南の世界拾い読み 第9回
このコーナーは、南の国々(発展途上国)のメディアやNGO/NPOで流されている情報を独断で選んで、そのサマリーをコメントをつけて紹介していきます。情報の詳細を知りたい場合は、併記のホームページにアクセスしてください。(本田真智子 常務理事)
 

1. Kenyan Minister Becomes Continent's First Woman Nobel Prize Winner
http://allafrica.com/stories/200410080541.html
Nairobi (ケニア)

ケニアの環境・天然資源副大臣ワンガリ・マータイ教授が「持続可能な開発、民主主義及び平和への貢献」により、2004年のノーベル平和賞に選ばれた。194の候補者(その中にはジョージ・W・ブッシュ米国大統領、トニー・ブレア英国首相、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世が含まれている)から選ばれた。マータイ教授は環境保護のキャンペーンと 1977 年に彼女がはじめた、主に女性たちによって行われているアフリカを横断して2500から3000万本を植林していく運動によって広く世界に知られ、数多くの賞を受賞している。また、マータイ教授は初のアフリカ女性のノーベル賞の受賞である。

コメント  
ワンガリ・マータイさんのノーベル平和賞受賞の知らせを喜びを持って聞いた。彼女は、ケニアのモイ前大統領に対抗して大統領選挙に立候補したこともあり、環境運動だけでなく女性問題や人権問題などの解決にも積極的に活動していた方だ。この受賞は、政治の駆け引きではなく、お金ではなく、ブッシュ米国大統領やブレア英国首相などの他の有名な候補者の中から選ばれたもので、「アフリカの持続可能な開発、民主主義や平和を目指し活動」している多くの人にとってプライドになるだろう。
( all Africa.com より)

  

2. Men Lay Ground Rules for Women Refugee Voters
http://www.ipsnews.net/interna.asp?idnews=25725
Peshawar (パキスタン)

アフガニスタンの大統領選挙にたいして、選挙オフィサーは「アフガニスタン女性に対して、選挙に関する方法やプロセスに関する教育を行っているが、彼らの夫や家族の男性たちは、女性が投票することを阻止しようとしている」と語っている。タリバンが排除されてから女性に対する生活は改善されたが、今また女性たちが自分の権利を行使することを止めさせようとする動きも出てきている。パキスタンに難民になっている女性は、自分たちはカイザル以外の大統領の情報を知らないのだ、という一方で、カイザルが大統領になり自分たちが故郷に戻れるようにという希望ももっている。

コメント  
  アフガニスタンの大統領選挙は様々な不正がされたともいわれているが、一方で日本のように情報網が発達していず、選挙公報も十分でない地域では、立候補者を知ることも難しいという現状に合うということがこの報道で分かる。そして、女性に対する抑圧の著しさが欧米から非難されたタリバンがいなくなり一時期は女性に対する抑圧も少なくなっていたが、結局旧来の価値観がもたげてきたようだ。
( IPS “ INTER PRESS SERVICE NEWS AGENCY ” より)

 

3. Perilous Crop Uniformity
http://www.ipsnews.net/interna.asp?idnews=25887
Rio De Janeiro (ブラジル)

1846年から1850年のアイルランドのジャガイモのブラント疾病による飢きんは、当時食糧のほとんどをジャガイモに頼っていた人々を植えさせ、多くの人をアメリカへの移住へと駆り立てた。世界が生物の多様性を破壊し続けると、飢きんは人間が直面する大きな危機の一つとなる。その一つの例がアイルランドのジャガイモ飢きんである。国連食糧農業機関( FAO )による10月16日の世界食料の日の今年のテーマは「食料安全保障のための生物多様性」である。
過去5世紀に人類は「遺伝子侵食」と言われる、食物の多様性を放棄し、均質の食料の生産へと流れていっている。歴史を通じて、人類が食物としてまたは飼料として生産した種は約1万種類であったが、最近は約150種類の種しかつくられていない。
ジャガイモが南米のアンデスが原産地であるのに「ポテト」と英語名で世界に流通している。多くの種が熱帯に属する貧しい国々が原産であるが、それが海外に持ち出されて権利をよその国が取るような状況にもなっている。それらの種の帰属をめぐっての裁判も起こされる状況となっている。

コメント  
  生物、遺伝子多様性は人類の未来にとって大切な安全保障であるが、現在その多様性がなくなり、少数の植物に頼ることで、生存の渕を自ら歩いているといっていいかもしれない。また、遺伝子組み換え作物の作付けが進むことは、生物多様性の面に置いても、また経済の支配構造においても決して人々の未来を明るくするものではない。
私の支援するジンバブウェ南部の地域では、ヨハネスブルグサミットに参加して他の国の農民と交流した人々が、これまでのFI種のメイズだけでなく、自家採取できるOPV種のメイズも生産しようという試みが始まっている。
食料を経済の指標ではなく、生存に必要不可欠なものであると考える世界の多くの農民が生物や遺伝子の多様性を重視し、遺伝子組み換え作物にノーといい、自分たちで種を管理しようという動きを少しずつはじめている。それはもちろん日本国内でも始まっている動きだ。
( IPS “ INTER PRESS SERVICE NEWS AGENCY ” より)

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