南の世界拾い読み 第10回
このコーナーは、南の国々(発展途上国)のメディアやNGO/NPOで流されている情報を独断で選んで、そのサマリーをコメントをつけて紹介していきます。情報の詳細を知りたい場合は、併記のホームページにアクセスしてください。 今回は12月1日の「世界AIDSデー」にあわせて、AIDS関連記事を集めました。 (本田真智子 常務理事)
 

1.AIDS Strategy Failing as Disease Becomes a Female Epidemic
http://ippfnet.ippf.org/pub/IPPF_News/News_Details.asp?ID=3951

USAIDSと世界保健機関 (WHO) が2003年のAIDSレポートをまとめた。AIDSが女性の流行病であるということを認識していないので、HIV / AIDSのひろがりを抑制する努力は失敗している。 2003年にはAIDSによって310万人が死亡した。女性や少女が感染、発病する割合は加速している。アフリカの最も感染のひどい地域では、15歳から24歳の女性の75%が感染しているという。予防戦略が失敗しているのは、HIV/AIDSが女性を中心にした疾病であり、彼女たちのおかれている社会状況、教育、家族関係に配慮していないからである。彼女たちのおかれている状況と貧困に配慮した対策を行わないことにはHIV/AIDSの流行は抑えきれないであろう 。

コメント  
2003年のエイズレポートは日本でもメディアで取り上げられていて、それぞれ衝撃を与えていた。この記事には、アフリカでは未婚で性活動の活発な女性よりも、20歳以下で既婚の女性(多くは年上の男性が配偶者)の方が感染しているということが載っていた。夫にコンドームの使用を求められない女性の姿がここにある。いくら女性が性行動を改めても、夫から感染させられるのだ。女性ではなく、男性の行動の改善に力を注ぐ必要があるということだろう。これはアフリカのことであるが、日本でも若い女性にその性行動に対して苦言を呈する人は多いが、まず大人の男性から改めて欲しいと思うのだ。
( Independent 24/Nov/04 International Planned Parenthood Federation (IPPF) より )

  

2.Goodbye to Cheap Indian AIDS Drugs?
http://www.ipsnews.net/interna.asp?idnews=26442
New Delhi (インド)

インドで製造されているジェネリックの抗エイズ治療薬を、世界貿易機構(WTO)の知的財産権(TRIPS)の所有の問題で、2005年の元日を目途に製造中止に追い込まれる。これまで、インドで製造されてきた抗エイズ治療薬は欧米などのものと比べて価格が安く、貧困に苦しむ人たちにとって入手しやすいものとなってきた。もし、この薬が製造中止になると、多くの人々はエイズ治療を受けられなくなる。インドでは510万人がHIVに感染しており、世界中では4000万人の人々がHIVに苦しめられているという。

コメント  
知的財産権を守ることは科学を発展させることであり、権利を守ることが品質を保証するといわれている。研究費は多くの場合公的な資金があてられ、そこで得られた知的財産の所有権は個人または企業が有するパターンが多い。そして、「いい薬が出来ました」といい、「でも、それなりのコストがかかっているので、高価ですよ」と続ける場合が、最近多くなったのではないか。医療を受けるというのは、基本的人権であると考えている私などから見れば、HIV / AIDSと貧困に苦しんでいる人たちに対して、安価で入手しやすい薬を知的財産権だといって取り上げることなど、悪魔の所業にも等しいと思うのだが。きっと、恵まれた階級で暮らす人々はそうは思わないのだろう。
( IPS “ INTER PRESS SERVICE NEWS AGENCY ” より)

 

3. There's Close Relationship Between Violence and Aids
http://allafrica.com/stories/200411290188.html
Nairobi (ケニア)

女性や少女に対する暴力はHIV/AIDSの感染に高い危険性がある。2003年のエイズレポートによると、女性と少女に対する暴力、及び女性の生活の現実を考慮に入れた包括的なHIV予防アプローチが不足しているという。この地域では、エイズ感染の57%が女性であった。女性は性的暴行、強姦などの危険にさらされており、また、若い女性は経済的な援助を受けるために年上の男性と性関係を持たされる。また、夫やパートナーからエイズを感染させられる女性も多く、これらの人たちは相手に対してコンドームの使用を申し出られないという。女性たちを様々な暴力から救い、男性が自分の行動に責任を持つことが、HIV/AIDSの予防には必要である。政府、開発パートナー、政策策定者などが暴力とHIV感染のリンクを考慮して政策を進めていかなければ、この問題は解決しない。

コメント  
暴力とHIV/AIDSの広がりの関連性は、予想がつくことであったが、こういうふうにUNAIDSのレポートで述べられることで、解決に向けて少しすすむのではないかと期待する。感染症はその病気だけに対して対処療法的に扱っていても、解決しないのは自明の理である。特に、貧困、ジェンダーなどが絡むHIV/AIDSの感染の抑制はまず人間の関係性からリフォームしなくてはならない。そうは分かっていても、個人で行動するのはなかなか難しい。政府やNGO/NPO、国際機関などが揃って動くことで仕組みを作ることから人の気持ち、行動を変えて行くしかないと思う。
まず、啓蒙を、などといっていては、はっきり言ってHIV/AIDS対策では遅いのだ。ここで大きな問題は、女性が多く感染しているということだ。子どもを産む性である女性が感染で激減していく、また子どもに垂直感染させて行く、それで私たちの未来は拓けないのだ。
( all Africa .com  より)

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