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メディア・リテラシーとインターネット
従来は、新聞やテレビ・ラジオをはじめとするマスメディアや、電話や手紙などのメディアの利用方法だけで充分であった。ところが、急激な技術の進歩によりインターネットや携帯電話などの新しいメディアが発達し、このようなメディアの利用にまつわるトラブルも頻発するようになっている。
インターネットの時代ではメディア・リテラシーの考え方が重要な素養になる。われわれはデジタル化された情報やインターネットに掲載された情報を、正しい情報として受け入れる傾向が強いからである。手書きのメモよりも、ワープロで打ったメモの方に価値を置きがちである。同様に、インターネットに掲載された情報を正しい情報、広く評価された情報として無批判に受け入れる危険性が高い。
インターネットの世界は発信した情報の質を誰かが管理している世界ではなく、「なりすます」ことも可能である。インターネットを賢く使いこなすためには、批判的(クリティカル)な態度で情報を評価することが求められる。
日本語で「批判的」というとネガティブな響きがあり、相手を非難する印象を受ける。ここで述べている「批判的」とは、情報を多面的に評価することを意味している。発信者の立場から情報を評価する、情報の「行間」を読み取り解釈する、受信者の先入観で間違った解釈をしていないか評価するといった能力である。
マスメディアを対象にしたメディア・リテラシーの時代から一歩進み、メディアが複合的に活用される(メディア・ミックス)ようになってきた。紙媒体と携帯電話、インターネットとTV、携帯電話とメール、メールとブログというような時代ではより進んだメディア・リテラシーが必要になる。矢野直明は「サイバーリテラシー」でサイバースペースにおけるリテラシーを論じている。
このような新しい時代にあってもメディア・リテラシーは情報取得の態度として重要な能力である。ただし、マスメディアとサイバースペースが最も違うのは、受け手は「受け手」であるとともに「発信者」でもある点である。双方向性が確保されることで一方的に情報を受け取る場合と違い、対話スペースを共有することができ情報を深く理解することも期待できる。逆に、姿の見えない相手と情報空間を共有し、有効に利用するための能力も必要になる。
次回以降、各メディアの本質を理解して特性を活かす方法を情報リテラシーやメディア・リテラシーの立場で議論していきたい。
■参考:レン・マスターマンによる 「メディア・リテラシーの18の基本原則」
http://www.mlpj.org/masterman.html
■参考文献
鈴木みどり編、『メディア・リテラシーの現在と未来』、世界思想社、 2001
菅谷 明子、『メディア・リテラシー―世界の現場から』、岩波新書
■参考になるサイト
平成 13年社会生活基本調査 結果の概要
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2001/shousai/gaiyo.htm
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2001/kodo/gaiyok.htm
情報リテラシー: http://www.blwisdom.com/itword/il/
(社)経済団体連合会、「次代を担う人材と情報リテラシー向上策のあり方に関する提言」、 1998/7
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/pol184/
特定非営利活動法人 FCT市民のメディア・フォーラム
http://mlpj.org/index.html |