Vol.36 2007年3月12日号

「南」の世界拾い読み 第24回

 このコーナーは、主に南の国々(開発途上国)のメディアやNGO/NPOで流されている情報を中心に独断で選んで、そのサマリーをコメントをつけて紹介していきます。情報の詳細を知りたい場合は、併記のホームページにアクセスしてください。
  今回のテーマはちょうど3月8日が‘国際女性の日'だったので、女性を取り巻く記事を取り上げてみた。 (本田真智子  ( 特非 ) NPO研修・情報センター理事)

1.女性が政治の世界に進出しても、まだ多くの女性は無力だ
LATIN AMERICA :A Few Women in Power, Millions Still Powerless
http://www.ipsnews.net/news.asp?idnews=36829

 BUENOS AIRES (アルゼンチン) アルゼンチンとエルサルバドルの女性大臣の仕事を観察すると、政治の世界で女性が大臣になっても、女性に対する社会進出保証の政策にはつながらない。

 アルゼンチンでは経済大臣に女性が任命された。それは幸運であったが、それがジェンダーに対する考え方を変えるところまでは行かない。財布の中で、女性が重要なポストをえることは大切であるが、それがジェンダーを公平にする政策に結びつくとは限らない。

 これまでも、コロンビア、チリ、ウルグアイには国防大臣に女性が就くということがあった。これらの女性たちは、長年の大変ハードな仕事の結果であると考えられる。彼女たちが相応の地位につくためには、能力を証明しなければならない。

 政府の高官、政治家、裁判官などに女性が進出しても、選挙では多くの候補者がジェンダーの視点から見て、公正な政策を採用するという公約はしない。

 差別撤廃措置規則がないところでは、女性たちは政治の世界でも成果が少ない。アルゼンチンでは24の地方で知事についているものはなく、わずか 4 人が副知事についているだけだ。

 公職にある女性が、女性の地位向上の政策を行うという考えは改める必要がある。なぜなら、彼女たちも彼女たちを指名した政府から独立して政策を行えるとはいえないからだ。

 女性が公職で高い地位に達することは正しい道であるが、社会がジェンダーに対して公正に変化しなければ、多くの女性たちの生活改善や、権利の獲得にはつながらない。

( IPS Inter Press Service News Agency より)

 

2.内戦中のレイプと性暴力にいかに対処するのか
RIGHTS: Rape, Gender Violence the Norm in Post-War Liberia
http://www.ipsnews.net/news.asp?idnews=36833

 UNITED NATIONS  リベリアの14 年に及ぶ内戦の間、残忍な暴動の犠牲者には、レイプと性暴力にあった多くの女性や子供たちが含まれている。また、これらの女性に対する暴力やレイプはまだ未捜査である。

 レイプはリベリアを悩ます重罪のひとつであり、平均週に8件起こるが、報告されない。戦後も引き続き起きている。

 アフリカで初の女性国家元首である Ellen Johnson-Sirleaf は女性に対するレイプと暴力に取り組むことをゆだねられている。

 しかし、国は 14 年の内戦からまだ抜け出せず、政治システムや政府機関及び社会のありかたは、夜を徹して変容し続けている。

 国連平和維持軍の活動は 3 月 31 日に出終了するが、地域的安全保障メカニズムを開発する意味で、少なくとも 1 年間延長するように Action Aid はすすめている。また、国連平和維持軍が女性に対する暴力に取り組む重要な役割を果たすことが出来るという。

 一方、女性による性的暴力は国連の職員によっても行われた。国連は性的暴力をなくすために許容ゼロの政策を採っており、その取り組みは歓迎されている。

( IPS Inter Press Service News Agency より)

 

3.イランでの女性の権利のための活動
RIGHTS-IRAN: Int'l Women's Day Rally Forcibly Dispersed
http://ipsnews.net/news.asp?idnews=36856

 TEHRAN( イラン) 国際女性の日を記念する数百の女性によるデモは、イランの国会議事堂の前で、警察の暴力で排除された。

 日曜には、 2006 年 6 月 12 日に男性と法的平等を要求したデモに参加して逮捕された女性 5 人の裁判が行われていたイラン革命裁判所の外で、 30 人の女性が逮捕された。

 警察はデモで 70 人の女性を逮捕したが、既に釈放されている。

 活動家は「国際社会が主張しなければならないものは核問題ではなく、人権とイランの民主主義である。破壊と戦争ではなく、外交的対話及び平和手段で持って、それを実現していかなければならない」と裁判所前の平和的なデモに参加するように訴えた。

 イランの憲法では、第27条に基づいて、暴力でなければ、デモや集会は自由である。2006年6月12日のデモは、憲法にのっとった権利の行使であると訴えている。

 抗議者は警察や警備員によって攻撃された。私服警官はデモが始まるまでに、集まった人たちを解散させようとした。釈放された 70 人の活動家はいくつか罰則を科せられた。

 ボランティアによる地方でのワークショップで、女の権利に対する意識が広まっていると、活動家は語っている。

 ‘Keyhan' newspaper には、イランの強硬派の論文が載り、フェミニストと女性の権利活動家を非難した。アメリカとオランダはキャンペーンに資金を提供している、アメリカがイスラム共和国の転覆のための位置戦略だと非難している。

 イランの 2 人のノーベル平和賞受賞者が、この女性の権利活動を支持、女性には男性と同じステイタスを得られる権利が与えられる時期であると語った。

( IPS Inter Press Service News Agency より)

 

コメント 女性が社会進出をして、高い地位を得ると、他の女性に対して厳しくなるという傾向があるように思う。高い地位を得た女性たちは大変な努力をし、男性以上に働かなければその地位に行き着くことは出来なかっただろうし、維持し続けるのもハードだから、勢い他の女性たちが自分と同じような努力をしないことに対して許せないのだろう。

 私はそういう気持ちが分からないでもないが、やはり女性が働きやすい、社会活動をしやすい社会をつくるためには、「自分たちと同じように努力しろ! 働け!」だけと要求するのではなく、パワーのある地位を得たことを利用して、ほかの女性が続けるようにしくみを変えることをしてほしいと思うのだ。

 個人が個人として努力していただけでは、結局大きな枠組みはかわらない。これだけ、女性が社会進出していても、冷静に見ればやはり男性に比べて女性のおかれている立場は不利だからだ。

 女性が不利な立場に置かれるということは、次代を担う子供たちにもマイナスに働くということを考えて欲しい。

 また、文化や伝統と女性差別の問題はリンクしているところが多く、解決していく、または共存や寛容の心を涵養していくのはすごく難しいかもしれないが、知恵を持ち、様々な困難を解決してきた人間にとって、真摯に考えればできないことではないと思うのだが、どうだろうか?

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