2004年5月26日しんぶん赤旗記事「南関東りぽーと」
“安上がり”、子どもへの影響心配 横浜市保育園「民営化」1カ月余
保護者、関係者に不安、疑問の声広がる
全国で公立保育園の「民営化」の嵐が吹くなか、横浜市では四月から丸山台(港南区)、鶴ケ峰(旭区)、岸根(港北区)、柿の木台(青葉区)の四園の市立保育園が民間法人に移管されました。さらに、来年度四園の民営化が計画されるなか、子どもたちへの影響を心配する保護者や関係者から、不安や疑問の声が広がっています。
「人件費抑えられる」と…
四園が民営化されて一カ月余。市は「比較的順調に移行できた」(福祉局保育運営課)といいますが、保護者の一人は「市立園時代の正規職員は全員いなくなり、これから目に見えない子どもへの影響が心配です」と不安を隠しません。
「保護者側は納得できず、法人側も落ち度があってはいけないとピリピリしたムードだと聞いています」と指摘するのは「横浜の保育を充実させ、市立保育所の民営化問題を考える市民の会」事務局長で保育士の菅野昌子さん(五一)。
中田宏市長が突然、四園の民営化を打ち出したのは昨年四月。保護者や職員らは直営堅持の運動を展開し、十万人分もの署名を集めましたが、昨年十二月議会で、四園廃止の条例改定案が、日本共産党市議団(六人)と無所属(二人)以外の賛成で可決されました。
市が民営化を急ぐ大きな理由として、菅野さんは「保育士の平均年齢は公立が民間より十歳ほど高く、民営化で人件費を抑えることができると考えたからです」と指摘します。
実際、市は公立一園あたり(百二十人定員)年間約一億九千六百四十万円の運営費が、民営化で一億六千三百万円になると試算。その差額三千三百万円は「主に人件費」と説明します。
“成功例”の八千代市では
市は、民営化の“成功例”として、千葉県八千代市をあげています。
八千代市では、一九九八年に市内十二の公立園の半分を民営化する方針を出し、二〇〇一年四月一に一園の法人への移管が行われました。
民営化問題が起きてから、八千代市保育園父母会連絡会は民営化反対と子育て行政の拡充を求める五万三千人分の請願署名を議会に提出。市の子育てのあり方を検討する委員会にも保護者代表が加わり、要望書をまとめ、その後の受託法人選考委員会の議論の方向を決定づけました。その後も定期的な活動を通じて、民営化された園にもこれまでの保育水準が受け継がれています。
同連絡会の鈴木富夫事務局長(四四)は「民営化がすべてだめだとは思いませんが、保育にコストがかかるのは価値ある事業をしている証し。むしろ誇れることではないでしょうか」と強調します。
日本共産党の小林恵美子八千代市議は「八千代では、民間保育所にも“公立並み”の水準になるよう補助する要綱があるので、民営化での財政効果はなく、逆に市の持ち出しは増えました。これもコスト削減を目的にした民営化反対の運動の成果です」と指摘します。同市では現在、民営化の動きは止まったままだといいます。
国のやり方は保育水準崩す
もともと、公立保育園民営化の流れは、九七年に自治省(当時)が出した指針で、公立の「高コスト」論を展開してから強まりました。さらに、小泉内閣が保育運営事業費の補助を大幅に削り拍車をかけています。
菅野さんはいいます。「国のやり方では、これまで築いてきた保育の実践を崩してしまいます。幼児虐待が社会問題になるなか、地域の子育てを応援するセンターとしても、ベテラン職員の多い公立園が果たす役割は、さらに重要になってくるのではないでしょうか」
日本共産党の荒木由実子市議は「中田市政は、団の地方予算削減にのって公立保育園の民営化を強引にすすめていますが、『安上がり』のための民営化は絶対に認められません。一方、民間保育園も補助金削減で苦しんでいます。今後も、保育予算の拡充に全力をあげたい」と話しています。