協働のデザイン第4回 「合併特例区」とは何か?
世古一穂(代表理事)
 第159回国会に「市町村の合併の特例等に関する法律案」が提出され、平成の大合併がさらに本格化する。
 前回「地域自治組織」を知っていますか? というタイトルで第27次地方制度調査会が答申した「地域自治組織」について述べたが、同法案では法人格を有する地域自治組織を「合併特例区」、法人格を有しないが、区長を置くことができる「地域自治区」の2つの創設が明文化されていることを報告しておく。
  
 法案から特に法人格をもつタイプの合併特例区の概要をみておこう。
 合併後の一定期間(10年以下と国からの文書ではなっている)、合併関係市町村の区域であった区域毎に法人格を有する特別地方公共団体として合併特例区を設けることができることとなっている。合併特例区は住所の表示に合併特例区の名前をかけるので旧市町村のアイデンティティを保つことができるが課税権、起債権はないのが弱いところ。
 合併特例区を設置するには規約を定め、都道府県知事の認可をうけることが必要。先の地方制度調査会でも議論になったところで、私は区長公選制を主張したが答申では公選制は却下され、法案でも区長は公選できないことになっている。また合併特例区でできることは、(1)合併関係市町村において処理されていた事務であって一定期間合併特例区で処理することがその事務の効果的な処理に資するもの、(2)その他合併特例区が処理することが特に必要な事務、とある。具体的には地域の公の施設の管理(集会所、コミュニティセンター等)、地域振興イベント、コミュニティバスの運行、地域に根ざした財産の管理(里山、ブナ林等)があげられているが、ここは各地域で工夫のしどころだろう。
 合併特例区協議会の構成員は、合併特例区内に住所を有する合併市町村の議会議員の被選挙権を有する者のうちから、合併市町村の長が選任することになる。
この協議会の権限は
(1) 予算等の重要事項を定めるときは、合併特例区協議会の同意が必要。
(2) 合併特例区の区域に係る重要事項を実施しようとする場合は、合併特例区協議会の意見を聞かなければならない。
(3) 合併特例区協議会は、地域振興等合併特例区の区域に係る事務に関して合併市町村の長その他の機関に意見を述べることができる。
というものだが、ひらたく言えば地域の意見をとりまとめて行政に反映するしくみ。使い方によっては合併後もその地域の自治を貫ける根拠となる。
 法人格はもてるが、公選の長をおけない、課税権、起債権がないなど骨抜きになった部分はあるとはいえ、合併の方策のひとつの選択肢として、合併特例区をしっかりつくって有機的な対等合併にチャレンジするところが数多くでてくることに期待したい。
また、この法案で気になるところは市町村合併の推進のための方策として、都道府県に大きな役割をもたせていることである。
法案では都道府県の役割として
(1) 都道府県が市町村合併推進審議会の意見を聴いて、市町村の合併の推進に関する構想を策定する。
(2) 都道府県知事は構想に基づいて、
○ 市町村合併調整委員を任命し、合併協議会に係るあっせん、調停をおこなわせることができる。
○ 合併協議会設置の勧告ができる。勧告を受けた市町村長は、合併協議会設置を議会に付議し、議会が否決した場合には住民の1/6以上の有権者の署名か、市町村長が住民投票を請求できる。
○ 合併協議会における市町村の合併の関する協議について勧告することができる。
等としており、都道府県が合併の推進役になることを強く打ち出しているのが特長だ。
国が都道府県の尻をたたいて平成の大合併をすすめるぞという意思のあらわれといえよう。
 都道府県の存在価値、役割が問われるなか、道州制の議論が本格化する一方で、あらたに合併の旗振り役をおおせつかった格好の都道府県。
 本来は市町村と都道府県は自治体として対等の立場であり、都道府県は国の下請け機関ではないはず。地方分権といいながら、実態としての分権は進んでいない。合併に関しても相変わらず、国、都道府県、市町村といった上意下達の構造そのものが変わらなければ合併をいくらすすめても分権化社会には到達しないのではないだろうか。
 最後に、合併特例法の摘要をうけるためには平成17年3月31日までに市町村が議会の議決を経て都道府県に合併の申請を行い、平成18年3月31日までに合併すること、が条件となっており、この1年は各地で合併ラッシュの混乱が続きそうだ。地域の住民の生活、地方自治のあり方、地域の自立あっての合併ではなく、財政的観点からのかけこみ合併になっていくのが問題だ。
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