「メディアの読み方」講座 第1回 米国の民主主義って ?
土田修(正会員、ジャーナリスト)

 11月2日はアメリカ大統領選挙の投票日。ブッシュ対ケリーの戦いは接戦が予想され、4年前同様、開票作業をめぐっての混乱が再燃しそうな勢いだ。イラク戦争の是非や大量破壊兵器の有無など表向きの争点の裏側で、投票方法という基本的な問題をめぐっての争いが続いている。選挙は民主主義の根幹をなすはずのもの。10月25日の朝日新聞には「アメリカの民主主義って何?」と考えさせられる記事が載った。

  「投票『50州50通り』 新制度も波乱要因」(10月25日朝日新聞国際面)。この記事は、フロリダ州の投票機械の問題で大混乱した前回大統領選の反省が今回、生かされていないどころか、新制度の導入で新たな混乱が予想されると指摘している。
  フロリダ州では投票用紙に穴を開ける「パンチカード方式」の見直しを図った結果、67郡のうち15郡で電子投票機を使うことになった。パンチカード方式は穴の開け方が中途半端な投票用紙をどちらの投票として計算するかで前回おおもめにもめた。混乱の元凶ともいわれた。しかし、新型の電子投票機の方も、あまり評判が良くない。「(電子投票機はパンチカード方式より)もっとひどい間違いを起こす可能性があり、選挙不正もやりやすいという指摘があちこちから出ている」(10月8日田中宇の国際ニュース解説)。 

 田中ニュースによると、電子投票で不正がしやすいという問題については、ニューヨークタイムスもキャンペーンを展開したそうだ。それによると、電子投票機の不正防止対策というのは、ラスベガスで使われているスロットマシンよりはるかにずさんなのだという。ラスベガスのゲーム機はネバダ州の「ゲーム機管理委員会」がメーカーに機械内部のプログラムを提出させ、構造をチェックしている。抜き打ち検査も行い、不正ができないかどうかきちんと分析している。

 ところが電子投票機の場合は、メーカーが選挙管理員会に対して「企業秘密」を理由にプログラムを見せようとしていない。連邦政府や州政府もそれを追認してしまっているそうだ。さらに電子投票機で不正が行われた可能性が発覚しても、投票用紙に出力しないため、再集計できないという重大な問題も指摘されている。   

 フロリダ州はブッシュの弟が州知事を務めている。接戦になった場合、共和党に有利な判断を下すという警戒感が民主党内には強いことから、「電子投票機では記録が残らない。用紙による投票記録も残すべきだ」としてフロリダ州の民主党議員が裁判を起こした(朝日新聞・前出記事)。
 さらに、同州では民主党がせっせと支持者に期日前投票を呼びかけ、投票所への送迎をしている(同)。当日の投票で不正が行われる可能性が高いからだ。
  前回の米大統領選ではフロリダ州の集計結果は最高裁の判断に持ち越された。そこでブッシュ勝利が決まったのは、最高裁の判事に共和党員が多いからだという説もある。そういえば昨年末話題になった映画「10ミニッツ・オールダー」の中に、アメリカのスパイク・リー監督の「ゴアVSブッシュ」という10分間の映画があった。ゴア陣営の選挙戦略アドバイザーや腹心が2000年11月の大統領選挙について語るドキュメンタリーだ。
  この中で選挙結果を大きく変えることになった「ブッシュ優勢」というテレビの予測報道が「ギャングの裏取引」によって引き出されたものだという驚きの証言があった。最高裁判事にせよ、ギャングにせよ、何が真実なのかよく分からない。アル・カポネの時代に逆戻りしたようだ。

 ところでアメリカはイラクでコントロールを失いつつある。アメリカが戦闘を続けることで、レジスタンスグループは結束・強化され、イラク全土を敵に回してしまった。イラクはいまや無政府状態に陥っている。ル・モンドのバグダッド特派員は「アメリカは暴力という言葉しか知らない。ゲリラを止めるために民間人をたくさん殺してしまったのでレジスタンスを強化してしまった。いまやイラク人はアメリカが負けることを信じている」という聖職者協会員の言葉を引用している。
   
アメリカは「正義と民主主義」を旗印に世界中に軍隊を送り出してきた。その軍事戦略はベトナムに続き、イラクでもとん挫している。11月の大統領選を前に、アメリカは他国の民主主義ではなく、自国の民主主義をこそ、問い直すべきときに来ている。
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