望む事のない死の容


死、それは誰にでも訪れ、避ける事は出来ないもの

どんなに逃げたくても、それは、簡単に、冷酷に奪い去っていく

誰かに死が近づく、それを見るものは誰かに訪れる死でしかないけれど

自分に降りかかる死なら?

どんなに死を怖くないと言い放っても、それは漠然とした死のイメージでしかない

死を知る事など出来るはずもなく、死の孤独さに不安と痛みを感じる事もない

どんなに側に寄り添っても、痛みまでは分かち合えない

死の恐怖で狂いそうな心を、僕が言う『死にたい』の一言で逆撫でしてあげようか?



逃れられない死が迫る事が誰にでもいつかはある

死にたいと叫ぶ事は容易だけど

死はそんなに簡単なものじゃない気がする・・・

死にたくない、そんな誰かの声を聞き流して

安易に死を口にするのは違う気がした



死とは本来もっとも尊いものなんじゃないだろうか

死とは常に未知のもので、現実として認識できる生が終わる瞬間にあるもの

その痛み苦しみ、不安、恐怖を和らげる術もなく

鼓動が止まるまで、追いつめられながら、ただ、それに耐えるしかない

生命を断ち切るのだから、痛みと不安と恐怖がつきまとう

それが望まない死ならなおさら

死ぬ事は容易いと思い、生き残る事への最後の支えとした死とは違う、

絶対的な容の死・・・

死・・・それは生命に課す最も重い痛み・・・



僕たちは、死ぬ事によって気づかされるんだ

・・・生きた価値を・・・

死を見つめる事もできないままで、死にたいと願う

それは勇気でも、哲学でもなく、

僕自身の慢心と甘えがもたらした傷痕・・・

         ・・・望まない死を迎える人もいる・・・

2000.3.14

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