協働のデザイン第7回  自立した地域づくりのチャンス 〜地域自治組織「合併特例区」活用は使える!
世古一穂(代表理事)
1.前提として

「3000の自治体を1000に」を合言葉に国主導による平成の大合併が急速に進行中である。
いわゆる合併3法、地方自治法の一部を改正する法律案、市町村合併の特例に関する法律の一部を改正する法律案及び市町村合併の特例等に関する法律案は、平成16年3月9日、国会に提出され、4月27日に衆議院を通過、5月19日の参議院本会議において可決成立し、5月26日、公布された。(平成16年法律第57号、第58号、第59号)
合併という地域再編の問題は、実は合併問題に直面している市町村のみの問題ではなく、わが国の地方自治のあり方を根本的に変えるすべての自治体にとっての課題であるととらえる必要がある。
合併論議の中で、筆者も委員を務める地方制度調査会が提案した地域自治組織は、地域の活性化、地域課題の解決、行政改革など今後の地域自治の大きな変革の契機となるものである。
上記3法では地域自治組織は地域自治区及び合併特例区制度として新たに創設された。
地域自治組織の創設は自立した地域づくりのチャンスでもある。
合併論議が財政面での効率化の観点から議論されがちであるが、本来は地方分権の受け皿として、地域自治の観点から論議されるべきものである。
国に権限を委ね、自治体事務の執行を補助金・通達等による国のコントロール下でおこなってきた地方行政のあり方は地方の国=官僚への依存心を増大させ、陳情政治や官官接待を生み出すとともに、地方の歴史文化を衰退させ、画一的なまちづくりを全国化させた。
中央集権システムは省庁の縦割り行政の集合体として構成、維持され、そのコントロールは都道府県、市町村ばかりでなく、各地域における末端の公的団体の活動体制にまで及んできた。
中央集権型のシステムは高度成長をとげるには有効に機能するシステムであった。しかし権限のあるところに、人も組織も追随し依存してきた。住民も自治体も高度経済成長と行政の肥大化に反比例して、自治から遠ざかってきたのが日本の戦後の実情といえよう。
しかし、こうした戦後の中央集権システムを維持したままでは、わが国は内外の重要課題に対応できず、経済・社会・行政面での行き詰まりが顕在化し、多様化する国民ニーズに対応できないところまできた。
そこで「地方にできることは地方に委ね、地方の自主性自立性を高め個性豊かな活力ある社会の構築」を目指す必要があるとの基本認識に立ち、2000年4月に行政体制の大転換となる地方分権一括法が施行された。
そこで地方分権の受け皿論として合併論議が出てきた。
個性豊かで持続可能な地域社会の基礎はまず個人の自立、地域の自立である。
合併論議を契機に地域の自立、住民自治の拡充という視点から、住民自らの地域づくりを補完・支援するものとして、地域自治組織がある。
今回の法制度化で特に注目してほしいのが「合併特例区」制度である。
   

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2.合併特例区とは何か
以下は筆者の質問に対する総務省の回答である。

Q1 地域自治組織で合併特例区と制度化するに至った背景と経過は?
第27次地方制度調査会答申で導入された特別地方公共団体とするタイプの地域自治組織を制度化したものである。
市町村の合併にあたっては、施設や財産の管理など当分の間、旧市町村の区域を基礎とした、独立した団体を設けて事務の処理を委ねる方が適切なケースに対応できるようにしたものである。また従来の市町村の名称を残すなど新しい市町村の一体性の円滑な確立に向けてソフトランディングを図るために制度化したものである。

Q2 法人格を有するタイプと有しないタイプでの基本的な考え方の違いは?
合併特例区は市町村合併の円滑な推進を趣旨として、合併後の一定期間(5年以内)、合併後の市町村の区域内にあって独立した法人格を有する特別地方公共団体として設置されるものであるのに対して、地域自治区は、住民自治の拡充及び行政と住民との連携による協働活動を推進することを趣旨として、市町村の区画として設置されるものである

Q3 合併特例区の設置期間を5年としたことの意味は?
合併特例区制度の趣旨は、新しい市町村の一体性の円滑な確立に向けて、ソフトランディングを図ることにあるが、合併特例区が永続的に存続したのでは、結果的に合併が市町村の一体性の確立の妨げになることから、合併新法が5年の限時法とされていることなどから、設置期間は5年とした。

Q 4合併特例区を設置した場合のメリットとデメリット
合併特例区を設置した場合のメリットは、市町村合併に際し、新しい市町村の一体性の円滑な確立に向けて、ソフトランディングを図ることができることである。合併特例区の設置にあたっては、合併市町村と合併特例区との適切な役割分担を図り、効率的な行政運営が確保されるように留意する必要がある。

Q5 合併特例区で処理できる事務について
合併特例区は、合併関係市町村の協議に基づく規約で定める事務を処理する。具体的な事務の例としては、地域の公の施設の管理(集会所、コミュニティセンター等)地域振興イベントの実施、コミュニティバスの運行、地域に根ざした財産の管理(里山、ブナ林等)などが想定される。

ただし、1.法令により市町村に処理義務が課されている事務2.市町村のみ処理権能が認められている事務は当然に処理することができず、また、議会や各種行政委員会が設置されていないことから、法律またはこれに基づく政令で定めるものを除き、3.議会の議決や条例の制定を要する事務や、C行政委員会の所掌事務は、処理できない。

なお、公の施設の設置・管理については、本来は条例の制定を要する事務だが、合併特例法(合併新法)において特別に根拠規定を置くことにより合併特例区において処理することが可能である。
   

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3.合併特例区の活用にむけて

地域自治組織は、それぞれの地区のコミュニティ単位では解決できない課題を、従来の基礎自治体という範囲よりさらに身近な地域(現在の旧町村単位)で、しかも地域住民の代表による判断で公的サービスを行い、補完支援することによって解決していくための仕組みとして活用できるものである。
地域住民ができることを担い、行政のスリム化を図っていくにはこの方法をとることが有効だと思う。つまり、集合的或いは統一的に行うことが効率も良く成果の上がる事務は市全体で行い、歴史文化の創造など地域の個性を生かす事務は、地域住民の主体的な取り組みに任せるという、簡素でかつ効果的な仕組みとして活用してはどうかと考える。
「地域の多様性を維持しながら、一方で一体性や効率性・公平性を保たなければならないという二律背反の命題を解決する方策」である。
合併論議を行政の効率性に偏らせず、住民自治を基本におき、住民活動を身近なところで補完できる簡素な行政システムの構築にむけてのプロセスという考え方、市民と行政が協働してまちづくりを進めるという考え方にたって行うための有効な方策として合併特例区の活用を提案したいと思う。
いうまでもなく、合併特例区は今のところ合併市町村のみに適応される制度で、5年という時限があるものでしかないが、この制度を活用した自治体での地域自治の成功例をもって合併する、しないに関わらず、一般に活用できる法人格をもった地域自治組織として制度化する道をさぐれないか、地域内分権、多様性のある統合の方策として一般制度化の方向を目指すというのが前提である。
地域自治区及び合併特例区制度の概要について紹介する。参考にしていただきたい。
   

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参考資料

地域自治区・合併特例区制度の概要

1 一般制度としての地域自治区

(1)地域自治区の趣旨、設置手続き等
地域自治区とは、地域の住民の意見を行政に反映させるとともに行政と住民との連携の強化を目的として、市町村の判断により設けられる区域であり、その区域の住民のうちから市町村長が選任した者によって構成される地域協議会及び市町村の事務を分掌させるための事務所を置くものである。地域自治区の名称や区域は、市町村が条例で定める。

(2)組織と権限
1. 地域協議会
地域協議会は、住民及び地域に根ざした諸団体等の主体的な参加を求めつつ、多様な意見の調整を行い、地域自治区における協働活動の要となるものである。

ア 構成員
(ア) 地域協議会の構成員は、当該地域自治区の区域内に住所を有する者のうちから市町村長が選任する。任期は4年以内で条例で定める期間とする。
(イ) 市町村長は、(ア)の選任に当たって、区域内の住民の多様な意見が反映される構成となるよう配慮しなければならない。
(ウ) 構成員には、報酬を支給しないこととすることができる。
(エ) 地域協議会に会長及び副会長を置く。

※ 地域協議会のあり方は、国会審議における最重要論点のひとつであった。その結果、衆参両院の総務委員会において、1.地域協議会の構成員の選任に当たっては、公平性、透明性等の確保に十分配慮すること、2.地域協議会は住民の主体的な参加を期待するものであるから、構成員は原則として無報酬とすること、の2点について政府において周知に努めるべき旨の附帯決議がなされた。

イ 権限
(ア)必要的諮問事項
市町村長は、地域自治区の区域内の重要事項を決定・変更するときは、あらかじめ地域協議会の意見を聴かなければならない。重要事項は条例で定めるが、例としては、区域内の公の施設の設置及び廃止、市町村の策定する基本構想等のうちその区域に係る重要事項、などが考えられる。

(イ)その他の事項
地域自治区の事務所の所掌事務や市町村が処理する地域自治区の区域に係る事務等に関し、市町村長等により諮問された事項又は必要と認める事項について審議し、市町村長等に意見を述べる。

こうした事項の例としては、地域福祉(学童保育、福祉ボランティア活動支援 等)、地域内の環境保全(リサイクル、清掃 等)、地域内道路・施設の管理、地域防災、地域防火、地域防犯などが考えられるが、これらについて、地域協議会は単に意見を述べるにとどまらず、住民を巻き込んで協働活動を展開することが期待される。

2. 事務所
(ア)市町村長の権限に属する事務を分掌する。
(イ)地域協議会の事務を処理する。

2 合併特例の地域自治区

合併時に、期間を定めて一又は複数の旧市町村の区域を単位として地域自治区を設置する場合には、次の特例が適用される。

(1)設置
地域自治区に関して条例で定めることとされている事項は、合併関係市町村の議会の議決を経た協議により定める。

(2)区長
地域自治区の区域における事務の効果的な処理のため、特に必要があると認めるときは、合併関係市町村の協議により、事務所の長に代えて区長(特別職)を置くことができる(合併市町村長が選任。)。任期は2年以内で合併関係市町村の議会の議決を経た協議により定める期間とする。

(3)住居表示の特例
住所の表示に地域自治区の名称(「区」のほか「町」、「村」も可。)を冠する。

3 合併特例区

(1)設置の目的
合併後の一定期間(5年以内)、旧市町村の区域ごとの住民の意見を反映しつつ、その地域を単位として一定の事務を処理することが合併市町村の一体性の円滑な確立に資すると認めるときは、合併関係市町村の協議により、一又は複数の旧市町村の区域を単位として、特別地方公共団体である合併特例区(法人格を有する。)を設けることができる。

(2)設置手続
合併関係市町村の協議で規約を定め、廃置分合の申請に併せ、設置を申請する。

(3)合併特例区の権能
旧市町村において処理されていた事務であって、合併後の一定期間、旧市町村の区域を単位として処理することが当該事務の効果的な処理に資するもの等のうち、規約で定めるものを処理する。

例としては、地域の公の施設(集会所、コミュニティセンター等)の管理、地域振興イベントの実施、コミュニティバスの運行、地域に根ざした財産(里山、ブナ林等)の管理などが考えられる。

(4)組織と権限

1. 合併特例区の長
(ア) 合併市町村長が選任する特別職とする。(任期は2年以内で規約で定める。)合併市町村の助役又は支所・出張所長と兼ねることができる。
(イ) 合併特例区の長は、合併特例区を代表し、その事務を総理する。
(ウ) 法令等に違反しない限りにおいて、合併特例区規則を制定することができる。

2. 合併特例区協議会

ア 構成員
(ア) 合併特例区協議会の構成員は、合併特例区の区域の住民であって合併市町村の議会議員の被選挙権を有する者のうちから規約に定める方法(準公選制など可。)により合併市町村長が選任する。任期は、2年以内で規約で定める期間とする。
(イ) 合併特例区協議会に会長及び副会長を置く。
(ウ) 構成員には、報酬を支給しないこととすることができる。

イ 権限

(ア) 合併特例区の長は、予算、決算の認定、規約の変更、合併特例区規則の制定等の重要事項に関しては、合併特例区協議会の同意を得なければならない。
(イ)  地域自治区の地域協議会と同様、必要的諮問事項、その他の事項について合併市町村長等に意見を述べることができる。

3. 合併特例区の職員
合併特例区の職員は、合併市町村の職員のうちから、合併市町村長の同意を得て、合併特例区の長が任命する。したがって、合併特例区は独自の職員採用はできない。

(5)財務及び財源措置

1. 予算
合併特例区は、予算を作成したときは、直ちに合併市町村長の承認を求め、かつ、その要領を公表しなければならない。

2. 決算
合併特例区は、毎会計年度、決算を調製し、合併市町村の監査委員の審査に付した上で合併市町村長に報告し、公表しなければならない。合併市町村長は、これを議会に報告しなければならない。

3. 財源措置
合併市町村は、合併特例区の運営に必要な予算上の措置をするものとする。(合併特例区には、課税権、起債権がない。)

(6)財産及び公の施設

2. 公の施設
  ・ 合併特例区は、規約に定める公の施設を設置することができる。
  ・ 合併特例区は、公の施設の利用につき使用料を徴収することができる。

 2. 財産の処分等の制限
合併特例区は、合併市町村の条例で定める財産を取得又は処分しようとするときは、合併市町村の議会の議決を経て、合併市町村長の承認を受けなければならない。

(7)監査及び報告等

1. 監査
合併市町村の監査委員は、毎会計年度少なくとも1回以上期日を定めて監査する。

2. 報告等
合併市町村長は、必要があるときは、合併特例区に事務の報告をさせ、書類及び帳簿を提出させ及び実地について事務を視察することができる。

3. 住民監査請求
合併特例区の区域内に住所を有する者は、地方自治法上の住民監査請求をすることができる。

(8)解散

合併特例区は、設置期間の満了等によって解散する。

(9)住居表示の特例

住所の表示に合併特例区の名称(「区」のほか「町」、「村」も可。)を冠する。
   

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