むほど(市の姿勢に)腹が立ってきます。」との声に励まされながら、作成しています。都合よく二女の保育園の父母会の役員に入れてもらい、代表者会議・学習会・懇談会に出席してニュース編集をいく中で、この活動についての私自身の理解も深まり、「連絡会」の果たす重要な役割も分かってきました。この運動の到達点がどうなるか予断を許しませんが、大きな成果を期待しています。同時に、「民営化反対」を契機に発足したこの「連絡会」を、子どもの保育内容・環境充実のために太く長く継続させていかねばとの思いが強くなっているところです。
12月6日に、担当部局である保健福祉部と懇談会を持ち、「保育園の公設民営化」がもたらすであろう保育環境の低下への危惧はますます大きくなっています。1月24日(日)に予定されている市長との直接の懇談会を通じて私たちの願いが通じることを期待し
ています。 父母会連絡会のトップページに戻る