Vol.40 2007年7月14日号

「世界の潮流とNGOの動き 第27回」
新しい世界システムと憲法九条(7)   自民党・公明党だけには投票しない運動をしよう

長坂寿久(拓殖大学国際学部教授)

キーワード・・・ 憲法9条、参議院選挙、「非核」国家、 「核」保有

 今月29日は参議院選挙である。

 九条を失わないためには、これから3年以内に、私たちは日本に市民社会運動を構築しなければならない。3年以内に市民社会セクターをしっかりと構築できなければ、私たちは21世紀の新しい平和運動の理念となる九条を捨てさせられることになる。

 逆にいえば、日本に市民社会セクターを形成するには、これから3年余の憲法改訂阻止運動を通じてのみ可能となるだろとう。

 九条のための運動、日本に市民社会を形成する運動、そのための最初の、しかも最も重要な行動が今回の参議院選挙だ。

 メディアは「安倍自民党大敗」を報じている。与党側はすでに負けムードを喧伝して、同情票の獲得戦術に出ると共に、負けても安倍内閣には責任はないと主張を始めている。

 首相は衆議院によって選ばれるから、参議院の敗北は関係ないというわけである。

 今の衆議院は小泉前首相の巧妙な郵政解散による議席結果となっている。

 しかし、参議院の自民党の敗北によって、安倍首相は国民の支持のない内閣であることが明らかとなるわけだから、衆議院を解散して改めて民意を問うべきであろう。

 衆院議員は憲法改訂に必要な議員の三分の二を超える97%を、憲法改訂に賛成している三党(自民党、公明党、民主党)が占めている。参議院では、自民党が過半数割れをするだけでなく、この三党の合計をいかに限りなく三分の二より小さくし得るだろうか。

 今回の選挙で、 自民党だけには投票しない。

 与党の公明党にも投票しない。

 そして、九条に賛成する民主党の議員には投票しない。

 そうなるとどの党に、誰に投票すべきかは自ずと明らかになる。

 しかし、ともあれ、自民党だけには投票しない運動をしていこう。

 久間章生防衛大臣の「原爆投下は”しょうがない”」の発言があった。この発言で辞任することになったのは当然だが、この発言は、九条を喪失した後に何が起こるのかをまさに気付かせることになった。彼は長崎県出身である。原爆について選挙戦術からも感受性をもっているはずの彼の口からもれた意味は大きい。

 この発言は、日本がもはや昔のような「非核」国家ではないという本音が漏れたということである。

 九条を放棄して目指すのは、最後は「核」保有なのである。このことは最近の政権に近い人々の会話の変わりようから類推はできていたが、それがすでに定着していることの証拠である。

 今月の参議院選挙は、与党にとっては、九条を放棄し、核へ向かっていくための関門の一つであるが、私たちにとっては、1票によって守らねばならない3年後への最初の大きな関門である。

 安倍政権の正体について分析したすばらしい本を読んだ。『安倍政権論〜〜新自由主義から新保守主義へ』渡部治著(旬報社)。7月10日刊の出たばかりの本である。この人の講演を聞きに行って、一層鮮明に理解できた。

 安倍首相の歴史的意味づけを、新自由主義(ネオリベラル)と新保守主義(日本的ネオコン)の歴史的合体としてとらえている。

 新自由主義は、「改革」という名によって、勝ち組・負け組という流行語と共に格差社会をつくり、福祉を切り下げ、教育を破壊してきた。新保守主義は、「憲法改訂」という名によって、軍隊を持ち、軍需産業化をすすめ、そして核保有までの道を切り開いていこうとしている。

渡辺治著『安倍政権論』を選挙までに読んで欲しいと願う。インターネットで注文できる便利な時代を享受しよう。

『安倍政権論〜〜新自由主義から新保守主義へ』渡部治著(旬報社) http://www.junposha.co.jp/guide/1sya/etc/abe.htm


 

 



 

 

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