「南」の世界拾い読み 第15回

 このコーナーは、南の国々(開発途上国)のメディアやNGO/NPOで流されている情報を中心に独断で選んで、そのサマリーをコメントをつけて紹介していきます。情報の詳細を知りたい場合は、併記のホームページにアクセスしてください。
  今回は、5月3日が‘世界報道自由の日'ということもありメディアについての記事を取り上げた。それも、インターネットなどではなく、南の世界の人々が一番簡単にアクセスできるラジオについての記事を取り上げてみた。情報を得ることの大切さは、基本的な人権である。それが南の人たちの生活の向上につながる。(本田真智子  ( 特非 ) NPO研修・情報センター常務理事)

 

1.ネパールでは2月1日の非常事態宣言以降、報道の自由が危機に瀕している
WORLD PRESS FREEDOM DAY:Nepali Journalists Live Dangerously
http://www.ipsnews.net/interna.asp?idnews=28538

Kathmandu (ネパール) 2月1日にネパールの王が非常事態宣言を出して以来、報道の自由は危機にある。約1500人のジャーナリストが、多くの仲間がまだ少年院に交流されていることを国際社会に思い出させるために、逮捕の危機を賭して首都でマーチを行った。王が非常事態宣言をして以来、軍が国内のメディアを統制しており、山間部の主要な情報源の FM ラジオのニュースレポートを取りやめさせた。非常事態宣言は解除されたが、それによって報道の自由が回復されるかは疑わしいところである。政府からのメディアに対する広告出向はほとんどが国営のメディアに行くことになり、広告収入が減ったメディアは存続の危機に立たされている。また、山間部の FM ラジオは独自の放送をしているので、政府から不信を買っている。
( IPS “ INTER PRESS SERVICE NEWS AGENCY ” より)

2.身近なメディアであるラジオが人々の命を守った
Radio Helps Save Lives in Afghanistan Dam Collapse
http://www.internews.org/news/2005/20050407_afghan.html

Ghazni (アフガニスタン) カブールから南に2時間のガズニ市を流れるガズニ川の古いサルタンダムが崩壊し、洪水を引き起こし、店や家々を押し流した。洪水が起きる朝に、ローカルラジオが市長にインタビューしダム崩壊の危機の情報と、避難命令が既に発令されたことを流した。このラジオを聞いていた人々が、急ぎ避難したために、建物などは破壊されたが、生命の損失は免れた。人びとは、ラジオ放送に感謝している。
( INTERNEWS より)

3.コミュニティ・ラジオによって人々が情報を得ることをおびえる政府
DEVELOPMENT:Putting Community Radio on the Map in Africa
http://ipsnews.net/africa/interna.asp?idnews=28455

Nairobi( ケニア )  近隣の出来事に対して人々に情報を提供するコミュニティ・ラジオの役割が価値があるものだということを、なかなか議論されない。大きなメディアによるプラットフォームに入ることを許されない。また、政府はコミィニティ・ラジオの発達を妨げている。コミュニティ・キャスター世界協会(AMARC)の会議がケニアで開催され、アフリカの中から 100 人のコミュニティ・キャスターが参加し、コミュニティ・ラジオの地位向上のアクション計画を作成することになった。

 コミュニティ・ラジオは地域の言語で、人権や様々な問題に対しての情報を地域の人々に与えるので、市民が政府に批判的になるのではないかと、政府は恐れている。また、人々が電波から情報を得ることで、自分たちの権力を失うかもしれないと恐れている。

 そのため、政府は放送許可に対して高額の料金を課している。人々が情報を得ることで、国の民主化が進む。また、表現の自由は送り手と受けての人権に関わるものである。許可料金の定額か及び免税を進める必要がある。
( IPS “ INTER PRESS SERVICE NEWS AGENCY ” より)

コメント  中国での反日デモが広がったことに、インターネットの普及が言われている。インターネットは市民のメディアであるといわれるが、国家による監視も出来ることは、この間の中国政府の動きでも明らかになった。一方、私が訪問したことがある西アフリカのセネガルにあるNGOでは、市民に対してインターネットの使い方の講習会をしていた。多くの人々はパソコンを持っていないし、簡単にインターネットにアクセスできる環境にはいない。しかし、そのNGOでは「貧しい人々こそ、インターネットを利用する必要がある」と考えていた。開発途上国の人々こそ、情報にアクセスできる権利が保障されるべきだと。

さて、今回紹介した 3 本は、国家によるメディアの検閲と弾圧、そしてローカル放送、コミュニティ・ラジオが命をも守る大切なメディアであるということの話題である。

国会がメディアに対して検閲をすること、放送の許可を難しくすることは、それだけ情報を人々が得ることに対して、恐怖しているということだ。表現の自由は人権である、それを侵そうという動きに対しては人権をないがしろにしようという意図を疑ってかからなければならない。
▲ページトップへ
 

 

 



〒160-0014 東京都新宿区内藤町1-6  御苑ハイツ305 IAVE日本内
TEL:03-5363-9016 FAX:03-5363-9026
E-mail:ticn@mui.biglobe.ne.jp

©2004 NPO Training and Resource Center All Right reserved