「南」の世界拾い読み 第20回

 このコーナーは、主に南の国々(開発途上国)のメディアやNGO/NPOで流されている情報を中心に独断で選んで、そのサマリーをコメントをつけて紹介していきます。情報の詳細を知りたい場合は、併記のホームページにアクセスしてください。
  今回のテーマはこの冬大流行が懸念されている鳥インフルエンザについてである。鳥インフルエンザが人間に感染した際に新型インフルエンザとなるといわれており、その治療薬としてタミフルが注目されているが、この薬をめぐっての駆け引きも南北経済格差が影を落としている。 (本田真智子  ( 特非 ) NPO研修・情報センター常務理事)

1.最終的に特許よりも生命の保護が優先されるであろう
Threats Get Vietnam Rights to Make Bird Flu Drug
http://www.ipsnews.net/news.asp?idnews=30937

 Ho Chi Minh City (ベトナム) 鳥インフルエンザの大流行の可能性が高いために、ベトナム政府はインフルエンザの治療薬「タミフル」の国内での生産の許可を求めて、タミフルの特許を持っているスイスの企業「ロッシュ」と交渉している。現在のところ、ベトナム国内での薬の製造に対しては満足な合意に達していず、「場合によっては非商業的な目的のための薬の国内製造を認可するために、特許を無視することもある」とベトナム政府は語っている。

 ベトナムは世界で最も鳥インフルエンザのウイルスを繁殖させている国のひとつとなっている。ベトナムでは多くの鶏は囲いがなく放し飼いで飼われており、市場では店の裏で鶏を絞めている。人々や多くの生き物の前に、死んだ鶏が置かれている状態だ。

 昨年の鳥インフルエンザの流行で国内の総生産の1億9000万米ドルの損失があり、5500万羽を超える鳥が殺された。

 鳥インフルエンザの拡大を防ぐために2つの計画がモデル的に実行されたが両方とも失敗した。そのひとつは家禽に対する予防接種だったが、ワクチンは常に冷やしておき、注射器のみによって運ぶことになっていたが、その野状態のものを裏庭で飼われている鶏に摂取することが非常に難しかった。また、鶏は予防接種後30日間は売ったり食べたりすることはできないが、記録なし、また監視なしではこのことを守ることができなかった。

 ベトナムのグエン副首相は「多くの場所で、人々は鳥インフルエンザの流行による危険に気づいていない」と述べ、注意の喚起を訴えている。

 ベトナム南部では魚に鶏糞を与えているために、そのことが人々の健康に脅威を与えているという。感染した鶏肉がメコン川に投げ込まれて、そこで泳いでいた9歳の少年が鳥インフルエンザに感染して死亡したという。

 ベトナムでタミフルを十分に生産することで、患者に供給し鳥インフルエンザの大流行と戦おうとしている。タミフルは世界中で品薄状態になっている。台湾がベトナムに60万個のタミフルカプセルのストックを寄贈した。

 アジアのいくつかの国では、タミフルの現地生産に関心を示している。そのためロッシェと交渉に入っている。ロッシェのベトナムでの代表は、タミフルの十分なストックがあり、足りなければ世界中からかき集めて、大流行に備えるという。しかし、ベトナム政府は「特許を尊重する前に人々の健康を保護するだろう」と語っている。

( IPS Inter Press Service News Agency より)

2. 東アフリカでの鳥インフルエンザを防ぐために警告が発せられた
Minister Alerts On Bird Flu
http://allafrica.com/stories/200510310927.html

 Kigali ( ルワンダ )  感染症を担当する健康国務大臣が国内の鳥インフルエンザの発生の可能性について公に警告を発した。病気が発生してから対策するよりも、発生を未然に防ぐほうが扱いやすいとして、鳥の輸入を禁止し、人々を支援する政策のフレームワークを作成した。

 鳥の開始の迅速な報告は、鳥インフルエンザ発生を抑える適正な方法である。また、鳥インフルエンザが発生したら、抗ウィルスのワクチンを多量に獲得するとしている。

 渡り鳥などを介して、東アフリカに鳥インフルエンザが到着する可能性があり、その場合には自然界や農場において広範囲に広がるかもしれないと最近言われている。

 また、人々が動物のすぐ近くで暮らしているので、鳥類がウィルスに感染したら、人間の間で広がる危険性が高い。

 ウィルスは調理で死ぬので、鳥インフルエンザにかかった鳥類の肉を食べても死ぬことはないが、鳥に触れることは人間にウィルスを感染させる可能性がある。また、怪死した鳥を報告せずに、食べてしまう可能性もある。

( all Africa.com より)

コメント  鳥インフルエンザが人間に感染し、新型インフルエンザに変化して、大流行をするという予想が立てられ、日本でも64万人の死者が予想されている。その数について賛否はあるだろう。今回はそのことには言及しない。

 私がここで取り上げたいのは、薬の特許の問題である。開発途上国でエイズが流行しているなか、先進国ではエイズに対する薬が多数開発され、それを処方することでウィルスと共生することが可能になっている。それらの薬が高価なために、貧しい国々の人々は手に入れることができない。そのため、特許が切れた薬であるジェネリクス ( 後発医薬品 ) 薬を製造して使用したり、特許を無視して開発途上国の中で製造したりする動きが出ている。

 鳥インフルエンザの流行に対しても、影響を小さくできるといわれる薬タミフルの備蓄に世界中の国々が奔走している中で、やはり貧しい国々では十分な備蓄ができないという問題が出てきている。

 そのため、特許よりも人命を優先して、ローカルに製造を考えている国も出てきている。

 医学は人の生命を守るために発展してきたものだが、多くの場合お金がある人たちが優先され、貧しい国々の人たちは病気が蔓延しても、薬どころか環境や栄養も劣悪な状態に置かれる。こういう状況を改善するのにめに、 NGP/NPO が力を発揮するのだろう。

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