Vol.33 2006年12月12日号

「南」の世界拾い読み 第24回

 このコーナーは、主に南の国々(開発途上国)のメディアやNGO/NPOで流されている情報を中心に独断で選んで、そのサマリーをコメントをつけて紹介していきます。情報の詳細を知りたい場合は、併記のホームページにアクセスしてください。
  今回のテーマは‘文化・芸術'。音楽や演劇、映画や絵画などはどんな社会になっても人間に必要なものです。多くの人が惹かれる芸術には経済を活性化するということだけでなく、使い方で社会のあり方、子どもたちの心をやわらかくしたり、暴力を排除する力も持っています。 (本田真智子  ( 特非 ) NPO研修・情報センター理事)

1. ミュージシャンとして成功し、アフリカのすばらしさを伝えたい
Zimbabwe : Edene Album On the Cards
http://allafrica.com/stories/200612080960.html

 Harare(ジンバブウェ) ジンバブウェの生まれながら米国テキサスに本拠があるの Kudakwashe Timbe は、 1 月に12曲入りのデビューアルバムを発売する準備ができている。

 20歳で、 R'n'B 、ヒップホップ及びカントリー・ミュージックを専攻する彼女は、初めてのアルバムを発売するために帰国した。彼女は、ジンバブウェとほかのアフリカのよいイメージを描写したかったという。

 Timbe は「私はアフリカの復活の一部でありたい」と語った。「音楽で、アフリカの多様で豊かな文化を持っているかを、音楽を通じて世界に示したい。ジンバブウェの人々が何をつくっているかを示したい」

 彼女の音楽はラジオを通じて、カナダや米国、ニュージーランドなどで聞かれている。

 Timbe は、ジンバブエだけでなく、南部アフリカの全体で最高のミュージシャンになることを当面に目標にしている。

 ( all Africa.com より)

 

2. 文化や創造活動はさまざまな価値を持っている
Creativity Has (Cash) Value
http://ipsnews.net/news.asp?idnews=35562

 Rio de Janeiro (ブラジル)11月21日より、「文化とクリエイティブ経済、持続可能な開発への交換」会議が70カ国以上からの専門家や芸術家、政府委員会を集めて、ブラジルの2都市で始まった。

 新しいクリエイティブに基づいた経済セクターは、ハンドクラフト、芸術的なアウトプット、コンピューター・ソフトウェアのような新技術まで含める。文化は新技術などの普及に役立っている。

 多くの国で経済的にも文化的なグッズやサービスは重要になっており、主要な観光資源や輸出製品になっている。例えば、ジャマイカではレゲエ音楽が経済に重要な役割を担っている。カリブ海の諸国やアフリカでも、文化は重要な役割を果たしている。

 国連は世界の国内生産の7%が文化的なものから生み出されるもので、総計 1 兆 3000 億ドルまでになっているという。

 また、文化活動は社会のあり方にも重要な貢献をしている。例えば、ブラジルの「スラム街」、貧民街の中で芸術的なプロジェクトが緊張と暴力を緩めたという、興味深い経験が示される。

 ( IPS Inter Press Service News Agency より)

 

3. スラムの撤去を追うドキュメンタリー映画
The Yamuna gently weeps
http://www.infochangeindia.org/documentary53.jsp

Delhi (インド) Ruzbeh Bharucha の本及びドキュメンタリー映画「 Yamuna Gently Weeps 」はデリーの Yamuna Pushta スラムの不完全な都市計画によって撤去される話である。

Yamuna Pushta はデリーでもっとも大きく古いイスラムのひとつだ。15万人が暮らし、タウンシップであり、コミュニティである。彼はスラムを訪れ、立ち退きに会う人々の様子をドキュメンタリー映画にして、国際的な映画祭に出品することで、多くの反応を得た。

作者はメインイシューは民主主義ではなく、なぜ私たちは都市の基礎的なところで働き、私たちの生活と楽しみのために働いている人たちが、このような無慈悲な事態に遭遇するのを認めたのか、ということであると語る。

裁判所の無慈悲な決定、環境汚染の原因の汚名を着せられ、スラムの撤去が進められる。スラムを追い立てられた人々は多くの場合行く当てがない。貧困ゆえにそこでしか暮らすことができない人たちにとって、スラムで行われた教育や小さな仕事を得る機会を失ったのだ。

( infochangeindia より)

コメント もう10年くらい前になるが、西アフリカのセネガルを訪問した時。首都ダカール近郊のスラムで、ある芝居を見たことがある。音楽が流れ、笑いが漏れるその芝居はエイズ予防の啓発活動のものだった。どのようにしてエイズに感染するか、理容店のかみそり、性交、注射を使った麻薬の摂取など、いくつかの事例を女性と男性が腰を振り、おどけた表情で演じていた。子供たちが舞台の前に陣取り、その後に大人たちが腰を降ろす。娯楽をしてみながら、学べる。そういえば、映画『ナイロビの蜂』の冒頭にケニア、ナイロビにあるキベラ・スラムで同じようにエイズ予防の劇をしているシーンがあった。

 芸術を通じた社会の課題解決の分かりやすい例だ。

 私たちは西アフリカの泥染め、東アフリカのティンガティンガの絵、カンガーなど、彼らの作るハンドクラフトをお土産として日本に持ち帰ってくる。それにより、地元の経済が潤い、また何人かが世界的に有名なアーティストになっていく。

 また、自国を理解してもらうために、問題を世界に訴えるために、映画や音楽、本や劇などの手法が広く用いられる。文化・芸術は社会に問題を投げかけ、プライドを獲得させ、理解を深める契機になるとともに、収入があればそれにこしたことはない。これから重要になるのは、こういう南の国々の文化や芸術の著作権などの管理だろう。

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