「南」の世界拾い読み 第19回

 このコーナーは、主に南の国々(開発途上国)のメディアやNGO/NPOで流されている情報を中心に独断で選んで、そのサマリーをコメントをつけて紹介していきます。情報の詳細を知りたい場合は、併記のホームページにアクセスしてください。
  教育は大切である。お金を儲けるためだけでなく、薬などの処方箋を読んで命を守るためだけでなく、思考を深め社会のあり方を考え、人生を豊かなものにするためにも必要なのだ。それは人間の尊厳そのものとも言える。今回は、教育についての記事を、ナミビア、インドから紹介する。 (本田真智子  ( 特非 ) NPO研修・情報センター常務理事)

 

1.妊娠によって学校から追い出される女子学生たち
Namibia: Growing Controversy Over Teen Pregnancy
http://allafrica.com/stories/200510200578.html

Windhoek (ナミビア)  16 歳の Ndjianje Tjiraure は通っている高校で優秀な生徒だったが、妊娠して退学を余儀なくされた。彼女は来年学校に受け入れてもらえると聞いているという。多くの女子学生は妊娠によって退学をせざるを得なくなる。しかし、学校を中退すると、その後子供を抱えての生活が経済的に大変なので、多くの女子学生は学校への復学を求めている。ナミビア政府は憲法にのっとって、子供の基本的権利として、親が子供の面倒を見なければいけないので、母親は学校よりも子育てをしろという。しかし、子育ては母親だけがするものではない。
 ナミビアの出生率は世界で最も高いものである。政府はさまざまな社会運動と家族計画サーボスで出生率を低下させようとしている。中絶は血族創刊とレイプによる妊娠以外は認められていない。
 学校に登録しているのは男子よりも女子のほうが多いが、最終学年を終えるのは男子のほうが多い。また、女子の HIV 感染も男子より多い。女子学生を妊娠させる男子学生はめったに、中退という事態に直面しない。
 ナミビア政府はまだ過去の中にいる。なぜ、子供が父親の愛ではなく、母親の愛だけを必要と考えているのか。
( all Africa.com より)

 

2.学習の喜びは本を照らす灯りよりも明るい
Women on write track: University of Hyderabad takes on literacy programme for communities
http://southasia.oneworld.net/article/view/120746/1/

Hyderabad ( インド )  ハイデラバード大学のイニシアチブで進められている識字教育の参加して6ヶ月の女性グループのメンバーは新しい世界全体を見ている。彼女たちは新聞や大切な人たちからの手紙を読む喜びで顔を輝かせている。路上クラスで学んでいる女性は署名することができるようになった。また、別の女性は教育によって人生の新しい楽しみを獲得している。
 質の高い教育で世界的に知られるハイデラバード大学の周囲に多くの読み書きができない人たちがいることを不公平だと感じた大学の教員や学生によって、始められた識字教育で、自治体からの協力はない。
 このプログラムの識字教育はユニークである。 最初の文字のカーブを教え、それから身近なものの名前などを教えていく。 また、多くの人たちが参加できる様なプログラムにし、読み書き脳力審査基準も設けた。
( One World.net より)

コメント  ケニアの独立までの苦しい戦いの中に生きた女性たちの物語「ケニアの女の物語」(ムトニ・リキカンニ著、明石書店刊 ) の中に、村の女性たちがみんなでお金を出し、 1 人の少年に教育を受けさせる話がある。女性たちは 1 人の少年に高等教育まで受けさせることは、自分たちの希望の種になると信じて、苦しい中でお金を出し合う。国際識字年に公開された映画「アイリスへの手紙」では、ロバート・デ・ニーロが読み書きのできないコックの役を演じていた。コックは文字が読めないことを周囲に隠して生きていた。その中で、薬ビンに書かれた文字が読めないというシーンがあった。文字が読めないことは尊厳を傷つけるとともに、命をも脅かす。

 私が育った田舎でも近所に読み書きができない女性がいた。女性は教育よりも労働力として1日中働かされていた時代、農村に育ったために、自分の名前を書くこともできないのだ。私はそのことを知って、衝撃を受けた。自分が戦前に生まれていたら、同じように教育を受ける時間を奪われ、自分の名前も書けない人生を送ったかもしれないと。

 「貧困」はお金がなくて、貧しいということだけを言うのではない。機会、尊厳、愛情、さまざまなものを奪われ、回復のチャンスさえないことも貧困と言う。

 教育を受けられる、情報を自分の目で読み、自分の手で発信できる。現状を寄りよくするための一番の基礎となるものが教育だ。貧困から抜け出すためにも教育は必要であり、自分の誇りを獲得すためにも教育は必要だ。

 教育とは人生という暗い道を照らす明かりのようなものなのだ。

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