「南」の世界拾い読み 第18回

 このコーナーは、主に南の国々(開発途上国)のメディアやNGO/NPOで流されている情報を中心に独断で選んで、そのサマリーをコメントをつけて紹介していきます。情報の詳細を知りたい場合は、併記のホームページにアクセスしてください。
  今、世界中で注目されている同性愛や同性同士による結婚についての記事を取り上げた。今年は、スペインで同性同士の結婚が認められたが、南アメリカのアルゼンチンやブラジルでも同性愛や同性結婚が注目を浴びている。 (本田真智子  ( 特非 ) NPO研修・情報センター常務理事)

1.同性カップルにも異性婚と同じ権利を求めるのは人権だ
The 'Final Battle' for Gay and Lesbian Rights
http://www.ipsnews.net/news.asp?idnews=30041

Buenos Aires (アルゼンチン) 5歳の双子と 2 人の「お父さん」にメディアの話題を集めることで、アルゼンチンのゲイとレズビアンのコミュニティは同性結婚の合法化だけでなく、相続や養子などに関する権利を求めた運動を展開している。
 アルゼンチンでも長年子どもを育てている同性カップルが何百といるし、ブエノス・アイレスでは同性結婚も認められているが、異性婚による家族に与えられている権利が同性婚にはないため、大きな問題が長年隠されてきた。同性カップルが様々な形で子どもを持ち、育てていた場合、片方が死亡した場合に、もう一方が年金や子どもの扶養の権利を得られない場合がある。
 家族には様々な役割があり、その中には「父親」と「母親」の役割があるが、それはジェンダーで決められるものではなく、男性が「母親」の役割を担うことも、女性が「父親」の役割を担うこともできる。また、1人の人間が両方を担うこともできるので、異性結婚だけが子どもを育てられると考えなくても良いと、心理学者は述べている。
 今まで、結婚で得られていたメリットをそのまま得られる法改正は、結婚の概念を広くすることになり、新しい結婚制度を選択する異性カップルも増えてくるだろう。
( IPS “ INTER PRESS SERVICE NEWS AGENCY ” より)

2.安全を脅かされるウガンダの同性愛活動家
Intimidation of lesbian and gay activists
http://www.amnesty.org./library/ eng - uga/news

ウガンダ アムネスティ・インターナショナルは、ウガンダでの同性愛者及びトランスジェンダー権利活動( LGBT )に対する威嚇について、関心を持っている。最近としては、2005年7月にウガンダの議会は同性結婚を有罪にするための憲法修正を支持した。
 同性愛の活動家は公務員や警察によって家宅捜査を受けたり、拘留されたりしている。アムネスティはこれらの出来事に関心を持っている。性的嗜好、自由、プライバシー等の侵害になると考えている。2月はじめに女性団体がアメリカ人の脚本家による劇を上映しようとした際、ウガンダメディア会議は不自然な性行為や同性愛を進めるものであるとして、上演を禁止した。
 昨年10月にはラジオ放送局が同性愛者に対する HIV/AIDS のケアサービスに対する差別に対する議論の番組を放送したことで、公共のモラルに反したと罰金の支払いを要求された。これらの出来事が同性愛活動家の安全が危惧されるものとなっていることをあらわしている。
( Amnesty International Web より)

3.国際会議の場での同性愛者の権利の問題をブラジルがすすめる
the brazilian breakthrough
http://www.fridae.com/newsfeatures/article.php?articleid=1509&viewarticle=1&searchtype=section&cat=

国連のクローズの会議でブラジルは(同性愛者のシンボルである)レインボーフラッグを振り、マレーシアやパキスタン、その他の国々は大きな衝撃を受けた。 2003 年 4 月に行われた、国連人権委員会の定例総会で同性愛者にも他の人々同じ権利が与えられたとし、ブラジルは同性愛者の権利を進めることに対して、あらかじめ注意を与えることをしなかった。
 ブラジルの前大統領は先駆的な同性愛活動家である Luiz Mott を尊敬し、警察を教育し、また学校教育で寛容を教えた。 The World Conference on Racism, Racial Discrimination, Xenophobia and Other Related Forms of Intolerance (WCAR) では、ブラジルは会議の最終ステートメントに性的嗜好についての文書を入れるために動いたが、失敗に終わった。それでも、これまでオランダなど性的な嗜好に対して寛容な国が試みていなかったものを、ブラジルが行った。
( Fridae Newsletter より)

コメント   スペインでは与党の社会労働党などの賛成多数で同性同士の結婚を認める法案を可決、成立した。欧州では同性カップルに法的保証を認める国や地域が多いが、男女間と区別することなく「婚姻」という形で完全に認めたのは、ベルギー、オランダに次いで3番目となった。

 同性同士の結婚と聞いた時に、婚姻という法律の下での枠に入らない関係が築けるのに、わざわざ法律の下に入りたいという気持ちが理解できなかった。せっかく婚姻から自由な関係でいられるのに。

 しかし、パートナーが入院した際に法的な保障がない関係では、医者と治療の相談ができないし、死んでも相手の葬式を行うことも、遺骨を受け取ることもできないということを聞き、法的な保障が必要な場合もあるのだと知った。最初に紹介したアルゼンチンの例でも分かるとおり、法律に保障された関係でないと遺産や扶養などの権利を得られないこともあるのだ。同性結婚が認められたスペインでは、同性カップルでも養子がもてる他、遺産相続や年金などでも異性カップルと同等の権利が認められるようになった。

 一方、アムネスティのHPから紹介した通り、社会的な偏見により性的嗜好が生命の危機にまで及ぶ場合もある。性的嗜好、障害の有無、性別、国籍や民族によって差別されないというのは、基本的人権である。それは誰もが理解しているところであるが、当たり前に理解し、行動できる人はなかなか多くない。

 アフリカの中のキリスト教者では、同性愛者の結婚はアフリカの問題ではなく、欧州などの先進国の問題だと声明を出している。そのため、実際にアフリカに存在している同性愛者、その活動家などが暴力を受けて、生命の危機に立たされている。

 アジア各国でも同性愛者は多いが、一方で貧しさゆえに異性愛者であるが同性愛者に体を売る人もいる。

 自分以外の人を尊重して、権利を認めるということをすることが、性的嗜好、障害の有無、性別、国籍や民族による差別がなくなる第一歩となるし、南北格差、世界の貧しさを是正することにつながるはずなのだが。
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