中国の民間非営利組織  第4回  2004は民間組織にとって‥
 
岡室美恵子(笹川平和財団)

 「緑家園」「自然之友」や雲南「緑色流域」などが連合し、雲南省政協などを通じ怒江(ミャンマーへ続きサルウイン河となる)の保護を訴えるなど一連の活動は、2004年4月、温家宝首相が長江怒江ダム建設に関し「この種の社会の高い関心を引き起こし、しかも環境方面で異論のある大型ダムプロジェクトについては、慎重に研究し、科学的に決策すべきである」として、国家発展改革委員会の報告した『怒江13級ダム開発計画』を棚上げするという結果を生んだ。

   6月、国務院新聞弁公室が主催した記者会見で国務院エイズ予防治療工作委員会弁公室主任、衛生部副部長王徽隴が中国のエイズ予防および治療の現状について説明し「伝染予防には政府、NGO各方面の団結が必要である。NGOはこの領域で政府に比べ優勢が大きい」と述べた。「NGO」という外来語が普及しているものの、政府高官の発言の中に直接登場することは珍しい。

 9月、中国共産党第16期四中全会 ※1は「社会主義と社会との調和」を打ち出し、12月3−5日の中央経済工作会議 ※2は、「人を基本とし、社会と調和する社会主義建設への努力を堅持すること」を05年経済工作六大任務のうちの1つに掲げた。

 12月10日、民政部が「全国先進民間組織表彰大会」を開催した。表彰の対象は民政部門に登録する団体のうちの540団体であったが、民政部長李学挙は講和の中で「業界組織、公益性民間組織、農村専業経済組織、社区民間組織を育成し、科学、教育、文化、衛生、体育及び人民の生活水準の向上に伴い出現してきた“新型群衆組織 ” を支持し導く」と述べ、草の根団体の存在を認知する表現を示した。

 これを受け、12月13日付の人民日報は「民間組織は政府、企業と並ぶ第3のセクターとして、社会活力を喚起し、社会公平を促進し、扶助友愛を主張し、就業問題の圧力を緩和し、大衆ニーズを反映し、社会的矛盾を除去し、貿易摩擦を解決し、科教興国政策等で重要な役割を果たしている。実践が証明するに民間組織はすでに党及び政府と大衆との橋梁、紐帯となり現代化建設の重要なパワーとなっている 」※3と評論した。「第3部門(サード・セクター)は、かつては第3の勢力を意味し「好ましくない」とされていた用語である。新華社は12月17日付WEB版で「“社会との調和形成が執政強固の社会的基礎であり、党執政の歴史的任務実現の必然的要求である ” となぜ説くか」との文章を掲載し、中流階層の拡大と市民社会の役割を十分に発揮させることにより、社会構成員全体の積極性を高めることが当面の2大工作であろうと指摘している。

 「群体事件」と呼ばれる大衆による騒乱事件が多発した2004年。李一平 ( 2002 ) は、突発的な騒乱について、

1.社会構造の転換が引き起こす矛盾が根本的原因、

2.幹部による官僚主義と腐敗行為が政治的要因、

3.大衆の民主意識の増大に比して低い参政能力と法制観念の希薄が文化的要因、

4.基層組織による社会コントロールの弱化、社会的権威システムの崩壊が体制的根源と分析している 。※4

 草の根新世代組織は、農民工の権益保護や住民の社会参加啓蒙活動など、政府のなし得ない領域へその活動を広げアクターとして政府の信頼を構築しつつあり、老舗団体は、カリスマ性、メディア力、経験を生かし、アドボカシー性の高い活動を展開し始めた。

 共産党がかつて経験したことのない社会不安と外圧は、民間組織を「社会との調和」の強力なパートナーへと急速に押し上げつつある。

 2004年は民間組織にとって‥と歴史に刻まれることになるのだろうか。まずは今年の動向が楽しみである。

※1 第 16 回党大会で選出された中央委員による第4回全体会議のこと。

※2 1年間の経済状況などを総括し、翌年の経済運営方針を確定する目的で、毎年開催される。

※3  2004 年 12 月 13 日付人民日報『人民日報発表評論員文章:発揮好民間組織的作用』

※4 李一平( 2002 )「突発性群体事件的成因及防範」『中州学刊 2002 年第 5 期』河南社会科学院。

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