コミュニティ・レストラン(R)実践報告 『地域食堂』(北海道釧路市)
                                
工藤 洋文(NPO法人 わたぼうしの家事務局長)

 コミュニティ・レストランネットワークで発行しているメールマガジンに北海道釧路市で展開されているコミュニティ・レストラン『地域食堂』の活動報告が掲載されました。今回は、こちらの記事を転載いたします。コミレスは現在、日本各地で広がっています。11月26日には、京都府宇治市でコミレス実践研修も開催します。詳細はコミレスホームページをご覧ください。

1.「集う・食べる・語る」をテーマに地域社会の再構築への社会実験
 この「食堂」の企画は、 NPO法人「わたぼうしの家」が設立した平成12 年から話題として出ていましたが、地域のネットワークや人材が揃った平成 16 年4月から事業実施となりました。

 地域食堂は「地域の人が気軽に集える場所が欲しい」「気軽にコーヒーが飲めるような場所が欲しい」わたぼうしの家の理念でもある「地域と共に安心して暮らしたい」の具体化でもありました。2年間継続している「地域食事会」のメンバーが、大勢で食事する喜びや楽しみを実感していただいた後、参加していただいた方と相談しながら「自分で出来る範囲・無理しない範囲でのボランティア」で協力を得、シェフも近所の下山さんにお願いしての事業です。

 高齢者になると食事の手抜きが多くなるとか、食品素材数が減少するとか、一人さみしく食べるとか、総体的においしく食べることが少なくなりがちです。また、料理の種類数も減少したりする事が多いです。独居高齢者は外出しなければ、会話するチャンスさえ生まれません。「地域食堂」はそのような悩みを少しでも解決するお手伝いとして開設しました。

 「集う・食べる・語る」をテーマに崩壊した地域社会の再構築への社会実験でした。

 お店の名前をカタカナで表示しようかと地域の方に提案しましたが 、ボランティアスタッフの皆さんに「横文字は理解して友達に紹介できないから、日本語にしてほしい」と言われ、その場で「地域食堂」に決まりました。参加する皆さんが自信をもって地域の皆さんに紹介できる名前が一番だと思います。

 営業は、毎週月曜日の11時から13時まで開店し、メニューは一品として注文を簡素化することで、誰にでもお手伝いできる仕組みにし、白飯は避けて混ぜご飯等にして、個食では造りにくいメニューにしています。固定スタッフは理事で地域食堂のマネージャーである、田村悦子・シェフの下山洋子・山森・川崎の4人。ボランティアスタッフは地域の高齢者の人17人が4回のローテーションで毎月1回を無理しない範囲でお手伝いしています。開店当初から新聞やテレビで数回取り上げられているので、参加する皆さんは自分が社会の一員として役立っている自負心も芽生え、参加する喜びを感じているようです。

2.相席同士が会話が進む工夫を
  開店して半年が過ぎた頃から、親子さん達がよく来るようになりました。大きな座卓を囲んで、多い日には10人の子供達とおかあさん達が、ワイワイと賑やかにごはんを食べ、おしゃべりをしています。子供達は大声で叫んだり廊下をバタバタ走っていますが、誰も叱ったりしません。おかあさん達のストレス解消と、子供が騒ぐのを気にしないで、お友達と会い育児とかの情報交換の場所として利用され、喜ばれています。「地域食堂」は、零歳から90代までと来店者数は70人を超える時もあり、地域の人に幅広く利用していただいています。

 マネージャーの田村は注文受けとお金 の授受と接待ですが、実名での「話しかけ」は地域食堂の最大の特徴であり、会話に餓えている高齢者には非常に好評です。自分の存在を憶えていてくれることが、地域で生きている喜びのようです。

 食卓テーブルに座る時も、お客さんの判断に任せると、個席になる可能性があるので、マネージャーがなるべく相席になるように、組み合わせをその場で判断します。

 相席同士が会話が進むような組み合わせを選択しているのも「地域食堂」の特色でしょう。

 介護保険が始まり身体介護のサービスは充実しましたが、予備軍として控えている高齢者には介護予防が急務となります。 「地域食堂」にはいつも会話と笑顔に満ち溢れていますので「心の介護」予防としては充分な成果が期待できます。この事業が地域によろこばれる「食堂」として末永く、活(い)きて行けることを期待しております。


 



 

 

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