3.Web2.0 のサービス
Briannica Online は Web1.0 の百科事典で、 Wikipedia は Web2.0 の百科事典。出版は Web1.0 で、参加は Web2.0 。個人の Web サイトが Web1.0 で、ブログが Web2.0 。といった例は直感的にあたっている印象がある。
Web1.0 では、 IT企業はNetscapeやMicrosoft Office といったアプリケーションソフトウェアを普及させることに主眼をおいて競争をしてきた。ところが、 Web2.0 では、アプリケーションソフトからプラットフォームという仕組みを提示するように変化している。
たとえば、 Wikipedia という百科事典は、誰でも関心のある単語を登録して、それに関する知見を書き込んでいける仕組みになっている。たとえば「ビー玉」や「かめはめ波」といった単語を調べることもできる。関心をもって書き込みをする人がいれば、百科事典の単語として登録できる。世界中の誰もが、書き手として参加できる百科事典なのだ。
「はてな」も Web2.0 。「はてな」とは、質問者が掲示板スタイルで探しているホームページや知りたい情報のあるページを質問すると、ページ探しの得意な別の回答者が答えるサービス。さらに、「はてなダイアリー」というブログサービスや「はてなアンテナ」という自動巡回サービスなどに拡張している。ユーザー参加型のプラットフォームという点で Web2.0 のサービスといえる。
このような世界を代表する企業が Google である。自分の近くのお店、自分の住む町の地図、知りたいニュース、世界のありとあらゆるものを検索できるプラットフォームを提供することを目指している。現に、 Google マップで私のマンションの写真を検索でき、通勤路にあるクリーニング屋、フラワーショップの名前まで Google ローカルにのっている。
Google の提供するプラットフォームに既存の地図や情報がむすびつけられて、さまざまな形で提示される。 1 998年9 月にスタンフォード大学の大学院生 Larry Page 氏と Sergey Brin 氏が設立した会社のサービスに、私の家から歩いて数分のたった2名の工務店までのっている。
こんな現実をみると、 Web2.0 ならずとも新しい WWW の時代に入ってきたというのが実感である。参加者がどんどん書き込みをして、そのネットワークが急速に進化していく世界。既存の情報をつなげて、新しいサービスが提供される世界。確かに、 WWW の世界がこれまでのホームページの集合という時代から「集合知の利用」や「参加のアーキテクチャ」といった時代に変化していることに眼を向けるべきだろう。
最後に、先日逝去したピーター・ドラッカーの言葉をみたい。私たちが IT 革命のまっただ中にいるといい、その変化の渦中にある我々にはまだその変化がどのようなものか理解できないという意味のことを言っていた。彼は、 7000 年前の灌漑文明ですでに現在の主要な体制はできあがっていて、そのとき以来の大きな文明の変化に私たちが直面していると言う。 IT 革命は農業革命、産業革命に続く革命の時代ではなく、灌漑文明以来の大きな社会的・文化的イノベーションの時代なのだと語っている。
彼の意見が正しいかどうか分からないが、 Web の利用形態の変化は大きな変化の一つの兆しかも知れない。とくに、知識をどのように使うかが大きな鍵を握っている点において、大きな転換点にあると私は考える。
|