特別報告 日本訪問記 「日本で見たこと、感じたこと」
                                
黄 海存(国際交流基金北京事務所)

  2004年に韓国のソウルで開催された 「 2004 年 NPO 交流プログラム:韓国、中国、日本」 でお会いした国際交流基金北京事務所の黄海存さんが、日本を訪問。当センターにも訪れて再開を喜ぶと共に,以前から紹介していた「コミュニティ・レストラン」プロジェクトの話などを聞いていかれました。その際に,黄さんにお願いした日本訪問記をお届けします。

1.まず愛・地球博に〜ソフト面の充実に関心
 5年ぶりに日本に行ってきました。幸いに最初の訪問は愛知万博「愛・地球博」でした。 7 月の名古屋はものすごく蒸し暑かったですが、観光客の足を止められないようです。家族連れの人たちや、外国人の姿が至るところに現れていました。会場全体は何と言っても大きいものです。人々がガイドの指示に従って、混乱なく列を作って、会場まわりをしていました。ガイドの笑顔や、中国語での説明などとても好印象でした。今度の博覧会のテーマは「環境」で、それは人類共通の大事な課題ですね。みんなで力を合わせて美しい世界を作らなければならないとこの縮小された「小世界」にいながら、ふと思いました。

 名古屋にいる日本人の友人が「今の名古屋は東京に次いで日本で二番目に活気のある都市だ」と胸を張って話しました。確かに万博のお陰で、名古屋を始め日本の中部地区に来てくれる外国人観光客が増えたでしょう。英語だけではなく、中国語と韓国語で書かれている案内や道順などは随分多くなりました。こういうソフトの面での工夫によって、外国人に優しい観光環境を提供して、日本の優れた製品やアニメだけではなく、等身大の日本や日本文化、日本人の心を知ってもらえるでしょう。

 先端技術を誇る日韓館と違って、中国館は古典楽器の生演奏や、古代の偉大なる文明を披露しています。もっと新しいものがあればいいなと思っていました。博覧会協会の責任者の話によると、次回の万博会の主催者が上海から来て、経験などを勉強しているそうです。それはなかなかいいことだと思っています。ハードの面だけではなく、ソフトの面(教養や、心のゆとり、笑顔)の勉強も忘れてほしくないですね。

 中部国際空港で降りたときに、通路で掲げられた「鵜飼」の看板が目に入りました。それは岐阜県の観光名物だから、ぜひ見逃すまいと心が躍りました。長良川に浮かんでいる漁船に乗ったら、美しいお弁当が並べられていました。

 紺色の服を身にして、マイクに向けて英語でご挨拶してくれた漁夫に驚きました。その隣に男の子が立っていました。親子でしょうと聞いたら、はい、そうです。この子が将来漁夫になるという返事が来ました。とても素朴な親子でした。千年以上の歴史がある「鵜飼」はここ岐阜で上手く継承されていて、男の子にだけ伝承する点は中国と似ています。好き嫌いは別として、この家で生まれた以上漁夫になるしかないのはさだめでしょうか。日が暮れて、漁火がつけられました。それは提灯の明かりや花火と一緒に辺りを明るくしました。突然お祭りの気分になりました。ビールを飲みながら、涼しい川風に吹かれて、鵜飼を楽しむのがなんと幸せだったでしょう。

2.“嫌中”でも中国に関心が高い日本人
 岐阜県を離れて、東京に行きました。日本は交通が便利ですね。一億の人口は決して少なくはありませんが、煩雑な感じはしません。駅員が丁寧にお年寄りや外国人に切符の買い方とか、道順を教えています。車両の中に「携帯をマナーモードにしましょう」と書いています。よく観察したら、確かに皆それを守っているようです。大きな声を出して、電話で話す人はほとんど見つかりませんでした。人に迷惑をかけない、自分を抑えるのが日本人の美徳だと言われていますが、個人を抑えることという文化が「調和がとれている」日本社会を保っていると言えましょうか。

 上野公園の近くにあるホテルに泊まりました。不忍池で満開に咲き誇っている蓮の花は真夏を知らせています。ちょうど夏祭りの開催期間中でしたので、骨董品の市、コンサートが毎日のように行われていました。浴衣を着た若いカップルの姿は素敵でした。周りを散策してから、東京国立博物館に足を止めました。特別展の「遣唐使と唐の美術」があったからです。中国古代の文化は相変わらず人気があるようです。日本にいる人間はいろいろな国の美術や文物を見られて幸運だと羨ましく思います。若者に喜ばれる ( 六本木ヒルズ内にある ) 森美術館にも行きました。ここでは西洋の絵画展と日本の建築展のほかに中国に関する展覧会は三つもありました。参観者は興味深そうに鑑賞していました。“嫌中”といいながらも、関心度が高いことは確かだと思っていました。それに対して、中国人はどのぐらいのひとが日本の古典や日本文化といった側面を見て理解しようと思うのでしょうか。

3.初めて NPOを訪問〜日本と中国のNPOの交流を
 今回は初めて、 ( 特非 ) NPO研修・情報センターを始め日本の NPO 組織を何箇所か訪問しました。そのなかには発展途上国への救援・支援活動をする組織もあれば、研修事業や、 NPO 起業支援事業を行う組織もあります。国内問題に向けるのだけではなく、外国への支援も積極的にやっているのが特色です。

 非常に印象に残っていたのは女性たちが自主的に開いた生協の店とコミュニティ・レストラン「でめてる」です。前者は無農薬、環境に優しいものだけ扱う店で、安全感があります。後者は ( 特非 ) NPO研修・情報センターが実施している 「食」 を核にしたコミュニティ支援を行う「コミュニティ・レストラン」プロジェクト事業の中で、モデルコミレスとして協力をしている自然食レストランです。女性や、身体障害者、不登校のこどもに積極的にコミュニティに関わってもらうところに大きな意義があると思っています。

 私は実際に「でめてる」で食事をしてみました。店のデザインは素朴で、天然材料で建てられているような気がします。女性が入りやすいそうです。なんと言っても手作り料理が美味しい! 普通に健康的な日本料理よりもっとヘルシー! もし中国の似たような NPO 組織が日本の同業者と常に交流ができたら、きっといろいろ知恵や経験、知識を身につけて、啓発されるところが多いのではないかと思いました。

 帰国の飛行機に隣に座っていた人は広西自治区の先生です。初めて日本に旅行してきたそうです。印象はどうですかと聞いたら、なかなかいいですよ。街は綺麗だし、人々は教養があるところが印象的でしたと。そうですね。百聞は一見に如かず。もっと国をオープンして、いろいろな国の人々に観光にきてもらいましょう。今回見た日本は 5 年前よりもっと国際的になったと思いました。

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