Vol.50  2008年8月20日号

 地域主体・恊働の里山活動と問題解決の糸口

      遠藤博之(酒々井里山フォーラム事務局 )

 7月5日(土)、平成20年「恊働コーデイネーター養成講座(中級・上級編)」において、市民参加・恊働を目指す、「酒々井里山フォーラム」の活動報告をおこなった。 「酒々井里山フォーラム」は千葉県里山条例に基づく県認定の千葉県印旛郡酒々井町を活動地とする任意団体である。

1.里山の変遷

  酒々井町は谷津と傾斜林に囲まれ、今から24000年前、縄文・弥生時代以前から人が住み続け、つい最近まで自然と人が共棲してきた。今、そこが、機械化農業や輸入木材・石油燃料にたよる生活により、先人が築いた生物多様性、地域循環型社会の里山が見放され、放置された町の周囲の谷津と傾斜林は竹の入り込んだ人が入れないまえに荒廃した状況になっている。

2.町の計画

  酒々井町が掲げる町の将来像「人と自然と文化が奏でる幸せハーモニー酒々井」は自然と共棲して来た先人の生活姿勢を継承することであると解釈される。

  地方分権が云われるようになり、平成11年に策定された「酒々井町都市計画マスタープラン」のランドスケープ、「緑のリング構想」は市民の抱く町のイ メージにもとづくものである。

3.経緯と活動概要

 筆者は「都市計画マスタープラン」が策定された平成11年以降、居住する地域の住民と共に居住地の荒廃した谷津と傾斜林の整備を開始したのが「酒々井里山フォーラム」結成のはじまりであり、平成13年以降7年間の草の根活動により、以前とは見違える景観がよみがえり今では地域の住民の憩いの場となっている。

 当会の活動内容は1.谷津を取巻く傾斜林の整備、2.林業サポート事業(徐伐・植栽・下草刈)、3.休耕地や休耕田の再生利用、4.里山口座・ワークショップ・子供里山教室、4.町や他の団体のイベントへの参画(里山手作り産品の展示販売、パネル展示)などである。

傾斜林の整備                                   植栽(林業サポート)  

休耕田の利用(親子稲刈体験)
 

里山活動の内容を体系的に示すと下図の様になる。

4.ステップアップ計画

 平成19年より、当団体は弥生人の集落跡や酒蔵のある馬橋仙元谷津と傾斜林を第2の拠点として地域の人々と自然の共棲をめざし、住民が主体となって取組む恊働による「地域創造の里山づくり」のための仕掛けづくりを初めた。

 

5.プレゼンテーションに対する受講者のコメント

 この度、筆者は恊働コーデイネーター養成講座 中級・上級編において、恊働コーデイネーター受講生として地域に置ける実践活動の事例報告を行い他の受講生から今後の問題にたいするコメントを受けた。

 プレゼンテーションでは、@地元組織の主体性や自主性に基づく合意形成において、地域に潜む住民間の長年にわたる人間感情の綾が障害になっていること。A内部組織構成員の社会的・公共的活動としての課題に関する関心の欠如。 B行政の縦割り組織、 NPO が公共的活動団体であることについての理解不足 を今後の問題として提示した。

 下記は受講者のコメントに筆者の意見を加味して纏めたものである。

 (1)  組織内のプロジェクトチームだけに頼ることなく、大学ゼミナールとの合同によるプロジェクトチームを編成して、全ての権限と責任を委託することで糸口が開けることも考えられる。

 (2) 取組みの糸口は地域の参加する小さな成功体験や子供と大人の触れ合いによる楽しいイベント(祭り)等を企画することから始めることである。

 (3)これらの行事には他の里山活動団体や課題を共有できる団体との連携、女子大生の参加があれば多くの若者の増加も期待でき、これら若者に里山活動に置ける新鮮な体験を通して新しい価値の発見の場ともなり、若きリーダーの誕生も期待できる。

 (4)また、これらの参加者に谷津や傾斜林の課題等の情報の共有化を期待するものの、 初めての参加者が自然に気づくことが必要であるので、里山活動の意義等を語ることはしない方が良い。

 (5)一方、「里山活動」に参加することの条件付で、地域の休耕地を市民農園として貸出せば、日常における地元と会員の交流を促進することもできるのではないか。

 (6)上記(1)〜(5)の取組みを地道に継続して取組むことにより、若きリーダーも生まれ、関係先の理解も深まり、主題の具現化に向けた動きが生まれてくるのではないか、10年間腰を据えて気長に取組む姿勢が必要である。

 (7)森林整備とは森林の変遷を止め、再生する作業であることでもあり、その季節や適切な施業時期を遅らすことはできないが、組織能力を超えた作業量とならぬよう、むやみに協定面積を増やすことはせず、会の固定人員で可能な能力を超えることがないよう配慮していく必要もある。

6.受講者からのコメントを受けてやって見ようと思ったこと

 プロセスを見直し、下記により地域や行政への働きかけを外部から呼びかけることで地域・行政の参画の糸口をつくる。

 @現協定地の隣地地主との「里山活動協定」締結に県「里山条例」担当課の同席を得る。

 A地域の参加する小さな成功体験や子供と大人の触れ合いによる楽しいイベント(祭り)等は「ちば里山センター」と恊働で企画する。(大学への参画呼びかけは「ちば里山センター」もしくは県担当課が行う)

 B千葉県担当課からイベントへの町担当課の参画を呼びかける。

 C行政・参加団体による「ふりかえり会議」を開催し恊働による当プロジェクト取組みについて合意形成を計る。


 



 

 

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