協働コーディネーター養成講座修了者の活躍する現場から シリーズ2 
第2回 日米エコ・コミュニティ・レストラン協働プロジェクト
      〜今だから分かる協働コーディネーターの役割
久保田裕美(特定非営利活動法人NPO研修・情報センターフェロー)

特定非営利活動法人NPO研修・情報センターでは協働コーディネーターを養成する、協働コーディネーター養成講座を開催してきました。その成果として、協働コーディネーターとして各地のまちづくりの現場で活躍している人が増えてきています。ここでは、協働コーディネーターとして活躍している人に現場の取組みを紹介してもらい、講座の成果を紹介していきます。

シリーズ2では、日米のNPOの協働の実践として昨年から始まっている日米エコ・コミュニティ・レストラン協働プロジェクトと、その中での協働コーディネーターの実践を紹介していきます。


「協働コーディネーター養成講座修了者の活躍する現場から シリーズ2」では、協働コーディネーター養成講座終了後、2003年から実際に協働コーディネーターとして、日米NPOの協働プロジェクトをつくり、実施してきた経験を述べたいと思う。日米NPOの協働や交流といった場合、米国NPOから学ぼうという趣旨のものが多く見受けられるが、『日米エコ・コミュニティ・レストラン協働プロジェクト』(以下、本プロジェクトと略)は、日本のNPOから米国のNPOへ情報発信・提案し、日米NPOが互いに学び、Win-Winの関係を築いていくという点がユニークである。第2回目は、本プロジェクトで実際に協働コーディネーターとして何をしたのか、実践して見えてきた協働コーディネーターの役割についてお話したいと思う。

なお、以下の内容は、私自身が本プロジェクトを通して実際に経験したことをお伝えするものであり、今回の内容に当てはまらない状況もあり得るが、様々な「協働」の形があるうちのひとつの事例として参考にしていただければ幸いである。このメルマガを通じて、協働コーディネーターとして協働プロジェクトを担った体験を、できる限り多くの方と共有できればと思っている。
  

1.協働コーディネーターの登場場面

協働コーディネーターは、協働プロジェクト開始から終了に至るまで全過程において責任重大な役割を果たすが、その中であえて区切りをつけると、大きく3つに分けることができる。まず、プロジェクトの立ち上げ、プロジェクト実施、そして実施後のフォローである。細かい点を言えばさらに詳細に区分されるのであろうが、今回は簡潔にこの3つに絞ってお話しする。
  

▲ページトップへ

2.全体を見渡せる広い視野を持つ

まずは協働プロジェクトを立ち上げるにあたり、協働コーディネーターとして、NPO研修・情報センターとパートナー団体のエコロジーセンターとの間に協力関係をつくり、協働に向けての合意形成を図ることからスタートした(本プロジェクトの立ち上げの経緯は、「第1回日米エコ・コミュニティ・レストラン協働プロジェクト 〜協働を実践する」『1.日米NPOの協働へ』を参照のこと)。

ここで大変だった点は、エコロジーセンター(パートナー団体)に、本プロジェクトは日米NPO双方にとってメリットがあり、互いに協働においては対等な関係であるということを前提に協働プロジェクトを立ち上げるということを理解してもらう点だった。まず手始めにエコロジーセンターのエグゼクティブディレクター(事務局長)に協働プロジェクトの企画を提案し、その後、ファーマーズマーケット責任者、そして実際に担当部署となるファーム・フレッシュ・チョイスのスタッフらに、ひとつひとつプロジェクトの背景と趣旨を説明して回った。どのスタッフも、個々での協力は得られるものの、団体としての意思決定となると、即決というわけには行かなかった。今回の協働事業は、日米両NPOにとってメリットがあり、協働することによって互いの地域へもインパクトをもたらすことが出来る、ということをはじめにエコロジーセンターの人たちに認識してもらうことが必要であった。これは協働の動機付けと言い換えることができよう。実際には、今回のパートナー団体が米国NPOだからなのか、それとも日本の団体でも同じ状況だったのかは分からないが、とにかく米国NPOから協働プロジェクトについて質問される内容は、各論に終始しており、まずは全体の枠組みを共有したいという日本NPO側と間に認識の違いがあった。

ここでの経験を通じて私が重要だと感じた点は、協働コーディネーターが米国側と日本側の意識の違いに柔軟に対応できるかどうかという点である。たとえば、相手がプロジェクト全体の内容を共有する以前に、プロジェクトの進行日程や諸条件について細かく話をしてきた際、ひとつひとつその質問に答えるのではなく、なぜ相手はそのような質問をしているのか、まずプロジェクトの目的は共有できているか、全体の中で今話し合うべきことは何かなど、一呼吸おいて適切な処理ができるかということである。私は、米国NPOとの交渉の中で、ひとつひとつ対応していった結果、結局余計な時間と手間をかけてしまった。この経験を踏まえ、それ以後は、相手がプロジェクトの目的について本当に理解しているか、話し合いをしてきた内容は共通認識でいるかといった点を必ずしつこいと思われるくらい確認するようにした。

協働コーディネーターの役割のひとつとして、プロジェクトを相対的に位置づけるという役割があると思う。細かい事項にその都度対応するのではなく、全体を把握した上で、そのことが今の時点でどの程度重要なのか、また緊急なのかを判断する力が求められるのではないか。
  

▲ページトップへ

3.地道なマメさが実を結ぶ、"つなぎ役"としての役

本プロジェクトにおける協働コーディネーターが関わる場面ふたつめは、協働プロジェクトの実施段階である。協働プロジェクト実施にあたり、重要な役割は進行管理である。実施の段階では、進捗状況を日米NPOが互いに報告しながら、密なコミュニケーションをとることを心がけた。とはいえ実際には、海外との連絡は時差の関係でなかなか思うように連絡できず、早朝の電話会議をしたことが何度もあった。E-メールは時間に左右されないという点で非常に便利であったが、物事を決める際にはメールでは何度もやり取りをしなくてはならず、意思決定までに非常に時間がかかった。

その他、実施段階に入るとプロジェクトに直接関わる人以外にも多くの人が関わるようになる。たとえば、NPO研修・情報センターとエコロジーセンター以外のスタッフ、ボランティア、公開講座参加者などである。それらの人すべてを協働コーディネーターが把握し、連絡調整することは難しい。適材適所で人材を活用し、役割分担することも協働コーディネーターの重要な仕事だと感じた。

本プロジェクト実施において、より効果的・効率的な協力を得られるように段取りをつけるためにも、NPO研修・情報センターとエコロジーセンターの中心となるスタッフに対して、進捗状況や共有すべき事項について情報共有していくことが、協働コーディネーターの重要な役割ではないかと思う。そのためにも、協働コーディネーターは、人とのコミュニケーションを面倒がらずに、最低限のマメさが必要ではないかと思う。

また、実施したプロジェクトの詳細についてはここでは省略するが、簡単にその概要を述べると、「日米エコ・コミレス協働プロジェクト」は、以下の2つの柱からなる。

1)米国にて、日本でのコミュニティ・レストラン・プロジェクトのノウハウを用いた「エコ・コミレス」プログラムとNPOのエコ・コミレス運営のノウハウを紹介する米国開催「エコ・コミレス」ワークショップの実施

2)日米交流の機会として、日米NPOの協働で進める「エコ・コミレス」プロジェクトのプロセスと成果を共有、社会化し一般に情報公開する場として、日本開催エコ・コミレス公開フォーラムの開催

これら実施にあたり、資源(人・モノ・資金など)を上手く活用できるコーディネート力が必要である。協働コーディネーターは、つなぎ役としての役割を担っているのである。
  

▲ページトップへ

4."つなぎ役"パート2

3つめは、協働プロジェクト実施後のフォローアップの場面である。最初に立てた協働プロジェクトの企画案にある実施内容(今回の場合、公開講座と公開フォーラム)が終了すると、充実感と疲労で、ここで一段落したいという気分になってしまうが、実は協働コーディネーターがすべき重要な役割があるのである。それは、公開講座や公開フォーラムの実施直後に、それぞれの団体において"ふりかえり"をするよう両団体との橋渡しをすること。つまり、これまで実施してきた協働プロジェクトについてまず自己評価をし、互いにフィードバックする場をつくることである。それにより、協働プロジェクトをひとつのイベントとして完結させるのではなく、今後につながる発展的継続へ向けての土台をつくることができる。協働コーディネーターは、これまでの協働の実績を活かし、さらにステップアップする際にも"つなぎ役"の役割を担っているといえる。

次回最終回は、「日米エコ・コミュニティ・レストラン協働プロジェクト」を実践しての今後の課題、および今後の展望について述べる。
日米NPO協働プロジェクトについては、TRCブックレット9『NPOで地域を変える「コミュニティ・レストラン」を創る』(特定非営利活動法人NPO研修・情報センター、2004年)の中で詳しく紹介している。興味のある方はぜひお読みいただければ幸いである。
  

▲ページトップへ

 



 

 

©2004 NPO Training and Resource Center All Right reserved