コミュニティ・レストラン(R)実践報告 『地域食堂』 その2 (北海道釧路市)
                                
工藤 洋文(NPO法人 わたぼうしの家事務局長)

 前回に引き続き、北海道釧路市で展開されているコミュニティ・レストラン『地域食堂』の活動を紹介します。『地域食堂』が地域の人たちコミュニケーションをとり、高齢者の生活を守っている様子は大きく胸をうちます。2006年2月25日には、東京都内でコミュニティ・レストランフォーラムを開催します。詳細はコミレスホームページをご覧ください。

1.月 1回の地域食事会から地域食堂に発展
 NPO法人わたぼうしの家が設立した時は、主に認知症の高齢者に関する介護をする法人として設立しました。しかし、普通の高齢者は出来ればそのような老いには、かかわりたくないのが本音だろうとも考えましたので、法人の趣旨をどの様に地域に理解していただき、地域に溶け込むことが出来るだろうかと思案しておりました。その時から、喫茶店や食堂を視野に何気なく遊びに来て、語らえる場所として地域の人たちの交流の場として「わたぼうしの家」を利用して欲しいと考えておりました。

 法人設立の翌年の平成13年から、近所の独居老人を中心に訪問を開始しし、あるときは4時間以上も話し込んできたりして次第に仲良くなり、法人の趣旨は理解できなくても、楽しいことが理解できてくれれば良いと判断し、次の企画として訪問した方やその友達を中心に「地域食事会」を企画しました。

 月に一回300円で、自分たちで調理して大勢で食事する楽しみを体験し、自宅での「個食」より大勢で食べる楽しさを理解していただきました。また、音楽鑑賞や趣味を生かした軽作業等で楽しさを倍増することも実施しました。今の「地域食堂」のボランティアスタッフはこのような信頼関係があるからこそ、楽しんで参加していただいていることと、「無償」にすることにより、自分の都合で無理することなく、自由に休んだりすることの選択肢を広げる好結果になっています。

  とかく、老人は世間話しが好きで、「あの人はお金が欲しくて、食堂のスタッフになった」との噂を心配していましたが、今のところ一つも出ておりません。

2.地域食堂でつながり高齢者の命と生活を守る
 この 「地域食堂」 の場所は、開業医が移転し1階部分が空き家になっていたところを、無償でお借りしており (2階は自宅利用)、家賃は先生のご好意で無料、おまけに法人の理事にもなっていただいております。 1食300円で独立採算の事業として成立しているのは、家賃が無料なのとボランティアスタッフが17人とシェフ1人(有給)で毎月一回のローテーションが確立しているのが最大に理由だと思います。

 1年前の話ですが、 近所の独居老人が認知症らしい噂を地域の人が聞きつけ、 わたぼうしの家に相談にきました。 とりあえず、行政に家庭訪問してもらった結果、認知症で近くに身寄りが居なく、リフォーム詐欺まがいの業者が来ている様子でした。民生委員と介護保険担当と「わたぼうしの家」とで協議し、介護認定を受け在宅支援をしていただきましたが、本人は「呼んでも居ないに何で来たの、お金払えないから」とヘルパーを追い返してしまいました。それで、「地域食堂」に誘い出すと、「食べたから料金は払う」と意識していただき、その後スタッフが何度と通い、友達になり、「わたぼうしの家」の事業である、認知症通所介護に繋ぎ、今はグループホームに入居し穏やかな生活を満喫しています。

 約1年程度かかりましたが、そのまま放置しておいたら、大掛かりなリフォーム詐欺にかかっていたことと、満足な食事が出来ずに健康を害していた可能性もあります。虚弱な老人でもディサービスに通うのは抵抗感があるものですが、この場所は「食堂に行くから」と思えることで、抵抗無く来ることができることが価値あることだと思います。このような実例を地域の人が自分の目で見て、救われた事実を知るたびに、法人の信用が増してきております。

 10月の末日に地域住民と「わたぼうしの家」のスタッフで1泊のぶどう狩りツアーにでかけましたが、町内会の温泉旅行より楽しいと好評でした。帰りのバスでは、来年の日程を決めようとの意見もだされ、理事としては嬉しい限りです。法人設立から5年目で地域の人と温泉に行けるとは当初、想像もしていませんでしたので感無量の旅でした。


 



 

 

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