1999年7月6日

八千代市長 大澤一治殿

子育て支援対策検討委員会委員

公立保育園父母代表3名(連名)

 八千代の保育や子育て支援対策充実のため、ご努力頂きありがとうございます。

 7月17日に予定されている第3回「子育て支援対策検討委員会」に向け、当日の議事を円滑かつ効率的に行うため、検討議題に関連して事前にお尋ねしたい質問を提出致します。内容は、T「子育て支援対策検討委員会」について5項目U「公立保育園の民営化」について20項目です。いずれも、検討課題を整理し有意義な話し合いを展開する上で踏まえておきたい要点と考えております。

 つきましては、13日までに文書で回答頂きたくお願い申し上げます。お手数をおかけしますが、よろしくご検討下さい。

 

T 【子育て支援対策検討委員会について】

(1)何を目的とし、何を話し合う検討委員会なのですか

(2)(1)の中に公設民営化問題はどう位置付けていますか

 設置要領によると「新しい時代に対応した子育て支援対策を総合的かつ計画的に検討するため…」とあります。言葉通りなら私たち委員は、政治的動向からは独立し、フリーハンドで子供たちのためのプランを描ける、ということになります。

 そもそも、私たちは、今回の検討委が設置された経緯を次のように理解しています。

    1. 9812月に八千代市父母会連絡会が市の保健福祉部と懇談。その際、「民営化に向け、受託法人選考審査委員会(仮称)に保護者代表にも参加してもらい、内容を検討する」との説明があったのに対し、父母側は「プランも示されていないのに、民営化を前提として委託先法人を選ぶための委員会には入れない」と申し入れた
    2. 99年1月24日、父母会連絡会と大沢市長が懇談。「公・私・市民の方を入れて八千代市にとってどういう保育園が必要か、という検討委員会をつくる」と提案がなされた。同時に、父母から出された質問(民営化の内容、コスト削減の試算、公立園での一時・休日保育実施、公立園の合理化計画など)についても、すべて「検討委で決定していく」という回答が繰り返された
    3. 29日に父母会代表3人が市長と面会。父母側が「公設民営化を前提とした議論ではなく、もっとニュートラルに子供の立場に立って子育て支援や保育のあり方を検討する場にしてほしい」と申し入れ、市長も賛意を示した

 その結果、私たちは検討委の位置付けを「行革方針(公立園の合理化・公立保育園の民営化)とは切り離し、市の『子どもにやさしいまちづくりプラン』に沿って、本来、八千代の子育て支援策と保育の充実のために何が必要なのか、を検討する場」ととらえ、参加してきました。

 ところが、先日(6月20日)の第2回目の会合では、事務局が冒頭から、市長の議会答弁を補う公私コスト比較論(保育事業内容をそろえた比較ではないため、舌足らずのデータです)を説明。議論を誘導される形で散発的なやり取りとなり、本来の議題(子どもプラン・子育て支援策・特別保育事業)を十分討議するには至りませんでした。

 さらに、一部の委員からは「初回から公設民営を話し合う場だったのに、議論を先送りしただけだ」との発言がありました。今後あるべき子育て支援・保育行政を描いたうえで、公設民営化導入の有効性を検証するのではないのですか。会の設置にあたり、、委員によって違う趣旨説明をして召集したのでしょうか。もしそうなら、議論が混乱するのは当然です。運営上の責任が問われます。改めて、何を話し合うための会なのか、また、どのような権限をもっているのか、お尋ねします。

(3)公設民営化の具体的な全体計画・内容まで踏み込んだ話し合いをするつもりはありますか。時間が足りなければ検討委の期間延長も考えていますか

 市が昨年6月に発表した保育行革方針の2つの柱のうち、公立園の合理化については、その時点で具体像(退職職員の不補充、0・1歳児への臨時職対応、看護婦・栄養士の配置転換など)が示されたのに対し、公立園をどう民営化するかについては、方針発表後1年を経た今も、計画や政策的効果(サービス拡大やコスト削減の見通しなど)は一切示されていません。

 中身を論議・公表しないまま、方針だけが先走りする市政は間違っています。が、プランをそう簡単には示せない、という事情はある程度お察しできます。考えられる主な背景は次の通りでしょうか。

    1. 八千代市の場合、他の先行自治体のケースをそのまま応用するのは難しい。例えば、尼崎市が民営化によって実現しようとした公立園での乳児保育・延長保育はすでに八千代では全園で展開されている▼公私間格差是正の補助金が比較的手厚いため、公立と同程度の保育事業内容では運営コストの差はほとんど生まれない▼公私間の職員給与の差は、比較的少ない(平成9年で公立37万円、私立31万円/運営費の中に占める人件費比率は公立84.4%、私立82.0%)▼向こう10年間は、保育職員の自然退職はほとんどない▼待機児が予想される東葉線地域では、すでに民間園で60人の定員増が計画されている、などの独自事情がある
    2. 逆に、新たに展開が望まれているのは、「子どもプラン」での調査結果などから、全地区の子育て家庭を対象とした地域開放事業や一時保育、在園児からは休日保育であり、全国的にも一歩先を行く保育事業である。それだけ財政持ち出しも増える
    3. 果して、公立園を民営化するという手段で、本当に市長が言う「多様な保育ニーズへの対応」(Aの内容)を図りつつ、コスト削減効果を期待することができるかどうか。八千代のケースで「実現」のカギを握るのは、Aの事業展開をいくつまでに限定するのか▼現行の保育基準をどこまで下げられるか▼公私間の格差是正や公的保育事業への補助をどこまで減らせるか、というマイナスの線引きである。これまで市長が表明してきた「保育の質が低下することがあってはならない」との言葉とは矛盾する提案を行わなければなりません。

 直接利用者だけでなく幅広い層を集めた検討委です。子どもに不利益な条件をのんでも市民が必要とする方針なのかどうか。「子どもプラン」との整合性を保つためにも、これまで明らかにしてこなかった論点やリスクも含めた条件を出し合って、今後の保育事業全体の整備計画と公設民営化の妥当性を比較、徹底検討する必要があると思います。

 6月議会では、公設民営化の内容を問われ、市は「これから検討委で検討してもらう」と答えています。第3回の会合1度で、先送りにしてきた内容すべてを検討するのは難しいのではないでしょうか。オープンにこの問題を話し合う唯一の機関です。議論を積み残した場合は、期間延長するなど適切な対応をお願いします。

(4)「受託法人選考委員会」とは、どんな構成で何を決める機関なのですか。子育て支援対策検討委員会での内容はどう反映されるのですか

(5)公設民営化の方針を遂行するなら、どんな日程で、何をいつまでに整備しなくてはいけないのですか

 2回目の会合と6月議会民生常任委の場で、10月に民営化に向けての選考委員会を設置することが明らかにされました。まだ、市側のプランもなく、検討委でもこの問題の論議に入っていない段階では、拙速な気がします。が、「平成13年度までにモデル園1園を民営化」という市長方針を逆算すると、手続きだけは期限が迫っているように思われます。計画の中身は決めていないが、手続きのために形だけ検討委を開いたという本末転倒の構図にならないよう、あえてお尋ねします。

 

U 【公立保育園の民営化について】

◇政策的効果◇

(1)公設民営化によって「経費削減効果」と「保育事業の拡大」を両立させることは可能ですか。また、その際に「保育サービスの質の低下」は招きませんか

 市長は、民営化の目的について「コスト削減効果」と「これからの保育需要にこたえ、多様なニーズにこたえるため」と説明しています。また、市民参加の行革推進委員会では「サービスの低下はしない」との前提を確認したうえで、行革方針に合意したとの経緯が伝えられています。

 公設民営化を導入する自治体が出ている中で、全国動向を調査し地域によっては「公立園民営化やむなし」との分析を行っている研究者ですら、こう論じています。「民営化後に保育内容が改善されるのなら、利用者は不安を乗り越えて民営化を受け入れる価値もあるだろう。だが、保育内容の改善が無いのであれば、メリットは何もない。そのため、単なる経費節減だけが目的の民営化案では利用者の反対が強く、民営化に至らない可能性が高いと思われる」(前田正子「公立保育園の民営化:その背景と実際」『LDI REPORT』99年5月号)

 質と量の両面で保育サービスの拡充が見込まれ、目に見えるコスト削減効果がある、と自信を持てる計画が示せなければ、子育て家庭はもちろん、市民全体にとっても制度改変する意味はありません。可能性をおたずねします。

 私たちも、「公立がダメか私立がダメか」という瑣末な議論をするつもりはありません。公私の認可保育園全体が「公的保育」と定義されている以上、すべての園で「公共性の高い保育」が保障されなければいけない、という基本姿勢を市に貫いてほしい、と願っていることをご理解下さい。

◇職員の配置基準◇

(2)保育士の配置基準は98年度の市の基準以上を守るのですか。それとも国基準に引き下げることも考えているのですか

(3)看護婦・栄養士は現行通り全園に配置する(配置私立園には補助金)のですか。それとも、減らすのですか

 保育士の数は保育の質を左右します。3歳児が20人いれば、市基準なら保育士2人、国基準なら1人。30年間変わらぬ国基準通りで配置している自治体はまずなく、新規保育事業のために保育本体の内容を悪化させることは、考えられないと思います。また、すでに今年度の配置基準一部切り下げ(4・5歳児)に伴って、子供に影響は出ていないのでしょうか。

 看護婦・栄養士は、子供・父母にも保育士にも重要な存在であり、保育の質に大きく関係します。もし拠点配置をするなら、職員負担が増え、子供への対応が手薄になる分、逆に保育士の増員が必要になりませんか。

◇保育士の構成・処遇◇

(4)保育士の年齢構成をバランスあるものにするために、受託法人にどのような条件設定をしますか。(例えば経験年数10年以上、5年以上の保育士の一定基準を設けるなど)。また、その条件を市内の全園に適用するつもりはありませんか

(5)保育士に対する給与の公私間格差を埋めるために、現在、私立園に対してはどういう方式の助成を行っていますか。勤続年数による昇給はどこまで確保されていますか。また、その是正策は今後上げますか、据え置きますか

 0歳から就学前まで発達の違う6段階の子供を知るだけで最低6年、専門家によると、一人前と言われるには2回り12年かかると言われています。また、年齢構成上のバランスも大切であり、私立園にはベテラン保育士を、公立園には若い保育士を増やす工夫が求められます。

◇保育サービスの拡充◇

(6)在園児に希望の多い休日や年末保育は、全園で実施しますか。受託法人園や一部私立園に限定しますか。公立園で実施するのは不可能ですか

(7)待機児を解消するために、東葉線沿線で何人分の受け入れ枠が必要となりますか

(8)延長保育は、今後どの程度の受け入れ拡大を予定していますか

(9)障害児保育は、公・私立園全体で受け入れ体制を取りますか。一部の園に限定しますか

◇子育て支援◇

(10)公立2園で行われている「子育て支援センター」(地域開放を毎日行い、育児相談に応じる)は、全園で整備する予定ですか。公立園と受託法人園に限定しますか

(11)保育園内の子育て支援センター1ヶ所につき、運営費はいくらかかりますか。それに相当する補助金を受託法人や現行民間法人に用意できますか

(12)保育園利用者外からニーズの高い一時保育事業は、市内全園で整備する予定ですか。限定するのなら、それは公私何ヶ所位で、料金・条件設定は一律にするのですか

(13)公立・私立に行政として期待する役割は何ですか。「公立にできること、できないこと」「私立にできること、できないこと」を挙げて下さい

 家庭にいる母親の方が育児困難に直面している時代です。近所を見渡すと、子育て支援を頼れる専門拠点が保育園しかなくなっている現実がある以上、本来ならば予算を大幅拡大しても、ベビーカーで行ける範囲に(現状では全園で)、同じサービスを整備する必要があるのではないでしょうか。認可園である以上、公私を問わず子育て支援に参画してもらいたいと思います。

◇地域ごとの保育需要◇

(14)八千代市は地区により人口動態が違います。今後の保育需要の特色と課題を地区ごとに教えて下さい

◇公立園の存続◇

(15)公立保育士の新人採用は3年前から凍結されています。行革方針では「今後も採用しない」としています。将来的には公立園は全廃するという方針なのですか

 民営化計画期間の平成22年度までは退職者は10人前後しかいない一方、4、5園が民営化された後の23年度以降は、団塊の世代が大量に退職していく見通しです。その時点で4、5園程度残った公立園もやがて存続できなくなります。

◇コスト削減効果◇

(16)モデル園と、その後4、5園を公設民営化した際のコスト削減効果を教えて下さい。何を削減して、どうコストダウンするのですか

◇保育の公的責任・保育の平等性◇

(17)認可園に対しての公的責任や保育内容の平等性はどのような形で担保する予定ですか。民間移行園を含めた市内保育園への改善要望や不服申立てに対応する機関は設けますか

◇民営化の方式◇

(18)どのような契約方式で民営化するのですか。また、それによって地域ごとの公私の配分はどのようになりますか

(19)受託法人の条件は誰が、どのように決め、どのような形で公募、選考しますか

◇ネットワーク◇

(20)公私を問わず、父母のネットワーク作りや保母の研修・交流の機会は保障されますか

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