Vol.44 2007年11月14日号

NGO的映画の楽しみ方  第3回 --『 ブラッド・ダイヤモンド』
                      (エドムーズ・ズウィック 監督、2006年)
                    

長坂寿久(拓殖大学国際学部教授)

キーワード・・・NGO・NPO、ダイヤモンド、グローバル・ウィットネス、
         アムネスティ・インターナショナル、キンバリー・プロセス、木材、
         子ども兵士・少年兵、内戦・内紛、ロード・オブ・ザ・ウォー

『 ブラッド・ダイヤモンド』 (エドムーズ・ズウィック 監督、2006年)

1.「グローバル・ウィットネス」訪問

 2000 年の春、筆者はロンドン郊外にある「グローバル・ウィットネス」というNGOを訪問した。坂を上ったところにある 4 階建てビルの最上階に事務所はあった。不法伐採の木材がアフリカやアジアでの紛争の資金源となっている。このNGOは、そのことを告発しており、それに関するインタビューを行うことが訪問の目的であった。

 しかし、応対してくれたスタッフは、木材のことよりもさらに熱く、ダイヤモンドの問題について語ってくれた。今まさにアフリカの「紛争ダイヤモンド」 (Conflict Diamond) の告発キャンペーンを開始しており、その中でとくにダイヤモンド業界大手のデビアス社をターゲットとして運動していることを教えてくれた。勢い、インタビュー時間の多くは、木材問題よりもこのダイヤモンド問題に費やされることになった。現地に調査に行っていたという彼の話は熱のこもるものであり、深く心を揺り動かされた。この訪問で、紛争ダイヤモンド告発キャンペーンを初めて知ることができ、大きな収穫を得た。

 その時の話で最も印象に残っているのは、冷戦時代が終わった後の構造の変化であった。冷戦期には、政府軍も反政府軍も、米国かソ連のいずれかから無償で武器の供与を受けていた。しかしそれが打ち切られたため、「独力」で武器を獲得する必要が生じた。とくに反政府軍はダイヤモンド鉱山 ( あるいは錫、コルタン、金、木材など ) を制圧して、それを代価として武器商人から武器を購入するようになったのである。

 その後「キンバリー・プロセス」として知られることになるダイヤモンド生産地の認証制度は、このNGOキャンペーンに端を発する。映画『ブラッド・ダイヤモンド』は、まさにこの「グローバル・ウィットネス」のキャンペーンの成功を背景としたものである。そして、映画の中で告発されるダイヤモンド企業のヴァン・デ・カップ社は「デビアス社」がモデルとなっている。

 2005 年には『ロード・オブ・ウォー』(アンドリュー・ニコル監督、ニコラス・ケイジ主演)が制作された。冷戦後、新しい武器商人(死の商人)が登場し、武器取引の代金がまさに「ブラッド・ダイヤモンド」で支払われる場面を見て、「グローバル・ウィットネス」訪問時のことが思い出された。そして、翌 2006 年、紛争ダイヤモンドそのものを正面から扱った『ブラッド・ダイヤモンド』がスクリーンに登場した。世界の映画界の問題意識が、ついに市民社会(NGO)のテーマまで広がったことを実感した。

2.奪われる日常

 アフリカ西海岸にあるシエラレオネ。人口約 500 万人のこの国は、 1991 年から 2002 年まで過酷な内戦状態にあった。「 5 万人以上の人々が殺害され、 200 万人以上の人々が国内難民となり、何千人もの人々が手足を切断され、強姦され、拷問された」(アムネスティ・インターナショナル HP より)。この内戦のため、この国は、男 32.95 歳、女 35.90 歳と、世界で最も短い平均寿命の国( 1995 年)として知られることになった。

 映画は、平和な漁村での、父と息子の笑顔から始まる。医師になりたいという夢を持ちつつ、朝の目覚めのときにはもっと眠っていたいとぐずる息子。それを楽しそうにからかう父。漁船をあやつる姿。平凡でかけがえのない「今」、未来に続いている「今」が穏やかに描かれる。その笑顔を、喚声を載せたトラックが破る。反政府軍 ( ゲリラ側、 RUF) が「人狩り」にやってきたのである。ゲリラ軍の少年兵たちが村人に向かって無差別に銃を撃ち続ける。村人は逃げまどうことしかできない。捕まった子どもたちは子ども兵士として拉致され、大人の男たちは手や足を斧で切断される。体力がありそうな者は切断を免れるが、それはダイヤモンド鉱山で強制労働をさせるためである。

 手足を切断すると農作物の生産・収穫ができなくなり、食糧を反政府軍 (RUF) に頼らざるをえなくなる。また政府軍側も食糧調達の道を断たれ、国全体が飢餓のために不安定化する。 RUF はそれを狙っているのだという解説を聞いたことがある。

 このようにして、漁師ソロモン・バンディ ( ジャイモ・フンスー ) はゲリラ側が制圧しているダイヤモンド鉱山に連れていかれ、最愛の息子は兵士としてゲリラ基地に連れていかれる。

 舞台は変わって、ヨーロッパで行なわれている会議の場面になる。出席者が「『人権団体』によれば・・・、アフリカの紛争国で採掘されたダイヤモンドが武器を調達するための資金源となっている」と告発があったために会議を開催しているのだと説明してくれる。消費に大きな影響を与える恐れがあるため、ダイヤモンド業界がその対応のための話し合いをしているのである。恐らく後述する「キンバリー・プロセス」へ向かう最初の関係者会議を想定していると思われる。この会議の席では、ヴァン・デ・カップ社は紛争ダイヤモンドを阻止するために努力しているヒーローとして、拍手を受けている。

 会議出席者は、「グローバル・ウィットネス (Global Witness) が・・」と固有名詞で語っているが、日本語字幕では「人権団体によれば・・・・」と訳されている。 字幕作成上の制約は理解しつつも、いささか気になるところである。

3.アフリカの現実

 主役のレオナルド・ディカプリオは、ローデシア生まれの傭兵あがり、今はダイヤモンド密輸人の一匹狼であるダニー・アーチャーとして登場する。RUFによる両手の切断を免れてダイヤモンド鉱山で強制労働をさせられる漁師ソロモンは巨大で超高価なピンクダイヤモンドを見つけて鉱山の近くに隠した後、政府軍との戦闘で捕虜になり、街の牢屋に収容される。彼が巨大なピンクダイヤモンドを隠していることを知ったアーチャーは、このピンクダイヤモンドで儲けることをたくらみ、少年兵として拉致された息子を捜すことを引き換え条件にして、RUFの基地となっているダイヤモンド鉱山に案内させる。そしてピンクダイヤモンドと子どもを取り戻してセスナ機で脱出を図ろうとするが・・・・。

 とてもよくできた映画だと思う。アクション映画であるし、監督自身もエンターティメント映画であると言っている。しかも主役はディカプリオである。多くの人が見ることになる映画で、紛争ダイヤモンドの問題をとりあげた意義は大きい。啓発的な内容をも含む現代性と社会性を背景にしていることで、映画の迫力が一層増している。内紛の凄まじさと悲惨さ、難民、貧困、少年兵、家族の破壊、教育問題、汚職・腐敗、そして先進国の欺瞞、メディア、企業、そして私たち消費者の欺瞞と欲望をも正面から描く。この映画の魅力は、すべて事実をベースとしていることにあるだろう。

 子ども兵士の訓練は過酷である。まず人形を撃つ訓練をし、次は実際に目隠しして捕虜を射殺させる。隊長に従わせるために欲しいものを与え、入れ墨をし、タバコや麻薬を吸わせる。やがて村を襲撃しての殺戮にためらいがなくなり、手足の切断を笑って囃したてるようになり、親に再会しても敵だと叫んで銃を発射できる殺人兵器へと「育って」いく。

 アーチャーは、女性ジャーナリストのマディーに対して、「君のような女がダイヤを買うからだ。大きな結婚指輪を夢見ているのはアメリカ人の女だ。君は内紛の悲惨さを報道しているかもしれないが、君の雑誌にはダイヤの大きな広告が掲載されているじゃないか」「需要があるから供給する。俺はその中の一つに関わっているだけだ」とうそぶく。

 国際機関も登場する。 UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)と WFP (世界食糧計画)、そして赤十字。 UNHCR は内戦による行方不明者のリストを作っている。WFPは難民たちに食糧を供給している。また、子ども兵士を取り戻し、収容して社会復帰の教育をしている施設も映し出す。実際的な人道支援の努力が示されるとともに、こういった「対処」だけでは問題の解決にはならないことも、映画を丁寧に見ていれば気づくように作られている。

4.「キンバリー・プロセス認証制度」 (KPCS) へのプロセス

 1990年代半ばから後半にかけて、シエラレオネ、リベリア、アンゴラ、コンゴでは、内戦が最も悲惨に展開されていた。この時期、「紛争ダイヤモンド」は世界のダイヤモンド貿易の 15% も占めていたと推測されている ( アムネスティ )

 紛争地域で産出されたダイヤモンドが合法的なダイヤモンドのサプライチェーン ( 市場 ) に流入するのを防ぐことで、紛争を抑止する効果を生むことができる。このため、採掘から小売段階まで、輸送経路の各ポイントで監視するシステム ( システム・オブ・ワランティ ) を構築する動きが生まれ、 2003 年8月からは「キンバリー・プロセス認証制度」 (Kimberly Process Certification System) が実施されている。ここにいたる経過(プロセス)を辿っておこう。

 1998 年、「グローバル・ウィットネス」が本格的な調査に乗り出した。先進国の人々に幸せを与えるダイヤモンドが、実は「血塗られた ( ブラッド ) ダイヤモンド」であることを告発し、そうした「紛争ダイヤモンド」の根絶を目標に掲げた活動を始めた。

 翌 1999 年、「グローバル・ウィットネス」が中心となり、欧州の 4 つのNGOが協働して「フェイタル・トランザクション」と呼ばれるキャンペーンを開始した。「 10 億ドルのダイヤモンド取引がアフリカの紛争の資金源となるのを阻止するために」が、その理念である。パートナーとなったのは、ドイツの「メディコ・インターナショナル」、オランダの「オランダ南部アフリカ・インスティチュート」、同じくオランダの「ノビブ」である。ノビブはオランダが誇る開発協力NGOで、現在は「オックスファム・インターナショナル」のオランダでの受け皿となっている。その後、NGOとしては、「アムネスティ・インターナショナル」と「パートナーシップ・アフリカ・カナダ」が積極的にキャンペーンに参加していった。

 こうしたNGOキャンペーンが効果を現して ( 『ブラッド・ダイヤモンド』には「グローバル・ウィットネスの告発もあり・・・」という台詞が出てくる ) 、翌 2000 年 5 月に南アフリカのキンバリーで紛争地のダイヤモンド問題を話し合うフォーラムが開催され、ダイヤモンド業界、各国政府、国連、NGOなどが参加した。映画の会議のシーンはこの時を表していると思われる。

 筆者はこの年の2月に「グローバル・ウイットネス」を訪問したわけで、それは、ダイヤモンド業界が参加する最初の会議がキンバリーで開催される 3 カ月前にあたる。インタビューしたスタッフが興奮していたのも当然だったろうと後になって納得したのである。

 さらに、 2000 年 7 月、国連 ( 安全保障理事会 ) は、シエラレオネからのダイヤモンド原石の輸入を禁止する措置を票決した。こうした動きを受けて、業界側である世界ダイヤモンド取引所連盟 (WFDB) と国際ダイヤモンド製造者協会 (IDMA) は、 2000 年 9 月にワールド・ダイヤモンド・カウンシル (WDC) を設立した。 WDC は業界の依頼を受けて、原石がどのようなルートで消費者のもとに届けられるか、貿易経路を追跡・監視するシステムを開発し、その実施も担うことになった。

 2000 年 12 月には、国連総会で「紛争ダイヤモンド」に関する決議が可決され、グローバルな証明システムの導入を含む、ダイヤモンド取引における国際的な法制化への枠組が作られた。そして、 2001 年 2 月に 38 カ国の政府が会合し、ダイヤモンドの認証システムを検討していくことになった。これが「キンバリー・プロセス」と呼ばれるものである。

 その後検討が重ねられ、 2002 年 11 月に「キンバリー・プロセス認証制度」が採択され、 37 カ国が調印を行なった。各国の国内法整備を進める必要があるため、実施は 2003 年 5 月 1 日と決定された。 ( 実際の実施は 03 年 8 月からとなった ) 。

 「キンバリー・プロセス認証制度」とは、採掘から小売までを監視し、紛争地の産出でないことが証明されたもののみを、合法的なマーケットに乗せるシステムであり、具体的には次のような措置が義務づけられている。

 まず、ダイヤモンドの原石が発見 (採掘) されると、政府のダイヤモンド事務所に持ち込まれる。政府当局はそれが紛争地の産出でないことをチェックの上、不正に開封できない容器に密封し、偽造できない政府認証のキンバリー・プロセス証明書を発行する。この証明書には通し番号がつけられている。こうした手続きを経たダイヤモンド原石のみが、輸出を許可される。

 一方、ダイヤモンドの輸入には、キンバリー・プロセスに参加していることが条件となる。非参加国はダイヤモンドを輸入することができない。輸入国の税関では、所定の手続きに従って、証明書と容器が密封されているかどうかがチェックされ、その上で輸入が許可される。こうして輸入されたダイヤモンドが加工・研磨会社に引き取られていくことになるが、所有権が移転するたびに、それが紛争地で産出されたものでないことを保証する宣誓文を記載したインボイス (送り状) を添付する必要がある。保証宣誓文の有無は年次監査を受ける。

 小売業者は販売するダイヤモンドにこの宣誓文があることを確認する義務を負う。但し、購入者に渡す領収書には、この証明 ( 宣誓文 ) は義務づけられていない。しかし、消費者は自分の購入するダイヤモンドが紛争と関係のないところから供給されたものであるかどうかの証明を小売店に求めることができる。こうした正規の手続きに従わなかった場合、荷物は没収、または受取り拒否がされ、法律違反として刑事制裁が課されうる形となっている。

5.キンバリー・プロセスは守られているか

 WDC( ワールド・ダイヤモンド・カウンシル ) のホームページによると、「キンバリー・プロセス」には、現在 71 カ国が参加しており ( 日本ももちろん参加している ) 、世界の 99% 以上のダイヤモンドがこのシステムの認証を受けているという。つまり、 99% は紛争と無関係の地域からの採掘が証明されていることになる。しかし、『ブラッド・ダイヤモンド』は、そのプロセスの成功の記録を描いたものではない。実は、「キンバリー・プロセス」には依然として抜け穴があり、紛争ダイヤモンドは今も市場に流通している。この映画は「ブラッド(血塗られた)ダイヤモンド」が決して過去のものではなく、現在進行形の問題であることを、私たちに鋭く示してくれている。NGOたちは、その抜け穴の実態を告発して、キンバリー・プロセスが完全に有効化するように活動を続けているのである。

 この映画で紹介される密輸ルートでは、シエラレオネで採掘されたダイヤモンド原石を隣国のリベリアに持ち込み、仲買人の手を経て、買収した税関職員に偽造書類を作らせる。このようにして、「リベリア産」のダイヤモンドが、「合法的」に輸出され、ベルギーのアントワープの選別台に上がって取引される。お金に色がついていないように、たとえ血塗られたものであっても、ダイヤモンドは美しく光り輝いている。その後、原石はインドへ渡り、世界中の合法的ダイヤモンドに紛れ込んで研磨され、アメリカ、ヨーロッパ、そして日本に運ばれて装飾され、あるものは指環となり、あるものは豪華なネックレスとなり、またあるものはイヤリングヤブレスレットになってショーウインドウに飾られる。

 ダイヤモンド業界大手のヴァン・デ・カープ社 ( 映画の中の企業 ) は、キンバリー・プロセスという国際条約に署名しているにも関わらず、こうした抜け穴経路を利用して裏取引をしている。アーチャー(ディカプリオ)はその裏ルートに乗って利益を得ており、彼の語る密輸のメカニズムは生々しい迫力をもって、映画を見る者に印象づけられる。

 大手ダイヤモンド企業は、値崩れを恐れてダイヤを買い占め、市場から抜き出して銀行の地下深くに隠す。それが内戦を長引かせる原因ともなっている。ゲリラ側にダイヤをばらまかれては困る。そうした事態は絶対に避けたい。キンバリー・プロセスに同意している理由も、実はそういった企業の利潤追求という動機によるのかもしれないと指摘する専門家もいる。

 現実の世界でもキンバリー・プロセスが守られていないことがしばしば告発されてきた。これまでも、認証制度の信頼性を確保するため、実施・モニタリングに問題のあったコンゴ共和国 ( コンゴブラザビル ) を 2004 年に、コートジボワールを 2005 年に、キンバリー・プロセスから除名している。また、 2006 年には「グローバル・ウィットネス」と「アムネスティ・インターテショナル」はブラジルからの密輸が多いことを告発し、キンバリー・プロセス参加資格を停止すべきだという見解を公表した。この結果、キンバリー・プロセスに参加継続の意向をもつブラジル政府が自主的にダイヤモンド輸出を禁止するなど、積極的な対応を引き出すことに成功した。

 また、コードジボワールの紛争ダイヤモンドがガーナを経由して合法市場に流れてきていることなどについて、上記2NGOは共同報告書を発表し、「ダイヤモンド企業は自ら約束したはずの自主規制の基本的措置を実施しきれていない」と指摘している。

 この映画が現実社会にもたらした影響も小さくない。映画製作を契機として、 2006 年 11 月にはボツワナでキンバリー・プロセスの検討委員会が開催され、キンバリー・プロセス強化のための 46 の勧告を採択するとともに、流通統計の発表、ガーナ経由の密輸問題の検討など、安全対策の強化を発表している。

 99% はフェアなダイヤモンドだという WDC の発表とは裏腹に、依然としてダイヤモンド業界を巻き込んだ「血塗られたダイヤモンド」の密輸は後を断たない。この映画はその現実を背景に作られているのである。

 アーチャー(ディカプリオ)は救出のセスナ機の音を聞きながらも出血多量で命を落とす。彼が救出した親子のみがセスナ機に乗ってロンドンに逃れる。この父親が密輸の実態をロンドンで報告し、告発する場面で、映画は終わる。

6.汚れたダイヤモンド・貴金属を買わないキャンペーン

 先進国の多くの女性たちにとって、恋人や夫から送られるダイヤモンドは変わらぬ愛の証であり、幸せを確認してくれる輝きそのものであろう。しかし、その美しいダイヤは、人の命の犠牲によって今ここにあり、その結果、自分の指に嵌められているものであるかもしれない。この映画を見ると、安易に指環を買うことが怖くもなるだろう。 この映画は傍観者的に観るものではなく、消費者としての自分がアフリカの紛争とつながっていることを自覚し、消費行動を点検して「選択者」に昇華する可能性を持つという点に、最も大きな価値があるだろう。

 アムネスティのホームページでは、今も「紛争ダイヤモンドアクション」のキャンペーンを続けている。 WDC に対して取組み強化を依頼する1クリックアクション(メールアクション)キャンペーンも行なっている。

 また、アムネスティはダイヤモンドを買う時には次の 4 つの質問をすることを提案している。

 @ 紛争ダイヤモンドが含まれているジュエリーが店内には全くないことをどう証明できるか。

 A これらはどこから入手したダイヤモンドか。

 B 紛争ダイヤモンドについての方針のコピーを見せてもらえるか。

 C このダイヤモンドが紛争ダイヤモンドではないことを記述した調達先からの保証書を見せてもらえるか。

  また、ダイヤモンドを含む金や宝石類について、以下のようなNGOキャンペーンもある。血塗られたものであるかどうかだけでなく、児童労働・強制労働、さらには先住者への配慮を欠いた採掘や研磨作業が含まれた宝石を買わないようにするキャンペーンである。

「 No Dirty Gold 」キャンペーン

 米NGOの「アースワークス」と「オックスファム・アメリカ」の協働による宝石業界へのキャンペーン。米国の貴金属・宝石関連企業に対して「責任ある金のための原則 (Golden Rules) 」を発表。消費者には「ダーティ・ゴールド」 ( 破壊的な開発により生産された貴金属 ) を買わないこと、関係企業には「原則」へのコミットメント ( 参加 ) を求めるキャンペーンで、大きな成果を上げた。

 「原則」にコミットした企業は次の11社である。

 Tiffany, Signet, Fortunoff, Cartier, Helzberg Diamonds, Piaget,Van Cleef & Arpels, Zale, TurningPoint, Michaels Jewelers, Fred Meyer Jewelers 。

「責任ある宝飾のための原則」

 2005 年、宝飾関係企業 43 社は「責任ある宝飾のための協議会」というNGOを設立。ダイヤモンド、金などの宝石類が倫理的な責任ある手法で生産されたものであることを保証し、信頼性を高めることを目的とする。 2006 年 3 月に『原則』採択。

〇 2006 年、世界の宝飾品企業 8 社 (Zale,Signet,Tiffany 等 ) は環境・社会に問題のある生産を行なった金を取り扱わないことを誓約。鉱山会社に対してより責任ある方法により金を生産することを呼びかけた。

7.木材問題について

 ところで、グローバル・ウィットネスを訪問するそもそもの目的であった木材問題は、その後アジアでもとりあげられるようになった。 2002 年にはカンボジアがターゲットとなり、以後、毎年のように国際的な注目を浴びている。 2005 年と 2007 年には カンボジア 政府が「グローバル・ウィットネス」の活動家の脅迫・追放を行なったことに抗議して、世界の人権NGOが声明を出すという事件が起こっている。これは同NGOが『 カンボジア のファミリー・ツリー: カンボジア のエリート層による違法伐採と公共資産の強奪』という報告書を発表しことによる。

 木材の不法伐採問題に取り組むことは、資金源を絶ち切って紛争の継続を阻止する力になるとともに、環境を直接的に保護する運動ともなっている。日本は木材消費大国であり、この問題に無関心であることは許されないだろう。

 ●本件の関連として、「アムスネスティ・インターナショナル・ジャパン」、「ワールド・ダイヤモント・カウンシル(WDC)」などのホームページ(日本語)が参考になります。

〇アムネスティ・インターナショナル・ジャパン「紛争ダイヤモンドアクション」

http://www.amnesty.or.jp/modules/wfsection/article.php?articleid=959

〇ワールド・ダイヤモント・カウンシル (WDC)

http://diamondfacts.org/

〇 DIAZ (人造ダイヤモンドの宝飾メーカー)「紛争をなくそうキャンペーン」

http://diaz.jp/?mode=f5


 

 



 

 

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