3つの仮説とは、電子情報に対して私たちが起こしがちな錯覚を示している。第1は電子情報は真実であるという錯覚。これは出版物に関する信頼からきていると思う。本に書いているから正しいという錯覚である。電子情報の場合、その傾向がさらに強くなる。
第2は、私たちが偏向した情報であっても自分の持っている偏見に近いものを事実として認めがちだという傾向である。誰でも生まれつき持っている情報収集の傾向である。自分の都合のよいように理解する理解の回路を持っている。
第3は世の中のあらゆる情報はインターネットに載っているという錯覚である。文字や画像などの情報として電子情報は伝えている。生身の人間や本物の建物や風景は電子情報とは別に存在している。電子情報にのせられない質感、実感、感情などがあるという事実を踏まえる必要がある。
不特定多数の発信者からの情報とは別に、行政の手続きなどがWebベースとなることによる危険性を考えてみたい。八戸で行われた電子申請の実証実験がある。ワンストップサービスあるいはワンストップマルチ申請と呼ばれる電子申請システムである。
子どもが生まれたときの各種手続きを思い浮かべてもらいたい。出生届、児童手当認定請求、出産育児一時金支給申請・・・さまざまな申請が必要になる。あらゆるところで、住所氏名などなどを繰り返し記入して申請する。ワンストップサービスとはこれを一括申請するサービスである。
一見便利なシステムであるが、これが進んでいくと本来個々の届け出で必要なデータを他の申請に転用することになる。つまり、申請者の預かりしないところで情報が流用されることになるわけである。もちろん、八戸市の実験はわたしたちの申請を簡素化するという点では非常に有効な実験であるが、IT技術がもつ危険性もともに理解しておく必要がある。
Webによるワンストップサービスはあらゆるところで普及している。一時期注目を集めた Amazon.com のビジネスモデル特許であるワンクリック・サービスの例が有名である。Webがブラックボックス化している。私たちは自分の情報がどのように使われているか、批判的な眼で見てみる必要があるのではないだろうか。
「ライフイベントに対応したワンストップマルチ申請モデル」は次のサイトで公開している。
http://www.e-ap.gr.jp/topics/040806/hachinohe.pdf
参考情報 ------------------------------------------------------------------
ユビキタス・コンピューティング Ubiquitous Computing
米ゼロックス パロアルト研究所のマーク・ワイザー( Mark Weiser )氏が提唱した。あらゆるところでハードウェアを意識せずにネットワークを活用できる環境のこと。坂村健氏は「どこでもコンピュータ」と呼んでいる。ドラえもんの「どこでもドア」のように、どこでも簡単にコンピュータを取り出しネットワークにアクセスできる環境のことである。
ワイザー氏はメインフレーム(大型コンピュータ)、パソコンに続く次の世代のコンピュータ利用形態を1988年、ユビキタス・コンピューティング環境と呼んだ。「ユビキタス」とは、ラテン語の“ ubique =あらゆるところで”という形容詞を基にした、「(神のごとく)遍在する」という意味で使われている英語である。
ユビキタス・コンピューティングとは、「人間の生活環境の中にコンピュータチップとネットワークが組み込まれ、ユーザーはその場所や存在を意識することなく利用できるコンピューティング環境」をいう。
e−Japan戦略 II の新しい目標としてインフラでは「いつでもどこでもつながるユビキタス・ネットワークの形成」をあげている。ただし、「ユビキタス」ということばが普及しているのは、韓国や日本など限られた地域である。
関連サイト
ネチケット(英語版) RFC 1855
http://rfc-jp.nic.ad.jp/cgi-bin/direct.cgi?keyword=1855&language=eng&x=18&y=10
ネチケット(日本語版)
http://www.cgh.ed.jp/netiquette/#documents
スパム撃退法(毎日コミュニケーションの Web サイト)
http://pcweb.mycom.co.jp/special/2003/spam/menu.html |