小泉さんホントなの?
保育所待機児ゼロ作戦
願いは「安心して預けたい」
「『保育所に入るのを百人が待っている。ニ年待ち』といわれた」(東京都・岡本千尋さん)。「子どもを預けて働きたい」人は増えているのに、全国で認可保育所入所を待っている人は五万七千八百人(二〇〇〇年十月現在)。小泉内閣が打ち出した「待機児ゼロ作戦」は夢のよう。みんなが安心して預けられるようになるの?
丸山聡子記者
“15万人受け入れ”いうが
「待機児ゼロ作戦」の目標は、二〇〇四年までの十五万人受け入れです。
しかしその内容は「最小コストで最大の受け入れ」を基本方針に、運営は「民間を極力活用」するというもの(「仕事と両立支援策について」男女共同参画会議、六月)。
さらに小泉「改革」の指針となる「総合規制改革会議」(七月二十四日)の「中間まとめでは、公立や社会福祉法人が主体だった保育所に民間企業などを参入させることが必要だとし、企業参入を困難にしている規制の撤廃、公設民営の積極的活用を勧めています。期限を切った「待機児解消」は父母の願い。政府は責任をもって財政的裏づけのある計画を示す必要があります。
同じ広さで定員増
最小コストの待機児解消とは――。
福岡市は待機児の多さが問題になり、民間園の定員を三年間で二千六百五十人も増やしました。
以前百二十人定員だった園では、広さはそのままで現在百七十人以上を保育しています。十年以上働く保育士(54)はいいます。
「ゼロ歳児クラスでも年度末には二十数人になり、食事中など、壁にくっつくようにしないと立って動くこともできません。重ねるようにして布団を敷くクラスも。人をまたがない、布団を踏まないなどのしつけは保育士自身が守れません。大声でしかることも多く、子どもの人格形成にも良くありません」
福岡市では、入所を希望する人が増えているのに、この十五年間認可保育所を新設していません。そのためつめこみにもかかわらず、待機児は減るどころか二〇〇〇年から再び増え始めました。これらの事態は政府が九七年の児童福祉法改定を機に、保育所設置の最低基準の弾力化を打ち出してきた結果です。
九八年度から保育所の定員をこれまでの15%増まで、年度途中なら25%増まで受け入れることを認め、さらに今年度十月以降は、25%の上限枠を撤廃するとしています。
現在の最低基準は、四歳以上児は三十人に一人の保育士、保育面積は棚などのスペースを含め、一人当たり一・九八平方bなど、貧しい水準です。施設面では、戦後の混乱期に定めたまま、五十年以上変わっていません。政府は今でも低い最低基準をさらに引き下げようとしているのです。
“ベテラン保育士いなくなる”コスト削減に不安
小泉首相は「民間でできるものは民間で」と繰り返し主張しています。実際、反対の声をよそに民営化は各地に広がっています。
大阪・守口市では、六月議会に突然、市内二十園の公立保育所のうち三園の民営化が提案されました。わずか二週間で三万人を超えた白紙撤回を求める書名も無視し、日本共産党以外(公明党、自民党など)の賛成で強行採決しました。市は、「民営化で保育内容も充実し、コストも削減できる」とバラ色の宣伝をしています。
しかし、保育所運営費の85%を占めるのが人件費。コスト削減は、人件費が高くなるベテラン保育士のリストラやパート化につながります。
子ども二人を公立園に預けている母親は「仕事をしながら子育てする大変さや悩みも、ベテランの保育士さんに聞いてもらいました。だから二人目も産むことができた。保育園は預けるだげでなく、親も子も育ててもらう場所です」。今後、保護者の納得がいく話し合いや保育の質の維持、これ以上民営化を増やさないこと、公立園の保育サービスの向を求めていきます。
千葉・八千代市では、今年四月から公立園一つが民営化されました。「保育の質の低下は許さない」と父母や保育所職員が運動し、委託先は社会福祉法人に限る、職員の三分の一は六年以上の経験のある保育士にするなどの要求が実現。その結果、運営費はむしろ少し増えました。
公立保育所の父母会連絡会前会長の清水太さん(34)は「子どもにゆき届いた保育をするなら人件費は削れないことがはっきりしました。市場原理にまかせれば、もうけのために園児の獲得に走ることになります。保育所は地域の子育てにも目を配り、父母や住民とも力を合わせ、子どもを中心にした保育を実践できるところに」といいます。
公的責任を守って
日本福祉大学教授 垣内国光さん
国は民間企業導入で安上がりな保育をしようとしています。東京・三鷹市の委託先はベネッセコーポレーションで、運営費は公立園の45%です。十九人の職員は契約社員で、月給は手取りで平均十六万円程度といいます。この労働条件で専門性を高めながら長く働くことは難しく、子どもや父母を支援できません。
児童福祉法で定められている保育所は「保育に欠ける子ども」の発達保障の場であると同時に、地域の子育てを支援する場でもあります。こうした保育所を民営化し、金もうけの対象にするという規制緩和は、保育の公的責任を放棄することであり、許されません。
保育所ふやすためには
これまで政府は、「少子化対策」「待機児解消」といいながら、保育所建設を進めてきませんでした。公立園数は八四年の一万三千六百三十六カ所をピークに、二〇〇〇年は一万二千七百二十七カ所まで減少。今年度の保育所施設整備の予算は約七十三億円。前年より四億円も減額です。
保育所運営費の国庫負担率も、七〇年代の十分の八から、八六年以降は二分の一に大きく後退したままです。自治体の負担が重く、保育所の増設は困難です。
八〇年代以降の働く女性の増加は著しく、子育て世代の三十歳代前半層は、九○年代の十年問で5.4%も上昇。待機児の問題は保育需要の急速な高まりに逆行してきた自民党政治の責任です。
日本共産党は、@保育所を緊急に新・増設して待機児を解消し、「保育所整備計画」をつくって希望者が皆入れる保育体制を整備する、A保育予算を増やし、最低基準を抜本的に改善し、多様化している保育要求にこたえる、B「最低基準の規制緩和」による民間営利企業の参入に反対し、市町村の保育責任を定めた児童福祉法にもとづく保育行政をすすめる、と提案しています。
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