Vol.40 2007年7月14日号

協働のデザイン  第24回 『協働コーディネーター』出版にあたって

世古一穂(金沢大学大学院教授 / (特非)NPO研修・情報センター 代表理事)

キーワード・・・ 協働コーディネーター、公共哲学、公私二元論、公私公共三元論、「来るべき民主主義」

 今月(7月)に『協働コーディネーター〜参加と協働のデザイン』(世古一穂編著)を、鰍ャょうせいから出版します。

 今回は出版にあたっての考えをまとめてみました。

1.「協働コーディネーター」の社会化、職能化
 本書では「協働コーディネーター」が社会化、職能化される必要性、重要性を理論的に位置付け、各地で「協働コーディネーター」として活躍している人自身にその実践事例を詳述してもらった。

 各人の事例を読むことによって、読者の方々が「協働コーディネーター」の重要性に気付き、その社会化が今後の我が国の市民社会の構築の大きな力になることを感じとり、共感していただけたら幸いだ。

 では、めざすべき参加協働型社会は現在の民主主義との延長上で可能なのだろうか?

 また、小泉前首相以来の民営化路線で可能となるのだろうか?

 私の答えは「否」である。

2.「来るべき民主主義」
 「来るべき民主主義」とはフランスの哲学者ジャック・デリダが晩年に差し出した概念である。

 なにか大きな事件があるたびにその発言が注目され、影響を与えるという大知識人がついこのあいだまではいた。 20世紀を貫いて存在したそのような知識人群のおそらく末尾に位置するフランスの哲学者が亡くなったのは2004年のことだ。

 デリダは「暴力、不平等、排除、飢餓・・・が世界史と人類史のなかでこれほど多くの人間存在に危害を及ぼしたことがない」という現代世界への診断から、現にある民主主義ではない、他者や出来事に無条件に開かれているがゆえに不断に刷新され自己実現することのない民主主義を展望した。

 デリダの読みによって「閉じない」言語そのものの性格に、この閉じることのない民主主義がひそんでいる。

3.公共とは
 また民営化の「民」は「市場」と同義ではない。

 「民」は非市場的なもの

 非営利的なもの、金に換算されない生活の現場、そこに生きる「市民」と解することが重要だ。

 また「協働コーディネーター」の活躍の場は公共圏であり私が提唱しつづけてきたその職能化は公共圏において実現したいと考えているものだ。

 参加協働型社会は市民主権を前提としている。

 市民主権についでは政治学者・松下圭一氏がすでに 1975 年に『市民自治の憲法理論』という本の中で提起している。

 憲法をボトムアップに市民の側から自治を解釈しなおして、そこに「公共の福祉」を生存権 ( 憲法 25 条 ) との関係で見直していこう、との発想だ。

 

 



 

 

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