児   第 373号
 平成10年9月4日

 市立保育園保護者 様

八千代市長 大澤 一治

「保育園の民営化」に対する考えとその取り組みについて

  平素は市政に対し,格別なるご理解とご協力を賜り感謝を申し上げます。
 さて,この度,市が打ち出しました「保育園の民営化」方針につきまして,保護者の皆様にもその内容をご理解賜りたく,ここに概要をご説明いたします。
【取り組み概要】
 保育園の民営化は長期の課題として捉え,現場に混乱を来さないよう柔軟に対応し,平成22年度までに新設を含めて4〜5園程度の民営化が実現できればと考えております。
従って,現在利用されている皆様は,直ぐに大きな変化が及ぶことはありません。
 また,近隣市の公立保育園より運営費で高コストとなっている現実を直視し,税の有効で公正な活用を図るためにも,効率的な運営にも努めてまいります。
【改革の背景と保育の現状】
 今,社会の変化の波は自治体にも押し寄せ,市政はバブル経済崩壊以降の低迷する経済に起因する厳しい財政状況や,高齢化社会の到来など社会状況の変化に対応する新たな行政サービスに迫られ,全体的な事業の見直しが強く求められています。
 保育の世界も福祉型から利用型への制度改正や,幼稚園の居残り保育も制度化されるなど,子供の立場,利用者の立場に立った保育サービスの多様化が進んでいます。
 このような中にあって,本市の保育行政は,他市に比べ手厚い職員配置などをとってきたため,保育園運営に要する費用は年々多額となり,事業全体で27億円もの費用がかかる状況になっています。皆様から頂戴する保育料は約3億5千万で全てを保育事業に充当しておりますが,この他市税からの負担額が18億円にもなり,大半が市の上乗せ(超過負担)となっています。これは,国が定める最低基準を大幅に上回る職員配置などの運営費(最低基準の約3倍の運営費)が要因であり,税の有効活用や公正な使い方からも問題を含んでいます。(公立保育園は,子供1人に年額230万円の費用がかかっています。)
 また,学齢前の子供の8割を占める幼稚園・在宅児童側から「働く親にのみ多大な市税の助成がある。行政は平等な子育て支援を」と,指摘を受けるに至っています。(因みに公立保育園児への公費助成は約月額17万円であるのに対し,私立保育園児には約月額8.5万円,私立幼稚園児童は月頃5,300円に過ぎません。)
【改革の目的】
 市の歳入(税等)は有限であり,保育事業にかける費用も自ずと限界があります。今回の改革は,時代の変化を見据え,保育事業の行き過ぎた支出を抑制し,総体的な市民福祉の向上を図ろうとするものです。特に,家庭を取り巻く社会状況の変化に対応した児童行政(子育て支援事業―すてっぶ21など)などにはさらなる推進が求められています。
 もちろん,未来を担う子供たちですから,児童福祉の視点から行政が保育事業に責用をかけていくのは当然であり,保護者の皆様には,保育制度のさらなる充実を求めこそすれ, 改革には少々抵抗を覚えるかも知れません。しかし,行政サービスは税金で運営されており,常に「最小の費用で最大の効果」を上げなければなりません。また,その運営には納税者である市民の理解も必要となり,市の特色を持つにせよ,行政全体からの判断と時代の変化に対応した対応も求められています。
【民営化の方法】
 さて,民営化の方法ですが,市では,保育現場における柔軟な保育体制や工夫により,子供に極力影響のないゆるやかな改革を進めていく考えです。運営の委託先は実績も豊かで地域の信顆も厚い社会福祉法人に,時間をかけて1園ずつ進めていく考えです。勿論,現実は12園の公立保育園が運営されており,そこに働く職員の処遇の問題もありますので,すぐに全てが民営化されるということではありません。具体的に言いますと,この推進には,現場に混乱を来さないように柔軟に対応し,長期間の中で,退職者などを当面有資格の臨時職員で対応し,その数が一定数に達する毎に1園を民営化するもので,さらに新設の場合などを想定しています。
 なお,現在勤務している職員は公務員としての身分保証がありますので,民営化には定年退職を待ったり,本人の希望を尊重した配置転換など.慎重な対応をしてまいります。
【私立保育園について】
 民営化の受け手である私立保育園は社会福祉法人によって運営されています。これらの保育園は営利を追求できないばかりか,入園している子供も公立保育園と同じ処遇を受けられるように市も運営費を助成し,積極的に支援しています。
 市内には現在5園の民間保育園が運営されており,それぞれ長い実績と地域での確かな評価を受けています。中には,常に保育界のりーダーとして障害児保育や産休明け保育等を先駆的に取り組み,子供への奉仕を第一とする真筆な姿勢が高い評価を受けている園もあります。
 なお,保育料は市が定め,市に納めますので,保護者のご負担は公・私立園同一です。
【終わりに】
 今回の保育園の民営化方針等は,決して保育園制度や女性の社会進出を後ろ向きに考えることではなく,弱い立場の人にも影響を及ぼすものではありません。むしろ,皆様への行政サービスを総体的には向上させ,時代の変化に的確に対応したサービスに努めるためです。また,民営化はコスト論のみではなく,生活スタイルの変化によって益々多様化する保育需要(日曜保育など)を検討していくためにも,柔軟な保育姿勢に立つ私立保育園の活用が将来的には不可欠と判断されるからです。さらに,委託による民営化の実現までには長期間を要するものの,市が委託者としての責任を持ち,一部運営にも関与してまいりますので,利用者の声は園のみならず,市からも反映されるものと考えております。
 私は,男女一人一人が人間としてお互いを認めあい,支えあう男女共生社会を目指しており,女性の社会進出を今後とも応援してまいりたいと考えております。
 また,21世紀を担う市内の全ての子供たちが,思いやりと困難に立ち向かう勇気を持つ子供に育つよう,皆様と手を携え,力を合わせて歩んでいきたいと考えております。
 そのためにも,どうか本方針をご理解賜りますよう,重ねてお願い申し上げます。

 なお,この件のお問い合わせは,八千代市保健福祉部児童福祉課へ(Tel83-1151)

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