傷痕 V


ゆっくりと、肌の色をなぞり、流れ、紅い雫になる

冷めた瞳でその手を見つめ、冷めた心が引き金をひく

痛みもないまま紅い線になり、脈動が溢れさせた赤・・・赤・・・赤・・・

今だからほしい涙、痛みに流す涙でもいい

心にはできないから、胸をぎゅっと掴んでみたりした



鮮やかすぎた その色が錆びついた頃、僕は眠れる

未来を見ない瞳は虚ろ、欠けた心は埋められなくて

抑えられない衝動が、癒えた傷痕を抉って、赤・・・赤・・・赤・・・

『今』なんて要らない、『未来』なんて君にあげた

眠ったままで生きられないから、このまま殺してと願ったりした



赤・・・赤・・・赤・・・

傷痕は、赤・・・赤・・・赤・・・

生きる事で心に負う痛みと、死ぬ事で身体に負う痛み

生き残るために夢を壊す事と、夢を持って生きるために死を選ぶ事

君といるために僕を殺す事と、僕を護るために現実から逃げる事

君を犠牲にした僕の幸せと、僕を犠牲にした君の幸せ

自由になりたいと嘆く事と、自由に不安で怖くなる事

過ごした時間と、残された時間  始まりの意味と、終わりの意味

いつまでも・・・と願う事と、刹那を紡ぐ現実

・・・全ては紅く・・・紅く・・・鮮やかなまま

そのまま僕も紅く、この色の中で見えなくなればいい・・・

そしてただ、こう告げるの・・・

                    ・・・さよなら

2000.3.30

Back