世界の潮流とNGOの動き 第3回
ODA(政府開発援助)の第3のルート・NGO〜何故、日本はかくもNGO比率が異常に低いのか
長坂寿久(正会員・拓殖大学国際開発学部教授)

1.はじめに
開発途上国へのODAの供与形態は、日本ではこれまで「二国間」援助と「多国間」援助とに実質的に限定されてきた。前者は相手国政府からの要請に基づき直接当該国政府に資金を供与するもので、後者は世界銀行、アジア開発銀行、国連開発計画(UNDP)などの国際機関に供与し、これら国際機関を通じて行う援助である。
この二つの援助形態に次ぐ、第3の援助形態として、NGO(非政府組織)経由の援助形態が1990年代に注目を浴び、次第に定着してきている。この第3のルートは、NGOが行う途上国のコミュニティ開発や有意義なきめ細かい小規模プロジェクトに対してODAが供与されるものである。このルートのODAは、実はその国の人々と直接的なネットワークを造りながら実施されるという点で、まさに「顔が見える」援助となっている。
ODA資金を自国のNGO経由で供与していくやり方が制度化されるようになったのは、1960年代央頃からである。1965年にオランダが「コファイナンシング(協調融資)制度」として開始したのが恐らく世界で始めてかもしれない。オーストラリアも1965/66年度(7〜6月)からODAをオーストラリアのNGOへ供与することを始めている(注1)。カナダも1965年にNGOへの資金供与を初めて行っているが、オランダのように「コファイナンシング制度」としてプログラム化したのは1968年からである(注2)。そして、米国もクリントン政権時代にODAの40%をNGOがかかわるプロジェクトに供与していく旨発表した。現在では、ほとんどの先進国がNGOへ一定のODA資金の供与を行う予算体系を導入するようになっている。では、日本はどうなっているのだろうか。
  

▲ページトップへ
2、各国のODAの対NGO向け比率
第1表は、DAC(経済協力開発機構開発援助委員会)主要国における、@ODAの対GNI(国民総所得)比率(%)、AODAに占めるNGO向け供与比率(%)、そしてB一人当たりODA額(2000年価額、ドル)を示している。いずれもは2000/2001年平均のデータである。
これによると、スウェーデン、ベルギー、カナダ、ノルウェー、オランダ、スペイン、スイス、オーストリア、デンマーク、フィンランド、イタリアなど、多くの国でODAの中から一定比率がNGOへ供与されていることが分かる。逆に言えば、0.7%のフランスと1.7%の日本は例外的に少ない。
しかし、このDAC統計では、ODAのNGO向け比率は、多くの国でせいぜい10%前後であるが、実際はもっと大きいのである。ちなみに、DAC文書にも、オランダは「全ODAの約20%がNGOへ供与されており、オランダの開発援助プログラムの実施にはNGOがおおいに活躍しているのが特徴」と記述されている(注3)。
DAC資料で、同じ国でもODAのNGO比率の違いがあるのは、統計の取り方の違いによるのだが、第1表の統計は、NGO向け配賦を予算項目として掲示してあるもの(以下ではこれを「NGOプログラム」と呼ぶ)を対象としていると思われる。オランダではODA予算の10%が自動的に5つのNGOに配賦される予算形態となっており、第1表の10.3%はそれに対応しているといえる。その他のODA予算は、貧困対策、医療対策、緊急支援など目的別に計上されている。そうした項目別予算はプロジェクト・ベースで実施されることが多いため、プロジェクトに応じて特定のNGOに委託されるケースがある。20%はそうしたNGOへ委託されたプロジェクト分を含んだものといえよう。
また、米国については、1995年に社会開発世界サミットが開催された時、ゴア副大統領(当時)が「新パートナーシップ・イニシアティブ」を提唱した。米国際開発庁(USAID)のODA供与を、政府間のものに重点を置く従来のやり方から、NGOを通じたものに重点を移行させようとしたもので、目標としてUSAID供与のODAのうち40%をNGOに扱わせようというものであった。この達成状況について、筆者がUSAIDにヒアリングした際(2002年春)、すでに38%程がそのようになっていると担当者は述べていた。
オーストラリアもAusAID(オーストラリア国際開発庁)への筆者のヒアリングでは(2003年春)、1990年代は約10%であったが、近年は7%ほどに低下していると述べていた。第1表ではオーストラリアは4.4%となっており、その差はプロジェクト・ベース事業によるものであろう。
カナダは、CIDA(カナダ国際開発庁)という援助機関が1968年からODA予算をNGOに流し、NGOと協働して開発協力を行っていく仕組み(協調融資制度)をつくってきたことで知られる。昔はNGO比率はもっと高かったが(1980年代にはカナダのODAの50%がNGO向けとなっていたと報告されている。注2)、近年はかなり低下してきてしまい、第1表では10.3%となっている。しかし、これもDAC文書では15%程と記されている(注4)。この差が恐らくNGOプログラムの他に、プロジェクト・ベースでNGOへ配賦されるものがあることを示していると思われる。
これに対し、日本はDAC統計では1.7%となっているが、日本政府の発表では依然1%未満である。フランスと並んで、日本は先進国の中でも異常に少ない状況にある。
  
第1表: DAC主要国のODAとNGO比率(2000/2001年平均)
  ODA/GNI比率 NGO/ODA比率 ODA/1人(ドル)
オーストラリア 0.26 4.4 50
オーストリア 0.29 8.5 59
ベルギー 0.34 12.6 83
カナダ 0.24 10.3 54
デンマーク 1.07 7.9 309
フィンランド 0.32 7.7 73
フランス 0.38 0.7 71
ドイツ 0.30 6.9 61
イタリア 0.19 7.3 26
日 本 0.28 1.7 97
オランダ 0.86 10.3 196
ノルウェー 0.82 10.5 290
スペイン 0.27 9.6 36
スウェーデン 0.80 15.2 205
スイス 0.34 9.4 124
英 国 0.33 5.9 78
米 国 0.11 38
DAC合計(平均) 0.24 4.7 63

出所:OECD(経済協力開発機構)−DAC統計から筆者作成

なお、ODAの国際的合意(国連決議)は、対GNP(国民総生産)比0.7%である。第1表のように、多くの国がこれを達成していない。   

▲ページトップへ
3、日本のODAとNGO
日本のODAとNGOとの関係はどのようになっているのだろうか。
日本のODA予算額は、2002年度は9,106億円、2003年度は前年度比5.8%減の8,578億円である。日本政府も、公式には「国民参加型援助」の推進が重要として、国民参加型援助の中心をなすものとしてNGOとのパートナーシップの強化を強調している(但し、新しいODA大綱では、NGOの位置づけは必ずしも明確に打ち出されていない)。
日本の政府(ODA)とNGOとの関係は、現在次ぎのとおりである。
日本のODA予算が、日本のNGOの国際協力活動を支援する事業を最初に導入したのは1989年度で、「NGO事業補助金」「草の根無償資金協力」として計上された。1997年度に政府とNGOとの相互理解を深める事業として、NGO関係者とODA関係者が共同で援助活動を評価する「外務省・NGO共同評価」事業が導入された。1999年度には、NGOの組織強化・育成を図るための事業として「NGO活動環境整備支援事業」の名称で、「NGO相談員」「NGO研究会」「NGO専門調査員」制度が導入された。2000年度には緊急人道支援活動を強化するため、政府・NGO・経済界との連携・協力システムとして「ジャパン・プラットフォーム」(JPF、後述)が設立された。
そして、2002年度には、これらのうち草の根無償資金協力と緊急人道支援(NGO緊急活動支援無償)を整理・統合して、「日本NGO支援無償資金協力」と従来のJICA(国際協力機構)委託事業のうち開発パートナー事業や小規模パートナー事業などを整理・統合して「草の根技術協力」事業が創設された。それ以外には、1996年から「NGO・外務省定期協議会」、1998年から「NGO・JICA協議会」、2001年から「NGO・JBIC(国際開発銀行)協議会」、2002年から「ODA大使館」などの対話の場も設定されてきている。
ODA予算が削減されている中で、これらNGO向け事業予算は増額している。「日本NGO支援無償」は2002年度の20億円から2003年度は22億円へ、「草の根・人間の安全保障無償」は同100億円から150億円へ、「援助活動支援等」の中のNGOとの連携事業は同3億4300万円から3億5400万円へ、といった具合である。
  
▲ページトップへ
4、政府とNGOの協働へ向けて
(1)政府とNGOの協働の意義
1992年のリオデジャネイロでの国連環境開発会議(地球サミット)で、政府とNGOは対等な「パートナーシップ」という新たな関係が決議され、NGOの意思決定過程への参加が不可欠であるということで合意した。こうして今や、NGOは国家と国際社会における正式な参加者とみなされることになった。
政府とNGOとの協働を促進することの意義として多くの理由があげられている。
(1) 途上国にとって新しい開発協力のニーズは、教育や医療・保健などの社会開発に向か
っている。NGOの開発協力の特質はまさに社会開発・人間開発にあり、NGOの協力を仰ぐことは、今後のODA政策上、また途上国のニーズからも重要なこととなっている。
(2) NGOは開発途上国の人々のエンパワーメント(能力向上)を目指しており、しかし、
途上国の人々との人的ネットワークによって活動を行っている。その点で、住民の生活と直接係わる保健・医療、教育などの社会分野の開発援助には、NGOとの連携を欠いては効果的に行えないことが多い。
(3)NGOは機動性に富み、活動が柔軟で、きめ細かな活動、人と人との絆を強くする。そのため、コミュニティの小回りのきく重要なプロジェクトにNGOはとくに有効である。そのためこれをODAとして支援すると、いわば「顔の見える」援助となりうる。
(4)NGOは、政府ができない活動を完全に肩代わりするようになっている。例えば中東の占領地域での活動、アパルトヘイト時代の南アやピノチェット政権時のチリなど、政府が行うことは政策的に難しいが、NGOならば民間として活動ができるからであった。別の言い方をすれば、NGOは国家間の開発協力(援助)とは違う、もう一つの(オルタナティブな)独自の役割をもっている。NGOは、政府が行えない重要な社会的機能の多くを充足し、貧しい開発途上国の民主主義的経験や理解において重要な役割を果している。
(5)世界経済の不況などを通して、援助疲れが起き、ODAの量的拡大が困難になってきている。そこで、より低コストでより効果的かつ質の高い援助の実施を考えなければならない。NGOはその際のもっとも有効なパートナーである。
(6)NGOを経由する方が、政府を通じる場合に往々にしてみられる汚職、腐敗を避けることができ、政治的立場から離れた活動が可能である。また、NGOは実施すると援助の成果を的確につかめ、援助を受けるべき人が恩恵を受ける確率が高くなる。
(7)政府にとってはNGOへの委託によって行政コストや労力を省くことができる。
(8)政府がODAを通してNGOを支援することは、日本にとってはNPO(NGO)セクターの育成に繋がる。
  
▲ページトップへ
(2)日本のNGOと政府の問題点
ところで、先にフランスと日本は例外的にODAのNGO比率が小さいことを指摘したが、その理由は次ぎのように説明できるかもしれない。フランスは欧州の中でも、社会構造的に政府と労働組合(やNGO)は協調的ではなく対峙している形態をとっており、NGO比率の少なさはフランス社会の特質をまさに示していると思われる。
では、日本はどうか。日本は明治の建国以来、「皆のこと」を意味する「public」を「公共」と訳して、これは政府の役割であって、市民は関与しなくてよいという法体系(民法等)によって社会を形作ってきた。そのために皆(市民)が「公共」のことに参加するNGO(NPO)セクターは未成熟のままであった。しかし、グローバリゼーションに対応するためにも、日本はNPOセクターが未成熟の故に改革が進まず、そこで98年末のNPO法の成立等によって、NPOセクターの育成を図っていくことになった。つまり、今後、このODAに占めるNGO向け比率の上昇の行方は、日本のNPOセクターの形成の状況を示す重要なメルクマールの一つとなるのに違いない。
JICAのNGO調査報告書によると(注6)、日本のNGOは「活動資金が確保できない」「会員数、事業参加者層が拡大しない」「人材、技術が十分でない」「活動時間が確保できない」といった問題を抱えている。他方NGOは、政府との協働の問題点・改善への要望事項として、以下の点を指摘している。
(1)申請手続きや清算が複雑である。手続きを処理するスタッフがおらず、時間が不足している。とくに支援申請に伴う煩雑な事務手続きは大きな壁となっている。
(2)ODA予算をもらうと、申請時の計画に沿って事業を進めていくことを求められる。現場の状況に応じて活動内容を変えていくというNGOのスタイルに合わない。NGOの特色は柔軟性にあるはずである。人的交流を活動の柱としている場合、成果が形に残ることがなく、支援制度を受けられない。支援を受けようと思えば、必然的に形に残るものを援助国に送るようになってしまう。つまり、NGOへのODA予算の供与は単年度方式では問題である。NGO活動の性格からして、もっと長いスパンでプロジェクトを見守る姿勢が政府には求められる。
(3)NGOの柔軟性を生かすためにも、事業計画の事前チェックより、事後チェックを重視して評価する方法を導入し、現場における自由度を確保すべきである。
(4)NGOの国内活動や事務所経費への支援をもっと拡大すべきである。NGOの運営には、事務所の家賃や人件費など間接費がかかり、その負担がNGOのネックになっており、NGOが能力を十分発揮できないでいる要因となっている。
(5)開発教育など、国内で行われる国際協力活動への支援がきわめて不十分である。
(6)ODAなど政府の補助金は信用ある比較的大きなNGOに供与されている。小さいNGOを支援していく仕組みがもっと必要である。
(7)政府側の担当者は2〜3年で交替する。担当者が代わるとそれまでの信頼関係や共通の認識が振り出しに戻ってしまう。
他方、NGO側の問題点として、次のような点が指摘されている。
(1)NGOは資金を求める時のみコンタクトし、事後報告が不十分となっているケースが多い。NGOの人材不足のせいもあるが、事後報告(情報開示)こそがNGOの特質であるはずである。
(2)NGOは組織であり、単なるボランティアではない。NGOの社会的位置づけが大きくなるに従い、またODAを含め政府からの補助金が拡大していくに従い、NGOは組織としての営業力、交渉力を持たなければいけない。
   
▲ページトップへ
(3)政府とNGOの信頼関係の構築
オランダは政府とNGOとの信頼関係が確立されている国であるが、これは一朝一夕にできあがったわけではない。NGOがオランダ政府の外交政策と衝突するかもしれない活動を行ったり、その恐れがある場合は、NGOは政府に情報提供する責任をもつ。その場合は政府とNGOは、プロジェクトの内容について積極的に議論し、内容によっては当該プロジェクトには補助金が供与されないこともあった。
しかし、こうした話し合いの経過を通じて、政府もNGOの役割を認識し、国交のない国、人権問題国だからといってODAを使わせないということではなく、プロジェクトによっては意味のあるものがあることを認識するようになり、外交政策上の衝突はほとんどなくなっていった、という。
NGOに対する政府の評価は、「政府は南の被援助国のNGOと直接的なネットワークはないが、NGOにはそうしたネットワークがある。また、多くの南のNGOプロジェクトは先進国政府から直接援助を受け取ることができない。彼らは運営能力が不足し、経理的能力も不足し、ネットワークも十分でない。オランダの協調融資NGOは、これらを直接支援することができている」としている。
ちなみに、オランダ政府がNGOへのODA資金の供与に当たり、当初は政府は各NGOが行う個別プロジェクトごとに申請に基づき個別承認を行っていた。NGOに対して各プロジェクトごとの個別承認を必要とすることを止めたのは、開始(1965年)から15年後の1980年であった。以後、事後報告でよいことになった。本当の信頼関係の構築に、オランダですら15年かかったということであろう。
日本の場合、信頼関係の構築にはまず、政府側のスタッフが2〜3年で移動せずもう少し長期化する、あるいはNGO専門官の導入を図るなどの、組織的な改革から取り組む必要があるだろう。
▲ページトップへ
(4)NGOの補助金への依存と政府との緊張関係
NGOがODA資金への依存を高めると、NGOの自立性や独自性は脅かされるのだろうか。この点について、カナダで大いに議論されていることが報告されている(注2)。「現在のカナダのNGOのCIDA資金への依存率は40〜45%であり、中には80%を超える団体もある」状況であるという。
カナダでは、1983年からはCIDAは政府間ODAにNGOを利用しようと考えるようになる。NGO側からの提案によるプロジェクトよりも、政府側からの提案によるプロジェクトにNGOを利用する姿勢へ変化した時期があった。NGOの優先順位ではなく、政府(CIDA)の政策の優先順位にNGOを合わせようとするようになったのである。
政府政策とNGOの目的との関係と摩擦は、カナダをはじめ他の国々で多くの議論を呼んでいるが、オランダではほとんど議論の対象となってこなかった。これは政府とNGOの間の信頼関係が長い間の協調融資プログラムの経験などを通して確立されてきたからであろう。ちなみに、オランダで1989〜95年の間に、政府補助金を使ったNGOの活動プロジェクトで、政府が拒否したケースは、開発教育プロジェクトで3件あっただけという。もちろん政府資金を求めないNGOもあるし、政府方針と合わないプロジェクトについては独自の資金で実施しているNGOもある。
NGOの自主性がどこまで尊重されるのか、政府の政策意向にNGOが利用されるという形に実質的になってしまいかねないという問題は、確かに現実の恐れとしてある。
米国政府がODAの40%をNGO経由とする方針を打ち出したが、これも実質的には政府政策にとってのODAの有効化のためにNGOを使うという方向のものであったとみられている。USAIDからODA資金を受ける方法は、原則としては2つある。USAIDがプロジェクト案を明示する場合と、NGOがプロジェクト案を提示する場合である。後者はNGOが自発的にプロジェクト案をUSAIDに話し、USAIDが乗り気になればNGOが正式に提案書を作成して提出する。しかし、通常の場合はUSAIDの案を受け入れる形をとるのがほとんどだという。つまり、USAIDの各国の支部が関心優先事項を年次プログラム説明書として明示し、それに対して関心あるNGOがプロポーザルを出すという形となってしまっているのが実態といわれる。
しかし、税金も国民のお金である。政府からお金をもらっても、NGOが自分の目標に沿って、自分のやるべき活動ができれば、そのNGOは政府から自立しているといえる。オランダのNGOたちはどこもそう言っている。オランダでは、どのNGOも政府から多額のお金をもらいながら、しかも実質的に職員の給与もその政府補助金から出ている場合もあるが、自主的に運営していると、どのNGOも答えている。
重要なことは、お金が政府からかどうか(これは国民からの税金である)ということよりも、各プロジェクトにおいてNGOが自らの目的をどれだけ達成し得たかという点を問題にすべきだということである。
  
▲ページトップへ
5、まとめとして
開発協力をNGOと協働して行おうとする動きは、先進国政府(ODA)においてのみならず、国際機関でもみられる。世界銀行(世銀)は1990年代後半に、重債務国(HIPCs)対策の一つとして導入したPRSP(貧困削減戦略ペーパー)では、各国は開発計画をNGOの参画を得て作り上げるよう指導した。世銀は国家が代表権をもつため、NGOを参画させるかどうかは各国政府次第とならざるを得ないが、世銀は世銀内にNGO室を設置(但し数人のスタッフ)すると共に、各部局に「NGOスペシャリスト」を採用・配置し、NGO的視野を入れた事業活動の展開を本格的に図ろうとして試みている。また、アジア開発銀行などもNGOスペシャリストを積極的に採用を図ってきた。
日本において、今後、ODAのNGOへの資金供与比率を高めていくことは、日本のODAを効率的かつ、途上国のニーズにより対応する形で実施するために必要となっている。そして、同時に日本にNGO(NPO)セクターの構築を図るためにも重要なこととなっている。
そのためには、まず以下のような政策・目標の構築と認識が求められよう。
(1)ODA政策にNGOを明確に位置づける――1999年発表の「中期政策」では、NGOへの支援・連携の姿勢が打ち出されていたが、新ODA大綱ではNGOに対し特段の位置づけをしていない。新大綱では、NGOは「国連諸機関、国際開発金融機関、その他の援助国、NGO、民間企業などとの連携を進める」「国内のNGO、大学、地方公共団体、経済団体、労働団体などの関係者がODAに参加し・・・連携を強化する」と2カ所で、他の機関と並列して登場するだけである。日本政府の姿勢は、NGOの力と必要性を認識することからはまだ程遠いようである。
新指針では、まず「政府とNGOとの関係は、代替的なものではなく、補完的なものである。政府とNGOの関係は、対等なパートナーシップが前提となる」という認識を明確にした上で、途上国のニーズに対応した援助の実施のために、ODAとの効果的・効率的かつ戦略的(顔が見える援助)協働関係の構築について明確に位置づけることが重要。
(2)ODAの対NGO向け予算比率を徐々に拡大し、目標値を設定する――例えば、目標は3年以内に5%、7年以内に10%をメドとするなど。その仕組みとして、協調融資制度や、NGO職員の派遣経費補助(給与補填を含め)、国内で活動するNGO・NPO向けの支援・育成事業の拡大(開発教育など国内事業へも支援を図る。ODA予算のNGOの管理費支出の認可と拡大を図る)などの措置が求められる。
(3)ODA予算の継続年度化をさらに促進する――草の根技術協力事業は3年度間の継続事業とし、単年度内での予算消化を方式でなくしたことは大きな前進である。今後はさらに5年度継続事業へ延長したプロジェクトを導入していく。
(4)NGO専門官の導入と人材育成・人材交流を図る――外務省、JICA、JBIC等のODA機関や、主要な在外公館に、NGOスペシャリスト(専門官)を採用・配置する。また、NGOスペシャリストを部内に育成する。また、NGOとODA関係機関との人材・人事交流を行う。ハイレベルのNGO担当補佐官を設置し、かつ権限をもたせる。
(5)NGO評価システムを導入する――人々がNGOへ安心して寄付や協力ができるよう、またNGOが責任をもって事業遂行するよう、第3者(機関)によるNGOの評価と、開発協力プロジシェクトの評価を行う。とくに事後評価を重視する。また、NGOは情報公開をはじめ、アカウンタビリティを高める。

注1:Laurie Zlvetz,ed.『Doing Good〜The Australian NGO Community』Allen & Unwin,1991
注2:高柳彰夫著『カナダのNGO』(p.125)明石書店、2001年
 注3:OECD−DAC:The Netherlands: Development Cooperation Review Main Findings and Recommendations, 2002
注4:OECD−DAC:Canada. DAC Peer Review: Main Findings and Recommendation,2002
 注5:オランダのNPOセクターについては、『季刊国際貿易と投資』財団法人国際貿易投資研究所発行 2003年秋号 長坂寿久「オランダのNPOセクター」、および長坂寿久著『オランダモデル』日本経済新聞社、2000年参照。
 注6:国際協力事業団 国際総合研究所『地域に根ざしたNGOとの連携のために−草の根NGOとJICAとのパートナーシップ構築−』、2003年

▲ページトップへ
 

 



 

 

©2004 NPO Training and Resource Center All Right reserved