協働のデザイン  第16回 協働のルール ーその見方と評価 15のポイント  

世古一穂(代表理事)

キーワード・・・ 協働の原則、パートナーシップ、協働評価、協働のルール、 市民活動の自立

1. はじめに
 協働のルールについては、都道府県・市レベルで「協働ガイドライン」「協働マニュアル」「協働の指針」等、と銘打った協働のルールづくりが行われているが、各自治体での協働のルールづくりにあたっての、市民参加、協働の視点からのポイントを整理しておこう。

 行政とNPOとのパートナーシップを築いていく上では、協働のルールづくりを市民、NPOの声を聞き、市民、NPOの参画と協働によって進めていくことが大切だが、以下に挙げる 15のポイントは、その際、市民、NPOがどのようなポイントで意見をだし、提言、評価をしていけばよいかのポイントでもある。この15のポイントは計画策定の段階、パブリックコメントが求められている段階、協働のルールが策定され見直しが行われる段階、それぞれに使えるものとして提示してみた。

2. 協働のルールづくり、その見方と評価〜15のポイント
(1)市民活動および市民活動との協働に関する基本的な考え方が行政内で整理されているか(NPOの多様性、多元性を行政   が理解しているか)
  ※協働の考え方が自治体の大きな方針であることが行政組織内で合意された上での協働のルールづくりであるかどうか、   他の基本計画等との整合性をとれるような検討が行政内でなされていることが必要である。特にマスタープランや行革の   計画との位置付けが明確であることが必要である。

(2)「協働のルールづくり」を行う場及びプロセスが適正に設定されているか。市民、NPOとの協働作業が前提とされているか
  ※市民参加型の審議会だけでは不十分であり市民、NPOとの開かれた議論、検討の場が用意されることが必要である。三   重県の「新しい時代の公」を考えるラウンドブル等が参考になる。

(3)協働の原則が明文化されているか
   その前提としてパートナーシップの7つの原則があるか
  @対等の原則、A自主性尊重の原則、B相互理解の原則、C目的共有の原則
  D公開の原則、E透明性の原則 F時限性の原則
  ※パートナーシップの7つの原則については世古一穂「協働のデザイン」を参考にしていただきたい。

(4)協働の成果として「市民活動の自立の促進」の方向をめざしているか
  ※まだまだ市民セクターの基盤は弱く、NPO、市民活動団体の自立を促進することが参加協働型社会の実現にむけて必要   である。市民セクターへの分権の担い手づくりにむけても、協働の成果として市民活動の自立の促進をあげておきたい。

(5)協働の原則を前提とした協働の基本方針が明示されているか
  NPOと行政の協働領域を明確にしていこうとしているか、全庁をあげた協働推進の組織体制について検討されているか
  ※協働を推進していくためには縦割りの行政に横軸をさす行政内の協働を専門的に担う組織が必要である。

(6)協働の形態について整理がされているか、またもっとも効果的な協働となるよう
  行政、NPOが協議して適切に選択できるようになっているか
  ※協働の形態には「事業協力・協定」「実行委員会・協議会」「委託」「補助・助成」等様々な形態があるがそれぞれの場合を   想定した協働のプロセスを具体的に示すことが必要である。

(7)NPO等との協働において双方の合意を明文化した「協定書」等を取り交わすといった形式が組み込まれているか
  ※協働事業ごとにNPOと行政が話しあい、合意、約束した内容を「協定」として相互に取り交わすこと、またその協定書を公   開することによって対等性のある、開かれたパートナーシップを築く基盤となる。

(8)原則だけの協働でなくプロセス、戦略を明示した協働となっているか(中長期的な方針があるか)
  ※戦略を明示することにより協働のための協働ではなく、課題解決のための協働であることが市民にも理解されやすくなる。

(9)協働相手の選定方法を明示しているか、協働の担い手として双方(NPO、行政)が適切であるという根拠(基準)を明示して  いるか
  ※このことにより協働のパートナーとなる行政、NPOともに自信をもって協働に取り組むことができ、説明責任を果たしやすく   なる。

(10)協働事業を具体化する方法、プロセスが明示されているか
  ※対等なパートナーシップを形成するために不可欠である。

(11)協働の質をどのように評価し、それを次の協働の取り組みに反映していくか協働の評価についての考え方、協働評価のプ  ロセス、方法が明示されているか
  ※協働評価については世古一穂著「協働のデザイン」(学芸出版)及び「評価システム研究会報告書 NPOと評価」 (評価シ   ステム研究会)を参考にしていただきたい

(12)市民、NPOと行政とで協働の質を確保し、よりよいものにしていくためのしくみを共有できるものとなっているか
  ※たとえば事業の透明性はNPOだけでなく本来、行政、企業についても求められるものであり協働の質を確保し、よりよいも   のにしていくための工夫が必要である。

(13)NPOを特別の枠に囲ってNPOだけのルールとなっていないか
  ※協働はこれからの参加協働型社会づくりの基本的なコンセプトである。NPOと行政の協働を特別のものにしてしまうので   はなく、協働のルールは公共にかかわる外郭団体や、民間企業等との関係にも活用できるようにしておく必要がある。

(14)参加協働型社会の実現にむけた市民、NPOからの政策提言を積極的に受け入れいれ、実現するしくみになっているか
  ※協働事業については行政から呼びかける協働、NPOから提案する協働、双方向性が必要であるが、特に、NPOからの政   策提言を受け入れ実現していく具体的な施策が必要である。

(15)市民、 NPOが行政と協働で地域の課題の解決や理想の実現に取り込むために事業や活動、評価を通じて継続的に参  加、協働できる形式になっているか
  ※協働は「計画、実行、評価」、「計画、実行、評価」のらせん型のとりくみであり、そのプロセスへの市民の参加と協働を保   障するしくみが必要である。

 なお 、協働のルールづくり、その見方と評価〜15のポイントについて の詳細は
 筆者の次の論文「参加協働型社会へのパラダイムシフト‐パートナーシップを支える協働のルールづくり‐」 (NIRA政策研究 2005年2月号 総合研究開発機構)をお読みいただきたい。

参考文献
世古一穂「参加協働型社会へのパラダイムシフト‐パートナーシップを支える協働のルールづくり‐」 (NIRA政策研究 2005年2月号 総合研究開発機構)
世古一穂「協働のデザイン」(学芸出版社  2001)
世古一穂「市民参加のデザイン」(ぎょうせい  1999)
「評価システム研究会報告書 NPOと評価」 (評価システム研究会 2000)
地方自治職員研修臨時増刊第71等「自治基本条例・参加条例の考え方・つくり方」(公職研、 2002年)
北村喜宣「分権改革と条例」(弘文堂、 2004)
高橋秀行「協働型市民立法」(公人社、 2002)
山脇直司「公共哲学とは何か」(筑摩書房  2004)

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