Vol.37 2007年4月10日号

「協働コーディネーター」養成講座修了者の活躍する現場から シリーズ7 
  協働コーディネーター養成講座の受講者による新しい取り組み

  静岡での「協働推進人づくり塾」開催の経緯と、次の動き

  焼津市 教育委員会社会教育課社会教育担当係長 石原 隆弘 

 特定非営利活動法人NPO研修・情報センターでは「協働コーディネーター」を養成する、「協働コーディネーター」養成講座を開催してきました。その成果として、「協働コーディネーター」として各地のまちづくりの現場で活躍している人が増えてきています。ここでは、「協働コーディネーター」として活躍している人に現場の取組みを紹介してもらい、講座の成果を紹介していきます。
  シリーズ7では、これまでとは違い、講座受講生有志が「これからの協働コーディネーター養成講座の開催まで含めて期待すること」を持ち寄り また、「協働コーディネーターのネットワークの役割と課題」を検討する会を開催し、新しい取り組みが始まっているので、それを報告していただきます。

キーワード   協働を勘違いしている行政職員、TRCと講座受講者との協働、協働の実践としての講座開催

1 講座との出会いと「勘違い行政職員」からの脱却
 私は、2005年7月に初めて特定非営利活動法人 NPO 研修・情報センター(以下「TRC」という)の協働コーディネーター養成講座に参加し、2006年5月までに4回の講座を受講してきました。私がTRCの講座を受講しようとした動機は、「行政とNPOの協働」について、自分の中で、NPOの経済的なところにしかその視点を向けることできず、本当にそれが「協働」なのかという疑問をもちつつも、「自治体の財政状況の悪化に対応する一手段として必要だ」というもので、今になって思うと、「勘違い行政職員」の典型でした。

 しかし、講座への参加を重ねる中で、NPOの本当の役割は経済的な価値の問題ではなく、多様な価値観を生み出し、市民社会の能力・質を高め、より良い市民社会を実現していくことだと気づき、また、そのための「協働コーディネーター」の必要性が理解できてくるにつれ、この講座の重要性を実感してきました。

 講座への参加を機に、地域での社会的な活動(嚥下摂食障害の支援活動、国際教育支援活動)へ参加し実践を積んでいくこともはじめ、またそれと同時に、同じ行政職員の同僚や上司、NPO活動を行っている知人にも、私なりに本当の協働の意味や協働コーディネーターの必要性を訴えはじめたのですが、私の能力不足もあり、なかなか想いを伝えきれない状況でした。

 このような状況を打開するには、私がトレーニングを重ね、実践を積んでいくのはもちろんのこと、それと並行して、自分の地域でTRCの講座を開き、多くの市民・行政職員に体験してもらうことが必要だという考えを強く持つようになっていきました。

▲ページトップへ

2 「協働推進 人づくり塾」の受講とコーディネーターの経験
 そのような想いを持ち始めた昨年10月から12月にかけて、静岡県NPO推進室が主催し、TRCの講座の受講者である富田久恵氏が代表理事を務める浜松のNPO法人アクション・シニア・タンクが企画・運営する「協働推進 人づくり塾」が、TRC代表理事世古一穂氏を講師に迎え静岡県内で3回にわたり集中的に開催されることになり、私も受講生兼運営スタッフとして参加させていただくことになりました。

 講座は、1日型の初級を1回(3会場で行い延べ3回)、2日型の中級を2回(当初は中級1回上級1回で計画されていたが、参加者のレベルがそこまで達せず中級2回に変更された)というものでしたが、それに加え、講座の成果のまとめとして、講座参加者が企画運営するフォーラムを実施することとなっていました。

 フォーラムの企画(プログラム)は、講座受講生がワークショップを行い、いくつかの案を出し、それをコンペで決定するというものでした。フォーラムの企画を決定する過程で、私がパネルディスカッションのコーディネーターを務める機会を得て、去る1月27日に開催した「協働推進 人づくり フォーラム」の中で「協働コーディネーターの必要性と役割〜協働の現場から考える」をテーマにパネルディスカッションを行いました。

 私にとっては、パネルディスカッションのコーディネーター自体が初めての経験であるとともに、協働の現場におけるコーディネートの実績がない中でのコーディネーターという、非常に難しい状況でした。

 進行そのものの課題もありましたが、協働の場面におけるコーディネーターの「存在」の必要性についての討論に終わり、協働コーディネーターの「社会的認知、社会的職能化」の必要性を明確にできなかった点は大きな反省点でありました。

 このように、「協働推進 人づくり塾」にスタッフとして、また、パネルディスカッションのコーディネーターとしてかかわったことで、今後、自分自身が成長し、かつ、地域の市民社会の能力を高めていくために、私も講座の受け手である受講者から、講座にもっと主体的に係わる企画・運営側の立場に立ちたいという想いがでてきました。

▲ページトップへ

3 講座受講者から企画運営側の立場へ
 昨年12月に、TRCでほぼ同じ時期に学び始めた仲間で、ミーティングを持つ機会がありました。当初は懇親会的な集まりを予定していたところ、世古氏のアドバイスにより、自分たちが今後どのようにTRCにかかわれるかを検討する場に変更し、ミーティング場所もTRCの事務所をお借りすることになりました。

 そこでの決定事項はなかったものの、私を含め、何人かがTRCの講座を自分の地元等で開催するためのコーディネーターの役割を担う決意をし、ミーティングの一定の成果としました。

 その後、本メルマガの1月号にて世古氏が『2006年に ( 特非 ) NPO研修・情報センターが自主事業として、また委託事業として各地で実施してきた「協働コーディネーター養成講座」も多くの方の参加があり、大盛況だった。今年はこの路線をさらに充実させ、各地の「協働コーディネーター養成講座」経験者と協働で講座を作っていきたいと考えている。』と述べていますが、私も、頭だけで考える行政職員の悪いところから脱却し、地域に協働の芽を広げるいいチャンスだと捉え、早速それに対しての具体的な検討を始めました。

▲ページトップへ

4 助成金プログラムへの応募と今後の期待
 前述した「協働推進 人づくり塾」は、アクション・シニア・タンクの努力と、県の主催による受講料無料ということもあり、多くの受講者が集まり大盛況でしたが、私の住む町で通常のTRCの協働コーディネーター養成講座を開催した場合、果たして参加者を集めることができるかという不安がありました。

 地域で協働を進めていくことを考えたとき、現段階では、正しい協働の概念や協働コーディネーターの必要性を、より多くの人が理解していくことが重要だと考え、受講者を集めやすい環境を作るために、地元の一部事務組合が行う地域活性化の助成金プログラムに応募することとしました。本来は、一定の自己投資をしても学び体験していくということが必要なのでしょうが、まずは、協働を考え、進めるための裾野の拡大を図ることを、現段階での目標としました。

 幸いにも助成金を受けることができ、本年9月に 静岡県焼津市 で、2日型の「協働コーディネーター養成講座 初級編」を開催しますが、この講座を経て、さらに次のステップとして、東京等での中級、上級講座に進んでいく人材養成が図れることを期待しています。

今のところ私が行ったことは、講座を企画し、助成金の獲得をしただけですが、ここから講座開催、そして次の講座へという一連の取り組みは、協働コーディネーターへのトレーニングとしても有効であると考えるので、過去の講座受講者の中にこのような動きが広まることを期待するとともに、私もTRCと協働による、より良い市民社会の実現に努めていきたいと考えています。

▲ページトップへ

 

 



 

 

©2004 NPO Training and Resource Center All Right reserved