Vol.40 2007年7月14日号
特別報告 「難民ナウ!の活動と難民映画祭 2007 」                                       宗田勝也(難民ナウ!主宰)

 京都市 内で流れる FM ラジオ局・京都三条ラジオカフェ( FM79.7 、以下ラジオカフェ)は、日本で初めて NPO が運営するコミュニティラジオ局として2003年3月に開局した。

 筆者は、この小さな放送局で国連難民高等弁務官事務所 ( 以下、 UNHCR) の協力を得て、2004年2月から日本初の難民問題専門情報番組「難民ナウ!」を制作している。番組のコンセプトは「難民問題を天気予報のように」である。

 世界で最も深刻な課題の一つでありながら、ともすれば遠いところでの出来事になってしまいがちな難民問題を繰り返し放送することで、誰にとっても天気予報や道路情報のように難民問題が身近なものになることを目的としている。

 番組はインターネットで聴くことができるので関心を持っていただいた方には是非聴いていただきたい。
 http://www.voiceblog.jp/nanmin_now/

 番組をつくるきっかけは、緒方貞子元国連難民高等弁務官の活動を追った、東野真著「緒方貞子 ― 難民支援の現場から」 (2003) との出会いに遡る。

 この本では、緒方氏が常に「命」を優先し、難民支援の難しい局面を切り開いていく様子が本人の回想に沿って綴られている。そして難民問題に「継続的な関心を持つこと」 「メディアの活用」が重要であると強調されている点が特に印象に残った。

 そこから視聴率に拘る必要のないコミュニティラジオなら難民問題というマイナーなテーマをずっと扱い続けることが可能なのではないかと考えたのである。

 早速、ラジオカフェのスタッフに企画を持ち込んだところ「ぜひやりましょう」と背中を押してもらった。企画を評価してもらったことが支えとなり、その勢いで UNHCR 駐日事務所(東京都)に電話をかけた。企画書を見てもよいという話になり、その後「日本でメディアを利用した難民支援というのはこれまでありませんでした。非常にユニークな企画だと思います。ぜひいろいろと相談しながらやっていきましょう」との返答を得た。

 以来、 UNHCR が発表する難民速報をもとに、例えばスーダンで発生した難民数と 京都市内の学生数とを比較するなどして番組を作ってきた。

 毎週土曜日 19 時から 6 分間という短さではあるが、現在では難民の発生状況だけではなく、難民本人や難民支援の現場にいる人々へのインタビューが多くなっている。 UNHCR の職員や国際協力 NGO のスタッフが任地から帰国した当日にインタビューすることもあれば、学生団体の取り組みを紹介することもある。

 2006年6月、 UNHCR と国内外で難民問題に取り組む NGO が「難民支援に面白さ、楽しさのスパイスを加える」ことを目的に J-FUN ( Japan Forum for UNHCR and NGOs )を発足した。アムネスティインターナショナル・ジャパンやジャパン・プラットフォーム、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンなど錚々たる NGO の中で「地域で、メディアで」という活動が評価され、難民ナウ!もメンバーとして参加、活動している。 小さなメディアではあるが、これからも「難民問題を天気予報のように」のコンセプト通り良い意味で「軽い」活動を続けていきたいと考えている。

 難民ナウ!でも特集するが、 UNHCR 駐日事務所が来る 7 月 18 日〜 26 日まで「第2回難民映画祭」を東京で開催する。

 これは、紛争や迫害によって故郷を追われた人々の力強さと創造力を描写し、数多くの映画祭で受賞した映画作品やドキュメンタリー作品計30本を紹介する大規模なもの。

 18日のオープニング作品は、イラクをスンニ派、シーア派、クルド人の視点で描写しサンダンス映画祭監督賞を受賞、さらにアカデミー賞にもノミネートされた『 Iraq in Fragments ( 仮訳:イラクのカケラを集めて ) 』。また26日のクロージング作品として、ルワンダにおいて最も非人道的な状況の中における人間性を描いた『 Shooting Dogs ( 邦題:ルワンダの涙 ) 』が上映される。

 さらに自身も難民であったリティー・パニュ監督の作品や、ホロコーストのなか幾千のユダヤ人難民の生命を救った杉原千畝のドキュメンタリー作品も含まれている。詳しくは下記 URL で。新幹線に乗ってでも出向きたい映画祭である。  http://www.refugeefilm.org/

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