2.NPOにおけるメンタリングのニーズ
多くの人が、仕事で悩みを持ったときや自分の能力に関する悩みを持ったときに、自分の悩みを相談する相手を求める。サラリーマンが居酒屋で話している内容は、多くがこのたぐいの話である。愚痴を言う人と、それを聞く人という構図になっている。聞き手は愚痴を言っている本人とは、直接利害関係のない、昔の上司や同僚、隣の組織に所属する人の場合が多い。このような聞き手がメンターに相当する。落語で言えば、与太郎が転がり込む町内に住む伯父さんといったところだろうか。自分よりも経験が豊富で、自分が行き詰まったときなどに、相談相手になってくれる人がメンターである。
5〜6年ほどまえのシリコンバレーでは、とくに女性管理者やマイノリティ、企業経営者などにメンターが必要だとされていた。過去の離職率調査から、キャリア発達と昇進の機会が十分でないことが離職の大きな理由であり、とくに女性管理職と有色人種の管理職の離職率が高いことが顕著であった。その解決策としてメンタリング・プログラムの導入が検討された。
男性の一般社員や管理者の場合、同じ立場を経験した先輩が数多くいて、どこかにメンターを求めることができる。ところが、女性管理者・マイノリティの管理者・企業経営者は、企業社会の中で少数派であるため、自分と同じ経験をしてきた先輩を求めることが困難である。
それらの優秀な人材が適切なキャリア形成をすることを支援するために、企業がメンタリング・プログラムを提供するケースが増えているのだ。考えてみれば、NPOのリーダーとして活躍している人も女性管理者と同様の立場に置かれているのではないだろうか。NPOといっても組織的にはそれほど大きくなく、常に先頭に立ってリードする立場の人が必要になる。活動の中で行き詰まり、壁を乗り越えなければならない場面も多い。組織の中で、自分と同じ立場で相談できる相手がいない。NPOにこそ、メンタリングが必要ではないだろうか。