協働のデザイン第1回 「言論のデザインをめざして」
世古一穂(代表理事)
DESIGN(デザイン)とはSIGN=記号=決まっていること、をDE=壊すという意味だという。決まりきったことを壊し、新たに創造することというのが本意だそうだ。
  
「市民参加のデザイン」(ぎょうせい 1999)「協働のデザイン」(学芸出版 2002)と上梓してきた本の題名にデザインとつけてきたのは、これからの市民社会を納得のできる参加協働型社会として構築していくためには、参加と協働のDESIGNが不可欠と考えたためだ。
『TRCメールマガジン「TRC e-news」発行にあたって』でも述べているように、いま市民社会のDESIGNにとってさらに不可欠なのが言論のDESIGNだと思う。
  
言論のDESIGNを志向する姿勢と視点は、サイードのいう「マイノリティ集団、小規模集団など相対的に弱い立場に立つこと、普遍性の立場に立ち権力に対して真実を語ること」「安易な公式見解を拒み、権力側の語りを無条件に追認しないこと」「積極的に批判を公的な場で口にすること」そのものでありたい。それを貫くことに社会変革をミッションとするNPO研修・情報センターがNPOとして発行するメルマガの意義と役割があると深く自覚する。
本メールマガジンがやるべきことは、
まず(1)既存のメディアでは報道されない、もしくは報道しようとしてもできない事実を知らせる、(2)既存のメディアで報道されているが、既存の価値、権力の側の視点で報道されているために、マイノリティ集団、小規模集団など相対的に弱い立、普遍性の立場、NPOセクター=市民セクター※の立場からみれば誤って報道されていることの間違いを正す、(3)既存の価値、権力の側の視点で報道されている情報を、マイノリティ集団、小規模集団など相対的に弱い立場、普遍性の立場=NPO=第3セクターの立場、から、違う見方(オルタナティブ)を提示することである。
  
この3つの視点と方法による情報の提供、報道によって市民社会の言論空間を構築することがめざすべき言論のDESIGNである。
また、言論のデザインの実践には多様な人々の参加と協力が不可欠だ。言論のDESIGNはある面ではNPOのアドボカシー(政策提言)そのもの、NPOによる政策のデザインのプロセスでもある。NPOは本来新しい公共を拓く社会変革の主体者であると私は考える。社会的相対的に弱者の立場に身を置きオルタナティブな政策提言実践を行うことにその存在意義をもつものである。
  
※本来第3セクターとは、第1セクター=行政セクター、第2セクター=企業セクターから独立し、異なった役割を持ち、行政セクターや起業セクターのコントロールを受けず、自己決定するセクターをいう。いわゆる日本でこれまで3セクといわれてきたものは、行政=第1セクターがお金も人も出し、コントロールしてきたもので、本来の第3セクターとはいえない、いわば1.5セクターとしかいえないものであることを付記しておきたい。
  
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